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case4 背々裸川における恐竜怪雨事件について

・背々せせら川は、鳴降市の南東の山から北の馬坂市へ横断するように流れている小さな川である。事件が発生したのは、その小川が通過する鳴降市北町5丁目付近の、田が広がっている地域だった。当時、現場には誰もいなかった。しかし現場から一番近い場所に住んでいた老夫婦(以下に記す)が異音を聞きつけ現場に駆け付けた。


 鈴木幸次(79歳男性)

 鈴木三重(73歳女性)



・事件は20■■年7月16日、13:30頃に発生した。


 北町5丁目付近では突如「ドォン」という巨大な爆弾が破裂したような音が響きわたり、たまたま外で農作業をしていた鈴木夫婦がはっきりとその音を聞いた。周囲を見渡すと、田んぼの向こうに流れる背々裸側のあたりに土煙があがっているのを見た。その土煙は川を横断する送電線のあたりまであがっていた。


 幸次は三重に対して、「お前ぇはここで待ってろ。オレがまず見てくっから」と言い残し、一人で現場へと向かった。しかし、言いようのない不安に駆られた三重はその忠告を無視し、しばらくしてから後を追った。


 幸次は三重より先に現場に到着した。

 土煙が上がったあたりを見ると、大きなトカゲが川の流れをせき止めるような形で横たわっていた。大きな、と言ってもそれは幸次が今まで見たこともない、体長が7メートルを超える巨大なトカゲだった。

 はるか昔、幸次が学校の図書室で見た『恐竜の図鑑』のステゴサウルスとうりふたつだった。トカゲの背中には、植物の葉のような形状の骨の板がいくつもついており、しっぽの先には四本の角が生えていた。長い首はなぜかありえない方向にねじ曲がり、離れていても完全に息絶えているのがわかった。


 幸次はこれは何かの間違いではないかと思った。

 何者かが、いたずらでこのようなものを川に投棄したのではないかと。

 しかし、続けて別のトカゲが空から落下してきて、そのステゴサウルスの近くに墜落した。

 激しい水しぶきが上がり、川底の石が周囲に飛散する。

 幸次はあわてて避難したが、川の水を頭から被り、小石もいくつも体にあびてしまった。


 そんな折、ようやく三重が幸次に追いついた。

 三重は幸次が負った怪我に気付くと、おおいに心配した。しかし、そうしているうちにもう一体、空からトカゲが落ちてきた。

 驚きに腰を抜かす三重を支えながら、幸次はさらに後退して、離れたところから様子をうかがった。


 よく見ると、トカゲは三匹とも似通った姿をしていた。

 どれも落下の衝撃か、それ以前からなにかあったのか、みな息絶えてしまっている。

 川はせき止められ、ダムのように水位が上がり、やがて近くの田に水が溢れだしていった。


「こりゃあ、いかん」


 幸次は怪我をしているにもかかわらず、足をひきずり家に戻った。

 携帯電話は幸次も三重も所持していなかったので、家の電話を使いに戻ったのだ。

 まずは警察。続けて町内会の人間すべてに連絡。洪水のときは一致団結して治水に走らないといけない。

 迅速に対処していると、またも外から爆発音がした。


 結局、周辺には15体のステゴサウルスが出現した。

 15:30以降、ステゴサウルスは出現しなくなった。

《補足》背々裸川に出現した恐竜について


・警察の調べで、背々裸川に出現した恐竜はみな、K県立博物館に収蔵されているステゴサウルスの骨格と同じだということが証明された。

・おそらく直前まで生きていたであろうステゴサウルスの肉や血液、肌の色等がわかったことは、おおいに恐竜研究を飛躍させるに違いない。しかし、社会に与える影響が大きすぎるとしてマスコミには公表しないことが決定した。また、鳴降市一帯の住民には口外しないよう固く口留めの契約書を取り交わしている。

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