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エピローグ②

 翌日。

 京都に戻った叶が荷物をまとめているとスマートフォンに幸太からメッセージが届く。


(叶さん、今週末検査して異常がなければ退院出来るそうです。叶さんは帰って来れそうですか?叶さんに会いたいな)


 届いたメッセージを見て叶が満面の笑みを浮かべていた。


(そっかおめでとう。じゃあそれまでにはそっちに戻れるようにするからそれまで大人しく待っててね。私も楽しみにしてるから)


 メッセージを送ると叶が小さく呟く。


「私も会いたいんだよ、幸太君」


 そう言って一人笑みを浮かべて、ふとパソコンに目をやると一通のメールが届いている事に気付いた。

 叶は少し首を傾げながらそのメールを開いてみる。


『鬼龍ちゃんお久し振り。

ニュース見たけどなんか大変だったみたいね。

まぁそれはそうと私達、今忙しくて案件が被ってるんだけど、一つ代わりに受けてくれない?とりあえず詳細はまた話すから連絡してね。   陸奥方(むつかた)志穂(しほ)


 メールを読みながら叶は電子タバコを咥えて紫煙をくゆらせる。その後、天井を見つめ、座っていたソファに身体を預けた。


「志穂さんか……なんで私に振るかなぁ……」


 そう呟きスマートフォンを持つと、電話帳から志穂の名前を見つけタップする。

 数コールの後、電話はすぐに繋がった。


「もしもし?」


「もしもし、鬼龍叶です」


「あら鬼龍ちゃん久し振りね。電話くれたって事はメール見てくれたのかな?」


「見ましたよ、なんですか案件って?」


「何よ?怒ってるの?実はね斗弥陀(とみだ)グループからの依頼があるんだけど鬼龍ちゃん代わりに受けてくれないかなって思ってね」


 叶は一旦目を閉じると、少しうんざりした様子で静かに語り掛ける。


「……斗弥陀グループってなんですか?有名な会社なんですか?」


「斗弥陀グループって建築関係の総合商社よ、知らないんだ?結構大きな会社で業界の中でもトップクラスのシェアらしいよ」


「そんな大きな会社の案件なら志穂さんが受けたらいいじゃないですか」


「そうしたいけど私達も今別件で忙しいのよ。流石に先に入ってた先約を疎かにも出来ないしさ、お願いよ鬼龍ちゃん、友達でしょ?」


「……お世話にはなりましたが、私と志穂さんて友達でしたっけ?今私達事件に巻き込まれて結構大変なんですけど?」


「分かってるわよ。でも斗弥陀グループよ?それなりの報酬期待出来ると思うんだけどなぁ」


 叶は電話で話ながらも、今志穂がどんな表情をして話しているかが簡単に想像がついていた。


「志穂さん絶対今悪い笑い方してますよね?」


「あら、霊能力だけじゃなくて千里眼まで身につけたの?」


 そう言って電話口で笑う志穂に対して、叶は呆れたように小さくため息をつく。


「私に千里眼があればあんなニュースになる前になんとかします」


「ははは、まぁそうよねぇ。ねぇ鬼龍ちゃんお願いよ」


「……まぁ今回志穂さんに教えて頂いた護身術のおかげで事なきを得たんで、こっちが少し落ち着いてからで良ければ考えますけど」


「あら、役立ったんだ、それは良かったわ。なんならもっと教えてあげようか?例えば男を喜ばせる方法とか」


「必要ありません!切りますからね!」


 そう言って叶は乱暴に電話を切った。

 一方的に電話を切られた志穂はスマートフォンを見つめながら含みのある笑みを浮かべる。


「本当に切っちゃった。鬼龍叶、少し変わった?何かあったかな?」


 志穂が一人呟き笑みを浮かべていると少し離れた所から男性が声を掛ける。


「どうした?何かあったのかな?」


「いえいえ、特にたいした事はないですよ。ただ旧友からちょっと連絡があっただけですから」


「旧友?珍しいな。僕も知ってる人かな?」


「ええ、鬼龍叶です」


「ああ!あの綺麗な子か」


「ええそうです。さぁさぁ仕事しましょうか先生」


「え、ああ、そうだな」


 志穂に急かされる様にして、二人並んで歩いて行く。


――

 数日後。

 駅前の焼き鳥屋には久し振りに四人が集まっていた。


「幸太君退院おめでとう」

「ありがとう」


 四人掛けのテーブルに座り、対面に座る咲良が元気良く声を掛けると幸太も少し照れながら礼を口にする。


「これでやっと四人でゆっくり乾杯出来るな」


 弘人が笑いながら言うと全員が笑顔で静かに頷いていた。


「でも君はまだ全快じゃないんだから程々にしときなよ」


「まぁ分かってるって。ただ、また皆でこうして集まれたんだから今日は少しぐらい飲み過ぎても大丈夫だよね?」


「まぁ仕方ないからその時は少しぐらい介抱してあげようかな」


 叶が覗き込むようにしながら笑って言うと幸太は嬉しそうに頭を描いた。


「じゃあとりあえず乾杯!」


 四人は元気な掛け声と共にグラスを合わせた。


 霊よりも怖いもの、それは人~ある夏の出会いと別れ~


            ~完~

という訳で7月中旬から投稿を始め、約二ヶ月に渡って毎日投稿していた『霊よりも怖いもの、それは人~ある夏の出会いと別れ~』無事完結しました。

ここまで読んで下さった皆様に感謝です。本当にありがとうございました。


この作品春頃に『夏に向けてホラーを一つ書こうか』と思ったのをきっかけに、なんとなく書き始め『夏だから海を舞台にするか……夏の海で彼氏を殺して埋めてしまった女の物語とかかな』そんな軽い感じで始まった物語でした。


初めは短編から五万字までの中編ぐらいのつもりでしたが、『まだ時間はあるからどうせなら久し振りに長編にしてみようか』と思い、主人公を犯人側ではなく謎を追う側に変更しそんな中、丁度いい役として白羽の矢が立ったのが短編『縛られた想い』の叶でした。

元々『縛られた想い』は他サイトでコンテスト用に書いた短編だったのでそこで終わりの予定だったんですが

「これの続きは……?」

「物語の導入部分としてもいい」

という御意見等を頂き、続きを書こうか悩んでいた所だったので本当にタイミング的には丁度良かったです。


あとは初めに決まっていたオチに向けて、叶を絡めながら色々なエピソードを加えて、物語を組み立てて行きました。


基本的に自分の作品はオチが最初に決まり、そこに向けてキャラ達を動かして行く感じです。


 短編だと怖い部分をガッと入れて一気に行けるんですが、今回長編だった為に幸太と叶の恋愛エピソードが結構な割合を占めてしまい、結果怖さやミステリー感が薄くなってしまいました。

 そういう意味では自分の短編の『あの日のかくれんぼ』や『神社』にあった怖さやゾクッとする感覚を求めた方からしたら物足りなさを感じてしまったかもしれませんね。


因みに新たなキャラが出てきたりして、含みのある終わりになったエピローグでしたが、実は続編を書くかはまだ決めてません。

続編書くならこんな感じで、とはおぼろげに考えてはいますが、今はまだなんとも。これからの評判次第でしょうか(笑)。


ただ書くなら、幸太と叶はもう既にくっついたので今作よりは恋愛要素は少なめのホラーやミステリー色が強めの作者の趣味に走った様な作品になるかもしれません。


自分の作品を読んでくれた方が少しでも『面白かった』『このキャラが好きだった』と思ってもらえたら、創作者として、これ程嬉しい事はありません。少しでもそう思ってもらえるようにこれからもマイペースに創作活動をしていきたいと思いますので、また時間が合えば読んでやって下さい。


赤羽でした。

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