75話
私は精霊王の力を使って、愛する夫の元へと転移した。
大きな森の入口だった。
目の前にはたくさんの軍人さんと、そして……アルセイフ様がいた。
「な、なんと!」「転移魔法だ!」
「すさまじい……!」
この世界では、転移魔法は失われた古代魔法とされている。
だが私は精霊王の力を使えるので、古代魔法すら行使できるのだ。
「れ、レイホワイト卿……この女性は?」
黒髪の軍人さんが目を丸くしながら、聞いてくる。
私はスカートの裾を摘まんで、頭を下げる。
「どうも。冷酷なる氷帝の、妻でございます」
私は堂々と、そう言えた。
アルセイフ様の妻だと、この先も私は胸を張って言える。
アルセイフ様と目が合った。
それだけで、幸福だった。私も彼も。
「こちらはフェリア。俺の妻だ」
「なるほど……ガンマです。よろしくお願いします」
私はガンマさんと握手する。
まだお若いのに、軍の偉い人みたいですね(腕章でわかります)。
「では、これより妖精郷の浄化と、そして皆様に防御の加護を」
私は両手を広げる。
右手で、軍人さん達に防御の力を、左手で森を覆い尽くす瘴気の浄化を。
それぞれ行う。
もう……私にとって、この力を使うことは、呼吸するに等しい。
「おお! 森を覆っていた瘴気が消えていく!」
「凄まじい……!」
力を使い終わっても、私は倒れることはない。
アルセイフ様が近づいてきて、笑いながら抱きしめる。
「最高だ」
「ありがとうございます」
私たちは見つめ合う。
自然に、唇を重ねる。
「では、いってくる」
「はい、いってらっしゃい」
キスも、ハグも、あいさつも。
私たち夫婦にとっては、もう当たり前のことになった。
夫を見送りながら、私はボンヤリ思う。
ああやっと、私はこの人の妻になれたんだなと。