第31話 計画は変われど
お待たせ致しましたー
「っつーことがあったんスよ? 今回は取り逃がしちゃいましたけど~、あれは相当の逸材ですって」
部下のひとりが、取り逃してしまった紅霊石の逸材。本来なら切り刻んで処分するところだが、念のために報告内容を聞いてみれば気が変わり出した。
その報告内容が、こちらに有益過ぎるものだったからだ。取り逃がした時は、血眼になっても捜し出したものだが、この部下が何故取り逃がしたのか理由を聞けば納得がいく。
都合が良過ぎるのだ。いつかは奪おうとしていた異空間である『狭間』の管理人の庇護下にいったということ。であれば、稀少石を奪うに奪える。さらに、何十年前に保護されてしまった素材の子孫もいるという。番った人間が、現世の心霊課の刑事であれば能力は未知数。己はあまり遭遇してなかったが、そんな逸材揃いであれば紅霊石だけでなく、さらに稀少種を『刻牙』の掌中に収めることが出来れば。
異空間や現世どころか、神域を侵す目標が実現可能になると言うこと。なら、育成を任せば、最後を奪い取るまで。あちらもそれくらいは予測していても、こちらの方が上手だということを生意気な管理人に教えようではないか。
「……まあ、いい。お前の処分は不問にしておく。だがその代わりに、死を覚悟してもあの素材らをすべて刻牙に進呈するとうに務めよ」
「……御意」
この部下も大概に生意気だが、仕事は仕事だと理解しているからか一応は態度を示してから下がっていった。あれはあれで、殺しの技術に関してはそれなりに信用はしている。紅霊石の素材にした少女を確実に急所を突いて殺し、素材へと転身させるのには無事に成功したのだ。
適性となった身体を捜索するのには苦労したが、素材としての研磨になるのなら逆に好都合。最上級の素材へと育成されれば、こちらも永久の野望とも言える計画を遂行する道筋となるであろう。使える手段はなんでも使う。たとえ、宿敵の手で育成されたとしても、最終的には奪い取ればこちらのものだ。言い訳など、この際掻き捨てればいいだけ。
「……不老不死。さらにその先の『神』へと転身出来る計画を成し遂げるために、今しばらく辛抱するだけよ」
どれほどの犠牲が出ようが、今更構わない。神への道筋を歩んだ時点で、禁忌など今更恐ろしくもなんともないのだから。
他の幹部らも気づいたのか、己に倣って含み笑いから始まり、やがて部屋中に響き渡る歓声へと変わったのだった。
「悲願は、いずれ成し遂げられる!」
そのためには、最終段階ではあの狭間と呼ばれる忌々しい空間も閉ざさなくては。冥府への案内所など、どうせこちらが神になれば必要ないのだから。
次回はまた明日〜




