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告白②

 楓の海の家は元々この時期は繁盛していた。地元で採れる新鮮な海産物の磯焼き等も人気はあったが、勿論それだけではなかった。

 気立てもよく、艶やかで妖艶な雰囲気をまとい落ち着いた魅力のある楓に、愛らしく元気な笑顔を振りまく咲良もいて二人ともかなり人気があった。そこにモデルの様な容姿の叶が加わり来店する客達は色めきだった。


「あの海の家の女性陣はレベルが高い」

「あの海の家には一度は行っておくべきだ」


 そんな噂が瞬く間に海水浴場に広がっていったのだ。


「くそっ、今日は忙し過ぎだろ!しかも男の客ばっかりじゃねぇか!ここは海の家だぞ!」


 弘人が調理場で様々な食材を焼きながらぼやいていた。弘人の言う通り、店内には男性客が溢れかえり、皆食事をしつつ女性陣に話し掛けている。


「ほらほら、妬いてる暇あったら焼きそばとイカあと五人前ずつ焼いてくれる?」


「くそっ、別に上手くないからな!」


 笑みを浮かべながら咲良が注文を通すと弘人は文句を言いながらも素早く調理していく。店内では叶も忙しそうに食事を運びながら駆け巡る。


「お姉ちゃん、いつ終わるの?終わったら後で遊ぼうよ」


「ははは、女性スタッフの店外連れ出しは禁止されてますよ、お客様?」


 少し酔いがまわり調子が良くなった男性客に声を掛けられても、叶はいつも通り冷たい笑みを浮かべながら軽くあしらっていた。


 一方その頃。

 市内の病院で検査入院をしていた幸太は午前中の検査の結果、退院を許可され帰り支度を急いでいた。

 支度を整え、受付で挨拶を済ませると病院を後にする。


「今日も暑いな。さてと……」


 照りつける日差しを睨みながら幸太はゆっくりと歩き出した。病院前で客待ちをしているタクシーも目に入ったが、少し気分転換も兼ねて歩く事にしたのだ。

 少しは節約になる――。

 そう思ったのが一番の要因かもしれない。


 ひとまず幸太は自身が一人暮らしするアパートではなく、自転車が置いてあるであろう旧校舎へと向かった。


 まだ痛む身体に夏の日差しが容赦なく照りつけると、包帯で巻かれた腕に汗が滲む。流れる汗が傷口にしみ、徒歩を選択した事を若干後悔していた頃にようやく旧校舎へと辿り着いた。

 あの時、叶の事が心配で到着するなり投げ捨てる様に乗り捨てた自転車は、今はきっちりと立てられ隅に置かれていた。弘人から「お前の自転車、鍵掛けといたからな」と言って渡された鍵を差し込み回すと『カチャ』という音と共に自転車のロックは解除された。


「弘人にもお礼言わなきゃな」


 幸太は呟きながら自転車のペダルをこぎ始めると、スマートフォンで時刻を確認する。画面には十三時と表示されていた。


「流石にこの時間はやばいか」


 昼過ぎの今、海の家の忙しさがピークを迎えているのは容易に想像がつく為、幸太は一旦自身のアパートを目指す事にした。


 強い日差しの中、三十分程自転車をこいで、ようやく自らのアパートに戻って来る事が出来た幸太は、ひとまず荷物を置くとシャワーを浴びる事にする。

 少し温めのシャワーを全身に浴びると汗が流れ落ちすっきりとはするが、同時にシャワーの水が傷口にしみる。


「くそっ全身がひりひりするな」


 シャワーから上がり全身をタオルで拭きながら幸太が呟いていた。あらためて鏡に映る自身を見つめる。身体中に切り傷や擦り傷があり、腕もまだ内出血の痕が残る。

 特に右まぶたと口端の傷口が深く、痛々しく見えた。


「くそっ情けない」


 苦々しい幸太の声が虚しく部屋に響く。


 幸太は気を失っていた為、あの時どうなったかは知らずにいた。ただ気を失った幸太を叶が旧校舎の入口まで引きずって連れて来たという事を伝え聞き、結局自分は叶を助けられなかったと幸太は思っていた。

 悔しさに打ち震えながら幸太はベッドで横になる。

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