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第78話 こんな形だけど

お待たせ致しましたー

 呉羽(くれは)は嬉しいはずなのに、心の内では『虚しさ』しか感じ取れないでいた。


 親友の家族が、奇跡の再会をしたというのに。それが一瞬の出来事でしかないのを知っていると、こんなにも虚しい感情しか抱かないのか。呉羽は、少し前に恋愛が成就したことよりも、今回の終幕は嬉しい出来事のはずが。



(いやだなあ……。笑って、いっしょに嬉しいって言おうと思ってたんに)



 やはり見栄を張っても、涙しか出てこなかった。結局、性格などを偽っていても『大人』にはなれない。柘榴(ざくろ)とて、それは同じだ。自分なりに善意の方向に意識を傾けても、本心では殺人を厭わないほどの仕打ちを自分だけでなく大切な家族全員に行われたのだ。


 よく、少し前のときに、父親をなんとか送迎する手段を行使出来たものだ。そのあとに、(いずる)からの告白が無ければ堕ちていたかもしれない。予定してはいなかったものの、彼のあの時の判断は正解だった。


 呉羽が指示せずとも、どれほど『愛』が本気なのかを目の前で見せてもらった。だから、呉羽が陸翔(りくと)への愛はどのようなものなのか。改めて自問自答していたときに、本人からの告白があり。それは納得した上で受け止めても、こんな愛の終わりがあっていいのかと涙が止まらない。


 ごく普通の女子高生だったはずのふたりの未来が。


 なんでもない進路を歩むだけの人間のはずなのに。『血』のせいで、多くの運命を狂わされてきた。呉羽なんて、柘榴に比べれば可愛いものでしかない。自分とて、巻き込まれて殺されたものの。柘榴の魔法のお陰で、結果的には生き返れるのだ。


 彼女も同じだが、生き返ったあとが悲惨過ぎる。葬儀もしなくてはならないし、環境も大きく変わるだろう。貫がいてくれることが救いでも、普通の人生はもう歩めない。


 その結果の一つに、この刹那の再会。普通、結婚を前提の会合がこんな短い時間内でいいのだろうか。嬉しいはずなのに、実際に目の当たりにすれば『虚しさ』『哀しみ』しか出てこない。


 楽観的な呉羽ですら、そんな感情が当然のように出てくるのだ。どれだけポジティブに捉えたとしても、こればかりは無理だ。気づいてくれた陸翔が懐に抱き止めてくれたときには、感情のリミッターが制御出来ずに泣き続けるしかない。



「……泣いてください。今は。柘榴さんの、女性として唯一傍に居れるのは呉羽さんだけです。貴女はひとりではありません。僕にも分かち合わせてください」

「……うん」



 嘆いても仕方がない。過ぎたことは変えられないのだ。それを行えば、禁忌となりもっと酷い結末しかならない。頭では理解しようにも、心はなかなか納得できないでいた。本能と理性とやらはバカだと自負している呉羽にすら制御はきちんと働くらしい。


 陸翔がいなければ、それもうまく出来なかっただろう。だから、呉羽は決めた。


 すぐに生き返っても、進路は変えない。そして、いい結果を陸翔と導き出した先で、柘榴の親友だと胸を張って言える人間になるのだと。


 バカなりに考えた夢物語だが、クリエイターらしい思考回路とはそんな程度だ。せめてもの、詫びにしかならないが今はそれしか思いつかなかった。

次回はまた明日〜

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