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第54話 仕方がないので共闘手段?

お待たせ致しましたー

 怒りは不思議と湧いてこないのだが、柘榴(ざくろ)は盛大に呆れていた。意識の中に介入してきてまで、刻牙(こくが)への報復を計画していたというのに。協力者の身内が寝こけているのが解せない。


 普段も寝ている状態だというのに、電池切れにしては不自然だ。反動かもしれないが、ここはと思っていると。



「……潰すか」



 地を這う、と言う表現が正しいのかもしれない。横にその本人がいるのに、振り返ることが出来ないくらいの恐怖を感じるのだ。好意を抱いている相手であれ、外見は最初苦手印象を持っていた対象だ。その分、怒りが加わればそれ以上の恐怖が勝るのも致し方ないと言うか。言い訳をしなければ、(いずる)のことを苦手な対象に戻しそうな自分が嫌だった。きちんと本人の優しさを知っているのに、キレているだけで嫌いたくない気持ちもきちんとあるから。


 生半可な愛情ではないのだが、畏怖に等しい形相になっているので怖いものは怖い。現に、後ろにいるらしい呉羽(くれは)には異様にしがみつかれているから。



「ざ、ざ、ざ……ザクロ……っちぃいいいい!? 怖い怖い怖い!!? あれなに?? 悪魔? 鬼!?」

「……ある意味、鬼かもだけど。とりあえず」



 貫は一応不知火(しらぬい)の本性を正しく理解しているが、性格上気に食わないのも当然だろう。刑事という役柄としてもあれは不良同然の態度だ。不良に見えるのは貫の方でも、不知火もなかなかに派手な外見をしているから似た者同士。


 しかし今は、事態が迫っているので恐怖を振り払って柘榴の方が動き出した。



「お・じ・い・ちゃ・ん!?」



 孫、と認められた柘榴だから、逆に動くしかない。定着した呼び名を叫びながら、勢いよく空手チョップを脳天に叩きつけた。死人だから肉体が硬いので、互いの肉体の一部でもぶつかると岩が落ちたような爆音が響いたのだった。



「い゛!?」



 さすがの衝撃のせいで、不知火も目を覚ましたようだ。古典的なリアクションでぶつかった頭頂部を抱え込む。悶えはしないが、かなりの痛みを感じたのか呻いてはいた。



「なんかしてるだろうけど、無防備すぎ!! たしかに『おじいちゃんの寝相』だけど……緊迫感持ってよ!!」

「……なんや。柘榴、痛いわぁ」



 悶えてはいても実質的な痛覚はないのか、衝撃に驚いただけらしい。顔を上げたら、何故かにかっと元気に笑うだけ。内面は特に老化していないのか、不老不死のようなものなのでチートはそのままなのだろう。らしいので、違和感はない。



「………呉羽。あいつ、度胸あり過ぎじゃね?」

「イズルっち? アタックしまくんならおじいちゃんに勝たんと大変じゃね? 身内でも超絶離れてるからさー?」

「……あのな。職務上のカレカノだから! 気に入ってはいるが、今口説くとかそんな状況じゃねぇだろ!?」

「いいの~~? おじいちゃん、個性派だけど優良物件」

「……頭悪そうに見えてむずい言葉つかうんだな」

「今はそこ許す~~。ザクロっちのため~~」

「は?」




 後方で何となく聞こえたが。今度は柘榴が悶えそうになってしまった。呉羽がわざと誘導したにしても、柘榴に嬉しい言葉を引き出せてもらえた。友好的だとか、普通以上の好意はもらえてたと感じていたが。言葉では聞いていないので、誤魔化しにしても嬉しい内容ばかり。


 これは本腰を入れて、刻牙(こくが)壊滅を計画していかねば。なので、ここはと不知火の形状がよくわからない派手な上着を掴んで引き寄せた。



「? どーした?」



 孫の意図が読めたのか、不知火は怒らずにあえて素の口調に戻してくれた。夜光(やこう)らはどこかで作業しているのか近くにいないため、遠慮なく言うことにしたが。



「……おじいちゃん、人の心読めるんでしょ?」

「まあな? 完全に読めなくもねぇが、今は控えてるぜ?」

「だったら、態とでも貫の気持ちはあたしに教えないで。……これは、ちゃんと自分で伝えたいから」

「ん。お前ならそう言うと思った。んで? しばらく俺はここにいる。滞在部屋は既に夜光が手配してっから心配すんな。じいちゃんとしてしかいないし、実質的に狭間では柘榴の身内として生活するぜ」

「……いつのまに」

「ただ寝てたんじゃねぇよ? 神々と意識リンクしてただけだ」

「さっきも?」

「おう。俺雑だからこーしか出来ん」



 方法がそれなら、というのなら仕方がないが。それにしては柘榴の意識に介入した場合は手際が良かった気がしなくもない。しかし、不知火が嘘を告げている雰囲気でもないため信じることにした。


 問い詰めは終わることにして、貫らも交えて今後の進行計画とやらを詰める打ち合わせをすることとなり。夜光と陸翔(りくと)はこのために茶菓子などを用意してくれていた。宝石料理では、今回の場合違っていたが。



「ふむ。閻魔殿とのすり合わせも完了したと?」

「おー。数万年ぶりの再会やったけど、相変わらずやわ~~」

「ははは。それはなにより」



 なんでもない会話をしている派手な青年とトイプードルだが。


 外見二惑わされないくらいの超高齢者には見えない。無理があり過ぎるバグと同等だった。特に、呉羽は終始口が開きっぱなしである。



「……ザクロっちのご先祖サマって、マジで何?」

「……あたしも、まだ全部は知らない」



 出会って数時間程度。登場の仕方も、魔法のセンスも異質。口調を使い分けてる理由もあるだろうが、呉羽に言えない正体が一つだけある。


 不知火自身が、性犯罪の実験に巻き込まれて柘榴ら子孫を生み出す試験体にされたことを。いつかは伝えなくてはいけないが、呉羽の事情を考えると言えなかった。

次回はまた明日〜

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