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第75話 終わりの道筋を取引した

お待たせ致しましたー

 夜光(やこう)はリンクしていた伊邪那岐(いざなぎ)の欠片からの報告により。あの愚かな姑獲鳥(うぶめ)が冥府に連行された情報が共有された。もともと、菅公(かんこう)の欠片を取り込んでいる夜光の肉体を通じ、姑獲鳥の週末をそのまま辿ったに過ぎないが。


 やはり、かつての朋友の『死』を受け止めるには修行が足りないようだ。犬畜生の姿では涙が流れないはずなのに。



「……マスター?」



 柘榴(ざくろ)に呼ばれた。今回の、特に一番の被害者である少女。ある意味で『創られた』存在。素材となるべく、宿った魂魄も特殊なせいでこのような結果を辿ってしまったのだが。不知火(しらぬい)の分霊体が無事に戻っているのも認識出来たので、彼女はこれで『黄泉返り』が可能となる。


 危惧していた伊邪那岐の心変わりも特にないことが判明したため、そこは大丈夫だろう。障害はほぼ取り除かれたのだ。これでいい。忌々しき存在でしかなかった夜光の一族の『贖罪』のひとつは終われたのだ。


 菅公の欠片を取り込むまで、殺戮をただただ愉しんでいただけの愚か者の罪のひとつが清算されたのみ。それなのに、まだ偽っていた感情の中を整えられていなかったのか。


 犬の姿なのに、涙があふれて止まらないでいた。気づいた柘榴に抱えられ、堪らず懐を借りながら泣き続ける。声を上げて泣く性質ではないのか、涙腺から水があふれるだけだったが。



「……マスター。終わったんですね」



 こちらも、『転生』手前の肉体に再生させた陸翔(りくと)が察してくれたのだろう。ただ気まぐれで拾って『助手』として傍に置いていただけの個体でしかないが、優秀過ぎて少し手放すのはさみしくもあるが。望んでいた結果の一つをこれで迎えられるのだから、彼は彼でいいのだ。


 笑理(えみり)を確保出来たのだから、狭間の存続は問題ない。夜光も『夜光』としての管理者の縛りはそのままだ。それでも、近しかった『彼』が死ぬのは哀しい感情を抱いてしまうのだろうか。そんな感情は捨て去ってきたはずなのに、柘榴と出会ったことでかなり取り戻したのか。


 柘榴自身が取り戻したと思っていた『感情の起伏』らは、彼女の母親がこの店に預けていたのだ。それを返したはずなのに、今は共感している状態なのか。



「……ああ、終わったよ。私の役目のひとつも、これで完了出来た。君たちは、それぞれの道筋に戻るだけさ」

「……終わった?」

「終わったん??」



 リンクを得ていない少女ふたりには状況が分からないのは仕方がない。ただ、伝えたところで彼女らの決心を揺らがせてはいけないのだ。道筋が整ったところに、余計な波風を立てたくはないが。しかし、納得はしない性格であることは知っていたので、伝えようとしたところ。


 不知火が何かを召喚したのか、ホールの中央にふたつの影を出現させていた。


 それを目にした途端、柘榴は驚き過ぎて夜光を床に落としたのは無理もない。何故なら、召喚したのは『両親』だからだ。



「おと……か、あ!?」

『『お疲れ様』』



 服装以外、姿が当時のままの彼らを見て。喜びの涙で駆け寄るのも、また仕方がないことなのだから。


 夜光は、気落ちしていた感情が少し落ち着いたように思えた。

次回はまた明日〜

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