特化型
ルタンスが後を追ってくるかと思ったが、そんなことは無かった。
私は家に帰って寝ることにした。
しかし、ベッドへ入ってもまったく寝れない。
どうやら酒が足りなかったようだ。
パーティが全滅したあの日から私は力尽きて気絶するか、酔い潰れることでしか、寝ていなかった。
「結局、あいつはなんで私に固執していたんだ?」
酔いが完全に回っていないせいで、色々と考えてしまう。
ルタンスに会ったことも悪い。
そのせいで昔のことを思い出す。
パーティが壊滅した時、ヴィヴィオやロベルに言われた「逃げろ!」という指示を聞かなければ良かった。
そうすれば、みんなと一緒に死ねたのに…………
「死ぬべき時に死ねなかった私にこの先、一体何があるっていうんだ…………」
私はいつの間にか泣いていた。
「駄目だ……」
寝れなかった私はどこかで酒を買う為に家を出る。
あまり人がいない通りを歩いている時だった。
「あいつはこんなところで何をしているんだ…………」
ルタンスがガラの悪い男たちに囲まれている。
「やめろ! 私に触るな!」
ルタンスは叫ぶが、男たちは馬鹿にしたように笑っていた。
「まったく……」
無視することも出来たが、明日の朝になって事件になっていたら、気分が悪い。
「行くところが無いんだろ? 俺たちのところに泊めてやるよ。もちろん、タダじゃないけどな」
男の一人が乱暴にルタンスの肩を掴んだ。
彼女は抵抗するが、力で抑え込まれてしまう。
「まったく、最近は街の中にも魔物が出るんだな」
私の言葉に男たちは振り返った。
三人か。
「立ち去れ。そうすれば、追うことはしない」
私の警告に対して、男たちは笑った。
「正義の味方気取りかよ!」
男の一人が私に襲う掛かろうとする。
「仕方ないか……炎魔法『微炎弾』」
私は銃を抜き、一発の魔法を放った。
「う、うわぁぁ!」
男の服が燃える。
燃える服を慌てて脱いだ。
炎の光で辺りが明るくなる。
男たちの顔つきが変わった。
暗くてよく見えていなかった私の顔を確認できたのだろう。
「こ、こいつは凶弾のエドワーズ!?」
男の一人が慌てた口調で言うと他の二人も恐怖していた。
「もう一度だけ言う。その女を置いて立ち去れ」
二度目の警告を男たちは素直に聞いて、立ち去っていく。
「大丈夫か?」
見ると襲われていたルタンスの服は上着が破かれていた。
私は上着を脱いで、ルタンスの肩にかけてやる。
「…………感謝する」
ルタンスはポツリと呟いた。
「あんな男共程度をやられて、私と組もうなんて言っていたのか?」
「私は戦えない。攻撃系統の魔法を使えないんだ」
「攻撃手段が無いってことか? 話にならないな」
私が言うとルタンスは私と視線を合わせた。
「私は後方支援特化なんだ」
「回復や探索系統が得意ってことか? 特化しているなら、冒険者じゃなくて軍に入ればいい。冒険者は自分の身を自分で守らないといけない。攻撃手段を持たない仲間なんて迷惑だ。そんな奴は味方を危険に晒す。特化型の人間は冒険者に向かない」
「特化型はあなたもだろ?」
「…………」
ルタンスは予想や思い付きで言っているわけではなさそうだ。
なるほど。
私のことを調べてきたのは本当らしいな。
「あなたはその銃を使った魔法しか使えない。近距離戦は一切できない。合っているだろ?」
「その通りだよ。だけど、私はこの魔砲銃だけでどんな魔物とだって戦える。君みたいに仲間がいないと戦えない奴と一緒にしないでほしいな」
「…………」
「反論が無いならとっとサンフォード王国へ帰るんだな。男勝りなお嬢ちゃん」
早く私と組みたいなんて願いは諦めてもらいたかった。
「私は諦めない!」とルタンスは酒場の後と同じことを言う。
「強情なお嬢ちゃんだ。何度、頼まれたって私は断るよ」
それだけ言い残し、私はその場から立ち去った。