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第56話 はてさて、動くべきは

お待たせ致しましたー

 気まぐれのつもりだった。柘榴(ざくろ)の母からの依頼を受けたのは。


 離脱のきっかけをくれた恩人の遠い子孫の女性。その彼女が、己が逃げてきた集団により命を奪われたのちに閻魔より救済措置を受け。娘の先読みの未来を、叶うことなら改変して欲しい依頼だったのだ。


 素材にされる運命は変えられないが。因縁の刻牙(こくが)の野望がこちら側でも把握できた。主に、それを止めてほしいとの依頼。神側の勅命を言付かったというので断れなかったもあるが。


 実際に、導いて店に来訪させた時点で、夜光(やこう)は素直になれたのだ。不知火(しらぬい)と根底の箇所が酷似した少女だと。素材の質としても、魂の輝きも。輝きはむしろダイヤの如く輝きを秘めている異質さだ。磨けば光る。素直に、この少女に今まで培った術を伝授したいほどに。


 いずれ、黄泉返りがあるにしても、それまで伝えたい想いを抱いたのだ。



(柘榴くんを、最後の直弟子にしたい想いが……顔を見ただけで生まれるとは)



 気まぐれで拾った陸翔(りくと)よりも焦がれた思いだ。近い感情だと恋かもしれないが、誓約により夜光は神々からその感情を封印されている。なら、酷似していても全く違う感情。素材なら、大いに能力にも期待できるとあえて適当な指導をしたが。


 それだけなのに、光り輝く術ばかり編み出すのだ。記録を綴る才能がある時点で、直感はあったがそれ以上の成果。だから、この少女には幸せに生きる道筋を本気で導いてやりたい願望が夜光から出てきた。


 かつて、身内を惨殺され、政治利用もされた一族のなれの果てとなったことから刻牙に加入してしまったが。割とすぐに、正気に戻って脱出の機会は狙っていたのだ。後悔にまみれて、正気に戻ればさらに悔やむことになる結末。


 救ってくれたのは、同じように気まぐれでいた流れ人の始祖本人。不知火との出会いは、そのときだった。刻牙の宝物として囲われたことはあったが己で逃げおおせ。(さとり)に似た能力があることで夜光の内面を見透かされ。応えたことで、夜光の永劫の道筋を得たのだ。狭間の管理者としての立場を。


 だから、不知火には大恩がある。義理などではない。不死に近い状態でも生きていく道筋を与えてくれたのだ。だから、子孫の頼みも本能で受け取っていたと言う。結局は、柘榴はそれらを抜きに逸材として手元に置きたかったのだが。



(いずる)くんとの関係も、導きのひとつだ。私の最後の仕事にならないようにも……彼らを導こう)



永遠(とわ)』のマスターとして、異空間の管理人としても。『癒』を司る立場としても、この事件を快癒したいのだ。己のかつての立場、人から神に転じたきっかけの事件を不知火が実は解決してくれたのを知った今でも。


 優しさに満ちた生活を、これからも送りたいのだと。その中に、因縁の集団の手で殺められた彼女らを救いたい。どのような結末かは読めずとも、最悪の事態を避けるのに夜光は作業のふりをしながら魂魄をバレないように分離させ、ほぼ一人で計画を進めていたのだ。


 何故なら、浅葱(あさぎ)らが預かったあの工作員が夜光の部下になりたいと言うのなら。どこまで本気かを、分けた魂魄を飛ばして確認する。跳んだ魂魄のかけらは現世では余程のことが無い限り視えないために。浅葱には事前に連絡をして、聴収の部屋へ忍び込んだ。中では、浅葱と駿(すぐる)が垂れていた工作員の女に色々質疑応答をしていた。態度は悪いが、問いかけには素直に応じていたのだった。

次回はまた明日〜

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