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第41話 対策会議となる

お待たせ致しましたー

 パーティーの料理だが、呉羽(くれは)の身体を改めて検査してから食べ直すこととなった。検査と言っても、(いずる)の父親の駿(すぐる)が対応してくれるらしい。


 所謂、サポート能力に秀でているようなので、こういった魔法も可能だとか。本人曰く、家系能力もあるそうだ。(かんなぎ)と呼ばれる霊能力が高い家柄で、堺田(さかた)家は代々シャーマンとも呼ばれる能力者が多い。彩葉(いろは)との結婚などがきっかけで、一部の傲慢な性格の者らが悪用しようとしたそうだが。すぐに、冥府からの通達がきたことで免れたらしい。どこの家でも、すべてが等しく同じとは限らない。


 理性があることは、すべてが平等ではないのを決めたのは。創造した神々の縛りみたいなものだと。魔法発動時に、彼の瞳が黒から真紅に染まれば。呉羽の目がうつろな光に化した。大丈夫か心配になったが、数分後には互いに元の状態に戻っていく。



「……ふーん。たしかに、紅霊石(こうりょうせき)の恩恵を多大に受けていますね? にしては、限定したような力の働き方。おそらく、柘榴(ざくろ)ちゃんが呉羽ちゃんの死因などを知ったために……無意識で発動してしまったのかもれませんね。要検証ですが、何度も発動したらそれこそ刻牙(こくが)側が利用価値の高い駒として扱うでしょう」

「……イズルっちパパの言ってること、わかんなーい」

「ああ、ごめんね? 簡単に言えば、君は柘榴ちゃんのように素材ではないが。簡単にあの世には行けない状態になっちゃったんだよ。生き返るのとも違うけれど」

「ってことは! あたし、まだここに居てもいいの!?」

「そうだね。無闇に弄っても、閻魔大王様が面倒がるだろうし」

「わーい!」



 本来なら喜んでいいことではないが、柘榴は少し安心出来た。呉羽がいてくれることももちろん嬉しい。しかし、彼女が心に芽生えさせた陸翔(りくと)への恋心も無駄にならなくて済んだ方が大きかった。



「ふむふむ。先々の不安はまだ拭えないが、ひと段落ついたことに変わりない。とりあえず、従業員見習いは引き続きお願いしようか?」

「うっす、マスター!」

「良い返事だ」



 夜光(やこう)も弟子にはしないことから、やはりまだ可能性のすべてを捨てきれないための処置にしておくようだ。その方が、呉羽を下手に狭間の中に縛り付けない理由にした方がいい。呉羽自身はそこに気づいているか分からないが、とにかく滞在期間が実質伸びたことを喜んでいた。



「賑やかですねぇ。これからしばらくよろしくお願いしますね?」



 ターゲットになることを認識していない陸翔本人は、にこにこ笑っているだけ。その微笑みにノックアウトされた呉羽は、速攻で沈んでしまった。このリアクションについて、(いずる)が柘榴を隅に呼んで聞き出すのは自然な流れだろうて。



「……おい。あの見た目で、惚れたのか? あのお転婆」

「……うん。ゾンビでも惚れたって、さっき聞いた」

「悪くはないが。陸翔、ちと難しいぞ?」

「ゾンビだから?」

「いや……生前の家族だから、今は関係ねぇが。あいつ、妻子持ちだったらしい」

「……それは」



 陸翔本人は、死後数百年の月日が経っているので彼らも既に死んでいたとしても。忘れられないとかは、理性でどうこうなるものではない。柘榴が母を忘れられないで生活が廃れたに等しかったのだから、死んだあとでも呉羽を受け入れられるかどうかは。やはり、陸翔の心も大きく関係している。それでも、呉羽の身体の変化には過敏に反応はしていたが。



「ま、個人の自由だしな? 成就するかしないにしても、あいつが後悔ないようにすりゃいい」



 心配していただけなのか、反対はしていないらしい。ちょっと、いや大分感心してしまった。特殊な事情持ちであるから、恋愛観の偏見はあまりないようだ。むしろ、その偏見のなさに、柘榴自身は彼への好意が強くなるばかり。外見に寄らず、人情深い性格がまた惚れる要素でしかないのだった。



「……そうだね。陸翔も、なんか脈有りなリアクションしてたけど」

「マジ? 滅多に動じないあいつが?」

「え、うん? くれちゃんがあの姿になったら、盛大にお茶こぼしてただけだけど」

「めっちゃ動揺してんじゃねぇか?! だとしたら、まあ……過剰に心配しなくていいか?」

「杞憂になりそう?」

「だな」



 自分と貫の関係も、仮初ではなく本物になって欲しい気持ちはあるが。そこもやはり、貫の気持ちを無理強いしてまで押し通したくはない。現実に戻れるとしても、柘榴が成長出来る段階になったとしても。貫の両親には気に入られても、柘榴が『普通』の生活を出来るか自信がないのだ。


 特に、まだ実父は柘榴の死をどう受け止めたのかも気がかりだったから。



「ふふふ。おじさんとしては、若い子の恋愛には全面的に応援したいがね?」

「「どわ!?」」



 いきなり割り込んできたのは、浅葱(あさぎ)だった。貫と同じタイミングで驚いたが、やはり夜光に似た感じのこの男性はある意味苦手だ。掴みどころがないし、性格が把握しにくい。貫にとっては頼りになる上司で、柘榴には足長おじさんでも。正直言うと、あまり接したくないタイプのままだ。



「浅葱さん!? あんま驚かせんでください!! 柘榴もびびってんじゃないっすか!!」

「ははは。おじさんのお茶目な声掛けをしたまでだけど」

「あんたは、昔っからそうだなあ!!?」

「こらこら、貫。仮にも上司に対してその口の利き方はやめなさい。今は業務中だろうに」

「ここは別にいいだろ!? つか、親父は何してんだ!?」

「うん? 将来の息子のお嫁ちゃんになでなで?」

「やめろ!?」



 そう、いつのまにか。駿は柘榴の横に立っていて、愛でるように頭を撫でていたのだ。手つきは子どもを愛でるようなものなので、あまり嫌悪感はないが。まだ決定事項ではないのに、彼にとっては息子の婚約者扱いなのは決まってるのと同じなようだ。


 全力で、貫が父親から柘榴を引き剥がしたけれど。そのあとが、囲うように抱えてきたので柘榴は思わず変な叫び声を上げ、呉羽の方にダッシュして抱きついた。



「うぉ!? ザクロっち!?」

「無理無理無理!? なんか、キャパオーバーしそう!!」

「なにされたん?」

「囲われかけた!!」

「違うわ!? 柘榴を親父から剥がしただけだろ!!」

「えー? イズルっち、えっちぃ~~」

「ば!?」



 収拾がつくようでそうで終わらず。カオスとなった空間では、貫が石化のように固まったことと。柘榴が羞恥心の限界で、もちもちでやわらかくなった呉羽に抱きつきながら泣く始末となったのである。



「いやはや、どの時代の恋愛事情も可愛らしいねぇ?」

「夜光殿。ここは、本格的に支援側に移りましょう!」

「構わないが、本人らの意思を無視はやめようか? 浅葱くん」

「ダメですか……」

「あの、マスター? そこに僕も含まれている気がするのですが」

「君とて、まだ若いのだから可能性はあるのだよ?」

「……そう、かもしれませんが」



 端の方では、陸翔が実は自覚しているのを目撃していたと、あとで駿からこっそり聞いたのだった。

次回はまた明日〜

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