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72話


 ……アルセイフ様が危険な土地へ行く。

 そこで何かあったらと思うと、恐くて、だから引き留めた……。

 すとん、と私のなかで腑に落ちました。ああ、そのとおりだなって。


「まさか……フェリがそんな、普通の女子みたいなことを思うわけが……」


 普通の女子みたいな?

 なんだそれは?


 馬鹿にしてるのだろうか?

 ムカつく……。


「フェリはもっと理性的で、考えて行動する女だ。そうだろう?」

「うるさい……」

「え?」

「うるさいですよ!」


 知らず、私は声を荒らげていた。

 困惑するアルセイフ様に言う。


「あなたのせいで、私は……私は自分が自分で無くなってしまったんです!」


 アルセイフ様を見ているとドキドキする。

 心がふわふわして、顔が赤くなってしまう。


 ああそうか。

 簡単なことだったんだ。


 ニーナ様が言っていたとおりだ。

 私は彼のことが……。


「あなたのことが好きだから!」


 アルセイフ様が私を衝動的に抱きしめる。

 乱暴に抱きしめられたことがまったく嫌な気分にならない。


 ぎゅうっと強く抱きしめてくれることがうれしい。

 私への思いの強さに比例してるように思えてうれしいのだ。


「フェリ……俺はうれしいよ。おまえが、俺のことを好きになってくれて」


 彼が顔を近づけてくる。

 私は拒まなかった。そのまま私たちは唇を重ねる。


 ……キスは、夫婦の契約のためにするのだと思っていた。

 でも今こうして、好きな男性とするキスは、とろけるように甘く切ない…。


 私は気づいた。

 恋人達は、この感覚を味わうためにキスをするのだと。


 好きな人とするキスは、なんて心地よいのだろう。


『あー……ぼくちょっと外散歩してくるねー』


 ……コッコロちゃんがいなくなったことすら、私たちは気づかずに、唇を重ね続けるのだった。

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