第40話 ホームパーティーは宝石グルメだらけ①
お待たせ致しましたー
「ははは。そのように作用してしまうとは……呉羽くん、とりあえず鏡を見ようか?」
「うん??」
夜光が苦笑いしたあとに、魔法で小さな手鏡を出してくれたが。呉羽が食べていたものを飲み込んでから受け取ると、覗き込んですぐに目を丸くしたのである。
「どうかね?」
「ちょ!? こマ!!? なにこれ!!? あたし、これ中学生のときのじゃん!!?」
「くれちゃん、美少女だったの!!?」
小学生のときの姿は、実を言うとうろ覚えだったので数年間の成長でそれほど変わっているとは思わなかった。それが何故、数分前までのぽっちゃり可愛い系のギャルになったのかもまた不思議ではある。
呉羽は鏡を凝視しながらも、ほどよく痩せていた体型の頃に戻れたことでめちゃくちゃはしゃいでいた。
「なーに!? これもザクロっちの魔法!!? なにこの効果! すっご!!」
「いやいやいや!? あたしに、そこまでの能力ないし!? そもそも、あたしの石使ってないよ!? 夜光、これなに!!?」
「……僕もそれは、気になります。マスター」
抱きつく呉羽はともかく、ここは夜光に問い合わせする内容だ。陸翔も興味があるからか、表情は元に戻りかけたので参加しようとしている。夜光は多方面の問い合わせは予想していたのか、落ち着いた様子で紅茶のカップの中をぺろぺろと舐めていたが。犬の時はあのように食事するのに抵抗はないかと疑問に思うけれど、今はスルーすることにした。
「……ふむ。柘榴くんの魔法には、どうやら『感情』が上乗せする効能があるかもしれないね? 紅霊石を精製せずとも身体そのものが『素材』だからこれまでの魔法にも作用していたのだろう。とくれば、媒介の石が別であっても力が注入されてしまうのだろうか。これは、新たな発見となるね」
「発見はともかく!? あたしの力がさらに悪用される可能性って」
「昨日以上にあり得るねぇ? また、貫くんだけでなく浅葱くんも招集しなくてはいけない事態だ」
「だよね!?」
貫に会えるのはいいのだが、これは非常事態だ。浅葱もいなくては、対策の強化も必要なので来てもらった方がいい。呉羽にもそれ以上宝石料理を口にしてもらうのを止めて、貫らが来るまで普通の紅茶でパーティーの続きをすることとなった。
「いや~~ぁ。まーっさか、死んでから痩せれるって思ってなかったわ~~。魔法ってやっぱチートだねぇ」
「くれちゃん。たしかにチートだけど、異常だから。普通こうならない」
「そなん? ザクロっちの得意技かと思ったんに」
「いやいやいや」
呉羽の本来の体型がこんなにも美少女だとは予想外過ぎた。ぽっちゃりでも可愛らしいとは思っていたけれど、逸材過ぎる。殺害されなければ、おそらく読モからプロのモデルにもスカウトされただろうに、本人はあまり意識してなかったのか気にしていないようだ。
「しかし、随分と変わられましたね? あの姿も愛らしかったですが、何故そのように?」
「ぶふ!? か、カワイイ?? リクっちにはそー見えるん??」
柘榴や夜光の反応には普通に対応していたが、陸翔は別だった。過剰に顔を赤らめていて、まるで恋している少女のような展開。まさか、と柘榴は慌てている呉羽を連れてホールの隅で問いかけることにした。
「……くれちゃん? まさかだけど、陸翔に惚れたの??」
「……なしてわかるん? だって、そりゃ外見はゾンビだけど。……紳士タイプ、実は好みなんだもん。よく見たらイケメンだしぃ?」
「本質見抜くのすごいよ……。あの人、生前は超絶イケメンだから。たまにだけど、変身するんだよ。見ちゃったら、さらに惚れちゃうかも」
「なにそれ!? 見たいみたい!! え、マスターの方も?」
「うん。まあ……なにがあるかわかんないし、応援はするよ」
ある意味で、紅霊石の恩恵は受けてしまっているために。冥府への切符どころではなくなってしまっている。場合によっては、素材のように扱われるかもしれない。陸翔は既に死者なので現世に戻ることは不可能でも。狭間に逗留する形での未来は可能性がゼロではなくなった。そう思うことにして、今は現実逃避することにしたのである。
「なんで、こんな事態が起きんだよ!?」
こちらの時間で数分後に、貫らは来訪してきてくれたが。頭を抱えている彼の横には、少し貫と似た顔立ちの中年男性が並んでいた。服装と雰囲気から、おそらく刑事なのは察せれるが。それ以上の推測があって、柘榴は簡単に口に出来ないでいた。
「はは。貫の彼女さんは、面白い能力を開花させてしまったね?」
「うっせぇ!? 親父はなんでついてくんだよ!!」
「何故って。事情はどうであれ、一応お付き合いしている女の子に挨拶くらいはしないと」
「だーかーらーぁ!?」
やはり、貫の父親だったか。容姿の一部が似ている以外は浅葱に似た感じではあるが。彩葉を妻にした強者にはあまり見えないのが本音だった。彼と目が合えば、貫が快活に笑ったときと似た感じの微笑みを寄越してきた。
「君が柘榴ちゃんか。随分と美人さんだね? 素材にされたとは言え、うちの息子にはもったいない」
「……あの、一応護衛の関係で」
「もちろん事情は知っているよ? しかし、浅葱さんの提案は俺の時もされたんだ。なら、息子のこいつにも可能性は高い」
「親父!?」
「なーんか、愉快なおじさんだぁ。イズルっちのパパ」
「なんだよ、そのあだ名!?」
なにはともあれ、個性的なメンバーが勢ぞろいとなったのだった。
次回はまた明日〜




