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第42話 結局彼らも加わり、再開

お待たせ致しましたー

 歓迎会についてだが、せっかくこれだけの人数が揃ったのだからと。柘榴(ざくろ)が提案して、全員で参加することが決定した。呉羽(くれは)もそれがいいと賛成したため、女子二人のお願いと言うことで彼らも了承してくれたのだ。


 主役が死人でも未成年なので、大人組もノンアルコールドリンクで乾杯したのだが。



「おいひ~~! 遠慮なく、このご飯食べれるからうれし~~!! めっちゃ美味し!!」

「よかったねー」

「ザクロっちのサンドイッチおいしーもん!」



 裏表なく褒めてくれる表情だと分かるから、心がくすぐったい。この少女が、外見はともかく陸翔(りくと)に惚れたという事実は、陸翔にはどう伝えるのか。(いずる)との会話では、たしかに脈ありかもと話題になったものの。彼は死人でも『バツイチ』状態だ。その妻や子どもたちは当然亡き人だとしても、未練は多いだろう。それもあって、彼の姿は『ゾンビ』かもしれない。罪を背負ったままだから、滞在を許されてもその姿でいるのだろうから。


 呉羽にこの事実を伝ええたところで、どう切り返すか。気にしないよりも、『罪の重さ』を彼女自身も己のことで理解しているから、簡単には言えないはずだ。秘めるか、伝えて玉砕するか。もちろん、当人同士の感情が一番だけれど。



「ははは。宝石料理を気に入ってもらえてなにより。しかし、メインのデザートをせっかくなら食べてみたらどうだい?」

「メイン?」



 なんだったかと、呉羽と顔を合わせていれば夜光(やこう)は足で陸翔が作った最初の宝石料理に向けた。呉羽はそれを見て思い出したのか、すぐ近くにあったので掲げるように皿を持ち上げる。落とさないように、芸術品を鑑賞するように眺めては賞賛の言葉を紡いでいくのだった。



「これこれ! リクっちのケーキ!! 最後に食べようと思ってたけど~~、マスターがそこまで言うなら今食べる!! ほんと、ティアラとかの装飾品くらいキレ―だもん!!」



 この言葉に、陸翔はどう反応するか。ちらっと視線を向けたが、呉羽がタルトに釘付けになっているのにニコニコ微笑んでいるようには見える。だが、青白い肌でも耳は紅葉の葉のように真っ赤に染まっていた。これはたしかに、呉羽に気がある証拠だ。後押しは、これから機会はいくらでもあるので、貫と協力しようと決める。彼に視線を向ければ、親指を立ててくれたので大丈夫だった。ただ、貪るように料理を食べているのは意地汚いので感心はしない。そこそこ年上でも、まだ二十代の男性だからだろうか。すぐに気付いた父親に軽く小突かれていたため、口に入れてた食べ物は飲み込んでいた。なんだか、可愛らしく見えたのは恋故の重症化したフィルターなのせいか。


 ともあれ、刻牙(こくが)に狙われる要素が増えてはしまったものの。この環境は悪くないと思っていた。友人が加わり、仮でも恋人がいる状況。生前なら、実に路線が変わり過ぎた人生だと嘲笑っていただろうに。あの嘆きの人生は、作られたものだろうか。そうとしか思えない、柘榴自身の変わりようだった。



「さあさあ、併せるならミルクたっぷりのロイヤルミルクティはどうかな? 色合いは異色だが、宝石料理だから気にしないでおくれ」

「わ! 真っピンク!! これなんの宝石??」

「ローズクオーツの名前ならわかるだろうか?」

「ぶっ!?」

「リクっち??」



 夜光が材料の宝石を言えば、陸翔が盛大に飲み物を吹いてしまっていた。そのあとに、何故か異様なくらいに体を震わせていく。まるで痙攣しているかのような異常さだが、呉羽と柘榴がぽかんとしている以外誰も指摘すらしない。なら、これはあれか、と柘榴も納得がいく。ローズクォーツは柘榴でも生前から知っている『恋の石』の代表格。であれば、夜光の発言は直撃なくらいに陸翔の心にヒットしたのだろう。そうでなければ、あれだけ反応しないわけがない。


 しかし、呉羽は他人の感情の一部には鈍感なのか呆然としたままだった。恋は当人同士には通じないとは、このことなのかと柘榴は納得した。



(くれちゃんには幸せになってほしいけど……陸翔って、変にヘタレなのかも)



 未練たらたらなとこがあっても、切り替えが苦手なのか。魔法の詠唱にも出ていたのだから、結構不器用な性格なのだろう。他人ごとではないので、柘榴もなんとかしたいとは思ってはいるが。貫と出会って、こちらの時間では三日程度。ほぼ一目惚れにしても、契約恋愛状態でも、本心を素直に曝け出していいのか不安だ。今まで、恋愛どころかコミュニケーションを拗らせ過ぎてた陰キャでしかなかったのだ。


 今でこそ、感情の解放があったから堂々としているように見えるだけ。本当は、とてもびびりでしかない。



「……ねー、ザクロっち? リクっち、どったの??」



 まだ痙攣している陸翔を見ても、呉羽は一切気づくことが無いので。ここは軽くフォローするだけにしようと、肩を叩いてやった。



「勉強して、宝石の意味は覚えようか?」



 それを学んだあとでも、あのリアクションの意味を理解すればいい。この少女は結構感情の機敏が激しいから、陸翔以上になることは予想出来ても。


 そのあとは、陸翔が盛り直してから呉羽が幸せそうにタルトと紅茶を、『おいひ~』と言いながら平らげたのである。

次回はまた明日〜

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