73話 アルセイフ視点
……彼はゆっくりと目を覚ます。
直ぐ隣に、とても美しい女性が眠っていた。
「なんだ……女神か……」
女神、比喩では無くそう思う。
フェリア。愛する女性。
無駄な肉が一切無い体に、神が作った人形のごとく整った顔。
流れるような黒髪は銀河のごとく美しい。
「ああ……フェリ……素敵だ……」
アルセイフは昨晩、初めてフェリアと肌を重ねた。
婚約をしてから今日まで、肉体関係を結んでこなかったのだ。
フェリアがそういうのに興味ないのではないかと思っていたのだが、そうではなかったらしい。
ふたりは激しく求め合っていた。
「…………」
フェリアのことはもちろん好きだ。
だが向こうがこちらをどう思ってるのか、いまいち確信を持てずに居た。
フェリアは市井の女達と違い、男にまったく媚びようとしない。
好きという言葉や、くっついてきたり、キスしたり……。
そういうわかりやすい愛の形を表現してこないからこそ、フェリアが本当に自分のこと好きなのかどうか、わからなかったのだ。
けれどアルセイフは、昨晩フェリアを抱いた。
カノジョは喜んでその体を自分に開いていくれた。
アルセイフは、もう迷わない。
フェリアが自分を愛してくれていることは、確定的に明らかだ。
「俺は、おまえを守るよ。フェリ……ずっと……」
「……ふふ、ありがとうアル」
フェリアがぼんやりしたまなざしを向けてくる。
寝起きのフェリアが最高にかわいらしく、思わずその唇に、唇を重ねる。
カノジョはまったく嫌がること無く自分を受け入れてくれた。
それがうれしくて、何度も何度もキスをしてしまう。
「おはようフェリ」
「おはよう、アル」
この先、何があっても自分たちは大丈夫。
そんな確信を、ふたりは抱くことができたのだった。