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告白⑧

「あの日の事を話そうと思ったらまずは私の事を話さなきゃ始まらないからさ、ちゃんと聞いてね……私、霊が見えるの」


 叶の秘密――。それが何なのか気になっていた幸太だったが、突拍子も無い事を聞かされ唖然としてしまう。


「ふふふ、まぁそういう顔になるよね。おかしな事言ってるとは思うんだけど本当に見えるんだから仕方ないでしょ?私は霊が見えるってだけでそれなりに酷い目にもあってきた。霊ってさ、皆綺麗な人の形してる訳じゃないの。酷い事故現場とかだと目を背けたくなるような姿をしている霊もいる。そんな霊を子供が見たらどうなると思う?」


 叶の問い掛けに幸太は思わず言葉が出て来なかった。叶は少し微笑み更に続ける。


「子供の頃の私は周りから見たら情緒不安定な子だったと思う。突然泣きだすし、急にこの道は通りたくないとか言い出すんだから。それに誰も居ない所で急に喋りだしたりするもんだから周りの子からは変な目で見られてさ、避けられて虐められた。小学校高学年ぐらいになると、流石に霊は無視するようにしてたんだけど一度張られたレッテルは剥がれる事はなくて『変な子』『気持ち悪い子』と言われ続けてた」


 叶は少し遠くを見つめて悲しげな笑みを見せる。その悲しげな瞳は夜空を見上げ、まるで当時を思い出しているようだった。


「ほんと笑っちゃうよね。それで普通じゃない私は寧ろ霊と会話する事を選んだ。時間を作っては心霊スポットと呼ばれる所に行って霊と会話したりした。私がこの街に来たのもそんな理由。そうそう、丁度この街に来た日に君に出会ったんだよ。項垂れて、負のオーラをまとってずっと動かないから初め地縛霊かなんかかと思ったぐらい君は悪い気にやられてたね」


 叶が笑いながら言うと、幸太も笑みを浮かべながら冗談めかしく返す。


「いや、思い返してみたら、自分でもあの時は本当に酷い状態だったと思いますけど、地縛霊と間違わないで下さいよ」


「ふふふ、でもあの時の君はそれぐらい負のオーラをまとってたんだよ。私は次の日に霊が出るって噂の崖の上や旧校舎に行ってみた。崖の方はガセネタだったけど旧校舎は本物だってすぐに分かったわ。とりあえず旧校舎は後日行く事にして、更に次の日に噂話にもなってる海の方へ足を運ぶ事にしたの。そしたらびっくりする事に、先日会った人がまた前以上の負のオーラまとってるのよ。流石に我が目を疑ったわ」


「いやあの時は色々あってかなりメンタルやられてたんですよ」


「そっか、その後は君に送ってもらったよね?私はその後コンビニに行った時にあいつらに声を掛けられた。一目見てあいつらの後ろには怨霊と化してしまった霊や生霊なんかも取り憑いてる事は分かった。それだけの霊に取り憑かれてるんだからこいつらは相当酷い事をしてきたんだろうとは容易に想像がついたんだけど、あえてついて行ってやる事にした。あいつらが行こうとしている旧校舎は霊道になってる事は分かってたから怨霊達の手助けでもしてやろうかと思ってね」


 そう言って叶は悪そうな笑みを浮かべた。しかし幸太はそんな叶の横顔をみながら微笑んでいた。


「手助けって何するんですか?」


「怨霊になってしまったらもうどうしようもないから、復讐し易い環境でも整えてあげようかと思ってね。霊道は霊達が活発になる場所でもあるし『もう我慢しなくてもいいよ。好きにしていいんだよ』って教えてあげようと思ってさ。実際そう言ってあげたらあの子達、あいつらを掴み復讐を始めた。あいつらは今でも話が通じないぐらい精神がやられてるらしいよ。自業自得ってやつね。まぁ私もたいがいだけど。どう?結構最低でしょ?私」


 叶の問い掛けに幸太は笑みを浮かべて首を振る。


「どうなんでしょうか。個人的には綺麗事並べるよりは、叶さんの事支持しますけどね。でも叶さんの話を聞く限り、俺は余計な事したのかなって……」


 幸太が眉尻を下げて苦笑いを浮かべると、今度は叶がため息混じりに頭を振った。


「違うって。君が来てくれたから私は無事で済んだ。もう一人の子も同じ。まぁ服は破かれたみたいだけど、それだけで済んだ。もし取り憑いて怨霊となってた子達の動きが鈍くて、幸太君が来てくれなかったら私も少しは酷い目にあったかもしれない。だから幸太君のおかげで私は助かったんだって。まぁ一応護身術みたいなのも習った事はあるから好きでもない奴にやられるぐらいなら全力で抗うけどね」


 叶がそう言ってくれるだけで幸太は報われる様な気がした。

 叶は変わらずにこやかに幸太の方を見つめていた。ほんの少し、幸太が距離を詰めれば互いの息が触れ合う程に近付けるだろう。幸太がその気になればすぐ横にいる叶を抱き締める事だって出来る。

 だが幸太はそれはせず、叶の手をそっと握った。


「あ、あの叶さん。俺やっぱり叶さんの事が好きです。付き合ってくれませんか?」


 手を握り、まっすぐに見つめながらそんな事を言う幸太を叶は変わらない笑みを浮かべて見つめていた。

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