表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/65

62 婚約の宣誓(第2部プロローグ)

※次話は1月10日の朝6時更新です

【第2部 プロローグ】




 アイゼリオン国の大聖堂で執り行われた式典は、複雑に入り組む思惑の渦中にあった。


「神と、ここに集いし証人たちの御前において」


 ステンドグラスを透かした七色の光が、高い天井から降り注ぐ。

 白い大理石の床は淡い輝きを帯びて、ひとつの魔法であるかのようだ。


「エドガルド殿下、ならびにメアリさまの『婚約』が成立したことを宣言し、祝福する」

(……私と、エドガルドさまの……)


『かつて』聖女と呼ばれたメアリは、いまはひとりの人間として、どこか不思議な気持ちに包まれていた。


(大神殿を追放されてから数ヶ月ほどで、たくさんの出来事があったわね。……エドガルドさまと契約をして、魅了魔法にかけてしまったと勘違いをして。お望み通りの悪女業を頑張ろうとしたのに、ちっとも上手くいかなかった)


 いまのメアリが纏っているのは、友人の領地で仕立てられた白のドレスだ。

 髪は、妹から贈られた花の飾りで彩った。支度を手伝ってくれたのは、大精霊と呼ばれる使い魔たちである。


(ニーナと喧嘩をして、仲直りをして。レデルニア神さまを鎮めることが出来て、何よりも)


 胸がいっぱいになったメアリは、そっと傍らの青年を見上げる。


(エドガルドさまに恋をして、本当の想いを通わせることが出来た……)

「……メアリ」


 深い慈しみを帯びた紫色の瞳が、静かにメアリへと向けられている。

 黒の軍服に身を包み、正装の勲章とマントをつけたエドガルドを見詰めるだけで、メアリの心臓は早鐘を打つのだ。


「こちらへ」

「はい。……エドガルドさま」


 メアリが微笑んで頷けば、エドガルドがやさしく抱き寄せてくれる。

 左手をメアリの腰に添え、そうしてメアリの手を取って、その甲にひとつの口付けを落とすのだ。


(…………っ)


 愛おしい壊れ物を、大切に扱うかのように。


「この名において誓う。メアリを我が婚約者として迎え、やがて……」


 低くて穏やかなその声が、はっきりと紡ぐ。


「――遠からぬ未来に、生涯の伴侶とすることを」

「エドガルドさま……」


 左胸がきゅうっと疼き、メアリは目を細めた。


(現在この国では、エドガルドさまと私の結婚を反対する貴族の声が、どんどん強くなっている。この状況で敢えての『婚約式』を挙げるなんて、どんな罵りを受けてもおかしくないけれど……)


 大司教が小さく咳払いをし、こう続ける。


「ここからは、婚儀までの道のりとなります。試練は多くなりましょうが、互いを護り、尊重し合って……」

(エドガルドさま。私)


 誇らしく胸を張ったメアリは、きらきらとした気持ちでエドガルドを見上げる。



(――これでまた一歩、エドガルドさまを誑かす、すごい悪女に近付けたでしょうか!?)

「………………」



 なんだか今、エドガルドが頭の痛そうな、物言いたげな顔をした。


(あら???)

「何を考えているか、おおよそ分かるが。……その前に、あまり可愛い表情をするんじゃない……!」

「ごほん!」


 小声のお叱りに首を傾げながらも、メアリはひとまず、この儀式に集中する。

 数ヶ月後には正式な婚儀だ。それまでに、『雇われ悪女』としての使命をたくさん果たしていこうと、強い決意を新たにするのだった。




***




「――お聞きになられましたか?」

「ええ。エドガルド殿下のことでしょう」


 王城では、定例の会議を終えた貴族たちが、大袈裟に呆れた様子で話していた。


「ご自身の父君が病に伏せていらっしゃる中で、堂々と婚約式を行うなど……しかもお相手は、『まさしく聖女を体現した存在』と名高いメアリさまだ!」

「あのお方は、聖女を独占しようとなさっているのだ。生まれながらに呪われた身であるご自身の咎が、それで浄化されるとでもお思いなのだろうか」


 嫌悪感を露わにする者も居れば、怒りを滲ませる者も居る。

 そんな中、上座でただひとり口を閉ざした青年に、ひとりの貴族が進言した。


「やはり、正しきお世継ぎはただおひとり。――我々は、あなたさまの忠実なる臣下です」


 柔らかな銀色の髪に、赤の瞳。

 妖艶さと、それと同じくらいの清廉さを纏ったその青年に、貴族たちが礼の姿勢を取る。


「ヴィンセント殿下」

「――――……」


 第一王子ヴィンセントは、弟のエドガルドを悪し様に言う彼らに向けて、柔らかなまなざしを返したのだった。




-------------------------------

第2部スタート

挿絵(By みてみん)


雇われ悪女コミカライズ、26年1月5日に連載スタート!!

えとう綺羅先生による、この美しいエドガルドとメアリをご覧ください! どうぞお楽しみに!!


B's-LOG COMICさま▶︎ https://bslogcomic.com



そして雇われ悪女の小説1巻、発売中です!


挿絵(By みてみん)


書き下ろし小説は第1部エピローグの間の、イチャイチャを更に補完するエピソード。

両想いになったエドガルドとメアリが、いっぱいキスをして『悪女』を追求するお話です!


***


「忘れるな。……お前がここにいるのは、俺が願ったからだ」

「エドガルド、さま」

 今度のキスは、メアリのまなじりに落とされる。

「離れることは許さない」


***


X(Twitter)で次回更新日や、作品の短編小説、小ネタをツイートしています。

https://twitter.com/ameame_honey


よろしければ、ブックマークへの追加、ページ下部の広告の下にある★クリックなどで応援いただけましたら、とても励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ