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第28話 魔法訓練②(吸収と循環などの修行編①)

お待たせ致しましたー


「初めての試みとは言い難いが、ここはひとつ。(いずる)くんの母君の魔法を参考にさせていただこう」

「お袋の?」

「能力は違えど、同じ稀少石の素材。であれば、倣うのが妥当なのだよ」

「たしかに、参考とするのなら良い提案ですね」



 復活した夜光(やこう)に貫が詰め寄り、出てきた案がそのような内容だったが。貫の母親の事情は昨日に聞いたものの、どのような人物かは詳しく知らない。柘榴とほぼ同じような種族らしいが、子どもを産める体であるのは純粋に興味があった。死んだからもう叶わないとか諦めていたことが、もしかしたら叶う希望。貫はあくまで護衛も兼ねた仮の恋人なので、将来的に彼と結婚するとは限らない。それでも、知っておきたかったが今はその時ではない。


 貫が何か思いだしたのか、自分の携帯を出して何か操作し出した。やり方から見て、多分通話だろう。耳に当てて、話し出そうとしていたら。



『あ~ら、いっくん? なんなん、急にこっちに電話してきてぇ』



 貫の怒号に負けないくらいの、大音量で携帯のマイクから女性の声が響いてきた。反射で耳を塞ぐ声量だったが、貫のことをあだ名で呼ぶのなら親しい間柄なのだろう。おそらく、関西弁のような話し方の女性は貫の母親本人に違いない。



「うっせぇ! いちいちその呼び方すんなよ! マスターが用件あっから、久々にかけただけだ!」

『照れんでええのにぃ? 聞いたで~? マスターんとこに来た新人ちゃんと付き合うことになったん? しかも、うち以上の素材の女の子。その子のことなん? わざわざ紹介してくれるん……ちゃうよなあ』

「わかってんなら、こっち来てくれ。お袋しか方法がわからんかもしれねぇ」

『はいはい。手土産くらいは用意させてぇな? そっち時間で三分後には行くわ』

「……ああ」



 酷く面倒そうに通話を切ってからの舌打ち。ヤンキーのような外見と性格だから、やはり母親は特殊な存在でも遠慮のない態度を取っている。通話の声を聴く限り、世話焼きで可愛がっているように感じたので、幾らかうざいのか。母親大好き人間だった柘榴には、同級生の会話を聞いた程度の知識しかないが。



「……貫のお母さんって、生きてはいないんだよね?」

「ああ、完全に死人だ」

「普通……に、現世?にいるんだよね?」

「特殊な魔法を、マスターに施してもらってるし。戸籍も一応……ある」

「ほぼ生きてる扱い?」

「まあな。……場合によっちゃ、柘榴もそうなる」

「え? まさかぁ?」

「お袋に聞いてみろ」

「来たで~~~~!!」



 呆れた表情になった貫の言葉のあとに、彼がさっきした時と同じくらいの爆音で入り口の扉が開かれた。本当に、数分で貫の母親が来店してきたのだ。時差があるとはいえ、どういう仕組みかいまいちわかっていなくても実行は可能。入ってきた女性は、かなり派手な花柄の着物を着ていてずかずかと入ってきた。死人の割には血色が良く、かなり若くて美人だ。貫は父親似なのか、造形はあまり似ていない。唯一、目の色は同じだった。



「うるせぇ!? 相変わらず騒がしいな!」

「なんや~、緊急事態言ったんはあんたやろ? なんなん、狭間に来いって? マスターはんらはお久しゅうー」

「さあ、久しぶりだねぇ。彩葉(いろは)くん」

「ご無沙汰してます」

「は、はじめ……まして」



 気さくな性格なのか、息子以外は歓迎しているようだ。慌てて挨拶すると、何故か彩葉はロックオンしたように柘榴を凝視してきたが。



「……お嬢ちゃん、例の……うちの子の彼女?」

「か、仮のですが」

「そこは知っとる。救済処置やろ? ……めっさ、可愛ええ子やん!?」

「わっ!?」



 テンションは高いが、きちんと理解してるところはあるようだ。それでも、息子の恋人は可愛いと思ったのか、豪快に抱きついてきた。同じ女性だから違和感はないが、死者は祖母以外だと初めてでも、やはり体温のようなものは感じ取れたのが不思議だ。思わず、手を回しても触れている箇所はまったく冷たくない。



「艶々黒髪~! ほんま、素材なん? うちよりしっかり身体出来とるし、血の量も段違いやん! んで、あんたは何の素材にされたんの? なんとなく、いっくんの言い方から予想はしてたけど」

「紅霊石」

「は?」

「ガチもんの、あんたが錬成されかけた原石の種族だったっせいで……覚醒させられたんだよ」



 彩葉の質問に答えたのは、息子の貫だった。素材にさせられた宝石の名を出せば、彼女は当たり前のように柘榴を抱きしめたまま硬直した。素っ頓狂な声を出したので、驚いたに違いない。彼女自身も何かの宝石の素材ならば、その名前はよく知っているはずだから。



「……マヂ?」

「マジマジ。観察すりゃ、一発だろ?」



 息子の言葉のあとに、彼女は柘榴の顔を覗き込んできた。深紅の瞳を輝かせ、柘榴自身の本質を覗き見るような、そんな眼差し。しかし、柘榴は嫌悪感を持つことはなかった。その輝きの中に、あのチャラい殺人犯のような好奇心は一切見えないからだ。しばらく待つと、彩葉は大きく息を吐いて柘榴を解放してくれた。



「ほんまや……うち以上の稀少石の魔力がびんびん感じられるわ~。なんなん、あんたの彼女ちゃんとんでもない爆弾やないか」

「その爆弾作ったのが、お袋を素材にしたあいつらだ」

「あ゛? あのあほんだら? 難儀や! 流れ人の血があるからって、その理由だけで素材行きぃ!? あいつら、ほんま自分勝手な欲で動くなあ!!」



 綺麗な猫っ毛の茶がかった長い髪を掻きむしる仕草は、やはり親子だと理解してしまう。色々叫んだあとに、彼女は夜光に振り返ってずかずかと近付いていくと。



「だいたいわかったかね?」

「さっきから気配なんとなくわかったわ。もしかして、大量の紅霊石がこの店の中にあるん? うちは、何をあの子に教えたらええのん?」

「おそらく、素材のみに可能な自己吸収。そのコツが柘榴くんにも可能かを検証してほしいのだよ」

「おん。息子の彼女ちゃんのためや! 出来るだけ、丁寧に教えたる!」

「全力で丁寧にしろよ……」

「自分で言うのなんやけど、うち感覚派やし?」

「ボケてねぇで、さっさと伝授しろ!」

「相変わらず照れ屋さんやんなあ? こんな可愛い子が護衛でも彼女候補やねんからー。うちのダーリンみたく、くっついて欲しいわぁ。柘榴ちゃんって、かわええー」

「はあ……」



 どうして、ここの大人は揃いも揃ってこんなにも個性的なのか。そこについては、下手にツッコミを入れると疲れるだけだとやめておくことにした柘榴である。とにかく、石をどうにかしなくてはと厨房に移動すれば、彩葉はオーバーリアクションくらいにひっくり返ってしまった。


次回はまた明日〜

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