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第46話 なにがなんだかめちゃくちゃ

お待たせ致しましたー

 意味が分からないとしか言いようがない。パーティーを再開しようとした瞬間、天井近くの空間が裂けてしまい、そこから人影が落ちてきた。それが(いずる)の上に飛び乗ったと思えば、血塗れの女性が夜光(やこう)に飛びついて行った。


 刑事勢は攻撃を予測して構えていたのに、全く違う行動に一同唖然としてしまうのも無理はない。柘榴(ざくろ)はその女性とは初対面だが、『気配』がはっきり感知出来た。自分を刺した『刻牙(こくが)』のあの男と同じものだった。なのに、殺意が全くないどころか、夜光に抱きついて愛でている状態。


 唖然とするしかないが、切り出したのは貫が先だった。拳銃を躊躇うことなく彼女の後頭部に突き付けた。



「……なんのつもりだ。刻牙の野郎」



 ドスの利いた声音に少し震えてしまうも、介入してはいけないと柘榴は口を噤んだ。呉羽(くれは)もここは黙っていて、それでも怖いのか陸翔(りくと)の腕にしがみついている。流石に、陸翔も羞恥どころではないので臨戦態勢を取っていた。


 しかし、夜光に頬ずりしていた女性は特に気にしてないのか、目線を寄越しても笑っているだけ。狂っているとしか思えない態度だ。



「あ~~、まあ? この見てくれやから、しゃーないなあ? わっちはたしかにあんさんらの宿敵……だった奴や。逃げてきたんよ? この也がその証拠やわ」

「信じられるか!」



 激昂する貫を目の当たりにしても、女性は一切怯んでいない。命のやり取りをダイレクトに操っていた団体に居たから、そこは慣れているのか。なら、と怒り心頭の貫の横に、柘榴は立つことにした。



「……なら、夜光を離して。それと、何をしにここに来たの? あなたは、あたしたちを殺して素材にして……なにをしたいの?」



 質問攻めをした上で、夜光を解放するように頼み込む。夜光はあえてハグされたままで動こうとしないのは、なにか理由があるのだろう。魔法がお得意のこの犬のオジサマとやらは、こんな拘束くらい簡単に抜けれるはずなのに一切抵抗していない。なら、理由があってそのままでいるとしたら、代わりにこちらが聞けばいい。逃げてきたと自分で言っているのを、態と信じれば答えを導けるかもしれないからと。


 その意志で問えば、女性は少し考える表情にはなったが。夜光はカウンターに戻してくれたのだ。



「自分のこともやけど、この管理者わんちゃんの方が大事なんか? 素材にされたお嬢ちゃんは、今は気丈な性格になったんね?」



 けらけら笑っている目は、冷静なものではない。殺意も何もなく、本当に味方側についてくれそうな色だった。貫はまだ銃口を向けたままだが、柘榴が横に立った辺りから少し距離は置いている。表情は未だに阿修羅の如く鋭いものの、柘榴はあえて気にしないようにした。



「生前のことは、今どうでもいいの。答えて! あなたはここに何しに来たの?」

「言ったやろ? 逃げてきたんや。見限りつけたんよ、刻牙に。わっちも殺されたに等しい扱い受けたからなあ? 原因の一端は、このわんちゃん管理者やけど」

「夜光が?」



 全員の注目が集まると、夜光は肩を落としたかのように尻尾を垂れさせていた。



「ははは。侮っていたようだね? 君はなかなかに優秀な工作員のようだ。先程、刹那の時間帯だけ借り受けていたのに……もうここまで辿り着くとは。彼奴に見限りをつけるために、その自作自演までして退職するとはね?」

「おおきに。読んだやろうけど、見限りはつけとったんや。うちもたしかに犯罪者やけどな? メリットない計画に付き合うのはもうこりごりなんよ。信じてもらえんのはわかっとる。せやから……情報を洗いざらい話すでええ? もち、一度は心霊課にひっ捕らえられるのも同意するわ」

「ふむ、懸命な判断だろう。彼奴が始末を前提していたのなら、それくらいの提案は思い付く。さてさて、ここは私よりも浅葱(あさぎ)くんの出番だね」



 夜光が問いを投げかければ、戦闘態勢なのかいつのまにか日本刀を抜刀していた浅葱の表情が少しだけ緩んだ。普段は奇天烈な足長おじさんなのに、やはり本職の任務のときは違うようだ。きちんとした『刑事』としての態度でいる。あれだけ孫バカのようでいても、そこは仕事人だなと。態勢を解いた彼は、刀を魔法で消してからこちらに歩み寄ってくる。



「なるほど。虚偽の意思は見受けられない。夜光殿が抵抗意識を見せない辺り、そこは信用してもいいだろうが。かと言って、我々が素直に応じると思うかい?」



 収納した刀のように、鋭利な言葉の投げ方だと思った。いつもの柔和な物腰は鳴りを潜めて、完全に『仕事側』の態度でいる。これが、命を預かる大人の仕事なんだと本能的に理解できるほどに。よくこの人が、自分のような小娘を可愛がってくれるんだなと、今は素直に安心出来たほどだ。そのように、畏怖を覚える浅葱を見ても女性は相変わらず締まりのない笑顔でいる。血塗れだから、余計に不気味だ。



「当然やな? 天下の心霊課のおっちゃんなら、そんくらい疑ってもええ。けんど、先にひとつ情報開示するなら……そこの素材にされたお嬢ちゃん殺した野郎に、わっちも殺されそうになったんや。もち、向こうの大ボスの命令でやけど」

「……え?」



 あのチャラ男が、この女性を躊躇うことなく殺そうとした。命令でも、あの男は平気で命を奪うのを厭わない。本当に、根っからの犯罪者だなと今は絶望より怒りが沸き上がってきた。



「あいつ、本当に殺しに容赦ないの?」



 柘榴の言葉が刃のようなものになった途端、空気が変わった。体内の紅霊石(こうりょうせき)の魔力が発動したのか、吐いた息から粒が生じていき。そこから大量の結晶が生まれていった。


 刻牙にいたというその女性は、宝石の量を見ても群がることなく。ただただ、柘榴を見つめ返すだけだった。それに怒りが少し萎えた柘榴は、石はそのままにまた女性に質問することにした。彼女も応えてくれるような雰囲気だったからだ。先に彼女が口を開いた。



「ええ素材、とあいつらなら言うやろうな? けんど、わっちはもう奪う側ちゃう。望みは、この管理者のわんちゃんの配下になりたいねん!」

「「「「「「……は?」」」」」



 切り替えて、またはしゃいで夜光に抱きついたのだが。また唖然とさせられる内容を口にされ、今度は夜光も固まるほどの状況となったのだ。




次回はまた明日〜

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