表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

エドワーズの能力

 納屋を出たところで盗賊の一人と出くわす。


「ひっ! お前は……」

 

 全てを言い終わる前に私は盗賊の頭を撃ち抜いた。


 直後に近くの民家から悲鳴が聞こえる。


 中に入ると村人が殺されており、奥の部屋では女性が襲われていた。


「おい」と私が銃を突き付けると盗賊は真っ青になった。


「素直に話せば、命だけは助けてやる。お前たちは何人で村を襲っている?」


「じゅ、十人だ。言ったぞ。だから、殺さないでくれ」


「そうだな」と言いながら、私は引き金を引いた。


「お前たちが約束を守らないように、私も悪党との約束は守らないよ。それにしても十人か、じゃあ、あと七人だな」


「あ、ありがとうございます」


 襲われていた女性が私に向かって言った。


「すまなかったな。旦那の方が救えなかった」


「いえ、これはあなたを売ろうとした私たちの罰です。それにあの子は無事でした」


 女性の視線の先には寝ている赤子がいた。


「二人で隠れていてくれ。なるべく早く終わらせる


 それだけ言い残して、私は民家を出る。


 外に出ると異変に気付いた盗賊たちが集まっていた。


「五人か。探す手間が省けて助かる」


 私に気付いた盗賊たちは襲い掛かったが、勝負にならない。

 五人を片付けた後、私は辺りを見渡すが静かになっていた。


「逃げたのか。それともどこかに潜んで奇襲の機会を狙っているのか……」


 真正面から来れるなら負けないが、この暗闇に潜まれると厄介だな。


 私は探索魔法があまり得意じゃない。

 暗闇ではどうしても敵を見つけるのが遅れてしまう。


「おい、エドワーズ、状況はどうなっている?」


 ルタンスが合流した。


 私は状況を説明する。


 するとルタンスは「分かった」と言い、何かの術式を展開した。


「村の南だ。そこに後二人が潜んでいる」


「探索魔法か。だとしても、なんで盗賊の潜んでいる場所が分かる?」


 探索魔法には盗賊以外の村人だって引っかかるはずだ。


「簡単な話だ。私はこの村へ入る前にも探索魔法を使った。その時には居なかった人間の気配を判別しただけだ」


 簡単そうに言うが、それが本当なら広域の全ての人間を正確に把握していることになる。


「それが本当なら君は本当に後方としては優秀だな」


 私はルタンスが示した場所へ向かった。


 場所は馬屋だった。


 突然、馬が二頭、村の外へと飛び出て行く。


「確かに当たっていたな。だが、取り逃がしてしまった」


 暗闇の中、馬で逃げられては射撃ができない。


「逃がすわけがないだろ」


 ルタンスが息を切らせながら、私に追いついた。


「感覚共有魔法…………発動」


 ルタンスが私の首に手を当てるといきなり視界が昼間のように明るくなった。


「私があなたの目になる。だから、決めろ」


 命令されるのはあまり好きじゃないが、クエストは完遂する。


「炎魔法『炎弾』二連」


 私が放った二発の『炎弾』が正確に盗賊たちの頭に直撃し、落馬した。


「さて、これでクエストは完遂だな。だが…………」


 村は酷い有様だろうな、という私の予想は当たってしまう。


 夜が明けると被害が明らかになる。

 十名の村人が殺された。


 そして、多数の重軽傷が出る。


「あんたのせいだ…………」


 右目を盗賊に潰された男が私に敵を向ける。


「あんたが盗賊に喧嘩を売るからこうなったんだ!」


「なんだと、エドワーズはお前たちの為に…………」


 男性に対して、ルタンスが言い返すのを、私は途中で止めさせる。


「いいんだ」


「でも……」


「その人にとっては、それが正論なんだろう」


 私は男に視線を向けると彼は目を逸らした。


 別に感謝されることなんて望んじゃいない。


 私はヴィヴィオと違って、英雄に憧れているわけじゃない。


 ギルドから頼まれたクエストをしただけだ。


「みんな、なんでこの人たちに敵意を向けているんですか!?」


 少年の叫び声が聞こえた。

 ミーツ君だ。


「この人たちがいなかったら、僕らはもっとひどい目に遭っていました。それに前回だって、エドワーズさんが来なかったら、僕たちの生活は酷い状態だったじゃないですか!」


 ミーツ君を主張すると全員が黙り込んだ。


「恨まれることを承知で言わせてもらうが、盗賊や魔物と戦う気が無いなら自警団や冒険者のいる村や町へ移動した方が良い。防衛能力のない集まりが生き残れるほどこの世界は優しく出来ていないからな」


 我ながら、本当に余計なことを言ったと思う。


 私はそれだけ言って、この村を去ることにした。

 もう誰も私たちに怒号を浴びせることはしない。


「エドワーズさん!」


 村を出たところでミーツ君が追いついた。


「ありがとうございました!」


 ミーツ君が深々と頭を下げる。


 私は軽く手を振って、その場をあとにした。


「何かを言わなくていいのか?」とルタンスが言う。


「かける言葉が分からない。…………で、お前はなんで付いてきているんだ?」


「変なことを聞くなよ。これからよろしく頼むな。私の優秀さは分かっただろ?」


 ルタンスは私の肩を軽く叩く。

 確かに回復魔法や探索魔法は役に立った。

 それ以外にも出来ることがありそうだ。


 だが…………


「私は誰とも組まない。街までは付き合うから、その先は自分で考えろ」


 やはり私は一人で良い。

 大切な人を作るから、失うんだ。


 だから、私は死ぬまで一人でいたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ