表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

ルタンスの能力

 恐らく、私は助からないだろうし、盗賊たちは簡単に殺してはくれないだろうな。


 犯されて、嬲られて……

 やれやれ、これは酷いことになったな。


「あ、あの、焦らないんですか?」


 私が落ち着いているのを見て、ミーツ君が驚いていた。


「そうだな、焦らない。私の心はとっくに死んでいるのかもしれない」


「えっ? それは一体…………」


「何を気取ったことを言っているんだ?」と戸口の方から声がする。


 その声にミーツ君はビクッとなり、剣を構えた。


「なんでお前がここにいるんだい?」


「あんたを付けてきた」

 

 ルタンスが言う。


「どうだ、助けて欲しいか。助けて欲しかったら、私と手を組め」


「それは提案じゃなくて、脅しだな」


「話は聞いていたぞ。このままだと盗賊に引き渡されるんだってな。どうだ、助けて欲しいだろ?」


 ルタンスはニヤニヤとしながら言う。


 なんかムカついてきた。

 この女を殴りたい。


「そ、それは駄目です!」


 ミーツ君が剣を構え直した。


「子供がそんな危ないモノを構えるな」


 ルタンスは軽くあしらおうとしたが、ミーツ君は剣を素早く振った。


「あ、危ない!」 


 ルタンスは必死に避ける。

 こんな小さな子供が腕力だけで剣を振れるわけがない。


「なるほど身体強化魔法か。その年でそれだけ出来る才能があるのは凄いな」


「感心している場合か!」とルタンスが怒鳴る。


 私が冷静にミーツ君の能力を分析していると、あっと今にルタンスは追い込まれてしまった。

 ルタンス本人が言っていた通り、攻撃系統の魔法は何も使えないらしい。


「……お前、何しに来たんだ?」


「うるさい!」とミーツ君に剣を突き付けられた状態でルタンスは悪態をつく。


「えっと、どうしよう……」


 ミーツ君は困った表情になった。

 ルタンスを殺す勇気は無いようだ。

 まぁ、こんな子供なら仕方ないな。


「ルタンス、もう逃げろ。お前じゃ、この子には勝てない」


「そんなことをしたら、お前が死ぬ!」


「分からないな。私に固執しなくても良いだろう?」


 ルタンスは首を横にブンブンと振った。


「私はお前に固執する理由があるんだ。だって……」


 ルタンスが何を言おうとした時、外で悲鳴が聞こえた。


 直後に納屋に男が入って来る。


 出で立ちからすぐに盗賊だと分かった。

 そして、男は斬首された村長の首を持っている。


「どうして、村長を…………」


 ミーツ君は泣きそうな声で言う。


 なるほどね。


「安心しろ、女子供は殺さない。売れるからな。俺たちが約束を守ると思うなんて馬鹿な奴らだ」


 まぁ、盗賊が約束を守るなんて思う方が甘いな。


「よう、エドワーズ、お前のせいで棟梁は縛り首になっちまったよ!」


 盗賊の怒りが私に向いた。


「そうか、少しはゴミの清掃に協力出来たらしい」


 私の言葉に盗賊の男は顔を真っ赤にしたが、すぐに笑った。


「簡単に死ねると思うなよ。女としては魅力に欠ける身体だが、可愛がってやるよ。お前が自分から、殺してくれ、って言うまで俺たちで遊んでやるよ」


 まったく野蛮な奴らだな。

 それにしても魔物ではなく、人間に殺されるのか。

 まぁ、あまり変わらないか。


「約束を守る気はなかったんですね」


「おいおい、子供が剣なんて持って…………!?」


 ミーツ君の剣撃を見て、盗賊は焦る。


「このガキが!」

 

 盗賊も応戦した。

 どうやら魔法の類は使えないらしい。


 それでも大人と子供、体格や経験がある。

 長くは持たないだろう。


「子供が死ぬのは見たくないな…………おい、ルタンス、私の縄を解け!」


「命令するな。私とお前の関係は対等だ!」


 ルタンスはすでに仲間になったつもりだった。

 言いたいことがあるが、口論をしている時間は無い。


 縄から解放された私は立ち上がるが、身体に力が入らないし、魔力を感じない。


「毒のせいか……それに……」


 腰の魔砲銃が無くなっていた。


「これを使ってくれ。あんたなら使えるはずだ」


 私にルタンスが二丁の魔砲銃を渡す。


「それから…………」


 ルタンスは回復魔法を使った。

 それは数秒だったのに、身体が軽くなり、魔力が戻る。


「一瞬で回復させたのか?」


「言っただろ。私は後方専門だ」


 だとしても、優秀過ぎるな。


 それになんで魔砲銃を持っているんだ?

 聞きたいことが増えた。


 しかし、今はミーツ君の危機を救うことが最優先か。


「う、動けば、このガキを殺すぞ!」


 ミーツ君はすでに負けて、盗賊に剣を突き付けられていた。


「勝手にしろ。私には関係ない子供だ」


 私が躊躇いない言うと盗賊は狼狽えた。


 私はその一瞬は見逃さない。


「炎魔法『炎弾』速射」


 私の早撃ちに盗賊は反応できなかった。

『炎弾』が盗賊の頭に直撃して、炎上する。


「えっ! うわっ!」


 ミーツ君は慌てて脱出する。


「おい、この子に当たったら、どうするつもりだったんだ!?」


「私が外すわけがない。それに多少の怪我はお前が治せ」


「勝手なことを……おい、どこに行くつもりだ!?」


「残りの盗賊を討伐してくる」


「この村の人間はお前を売ろうとしたんだぞ? それでも村人の為に戦うのか?」とルタンス。


「何をされたかは関係ない。私が盗賊を討伐するのはクエストを受けたからだ」


 それだけ言って、私は納屋の外に出た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ