61話
治療を終えた後。
「用が済んだのでこれで失礼するよ」
「まあ、いけない。お客様に、お茶の一つもだしていなかったわ」
教授は苦笑した後に、首を横に振るって言う。
「あまり長居していると、間男と勘違いされるかもしれないからね。君の愛しい人に」
「も、もう……」
からかわれたのだとわかった。
やめてほしい、なんだか頬が熱いわ……。
しかし間男か。
まさか、アルセイフ様はまだ帰ってくる時間ではないし、第一彼も、そこまでバカじゃない……と信じたい。
「失礼するよ」
「あ、見送ります」
サバリス教授が立ち上がる。
私もと急いで腰を上げたそのときだ。
「きゃ!」
教授が、私のスカートを踏んづけていたのだ。
よろけてしまう私を、サバリス教授が受け止めようとして……。
どさ……。
「……すみません」
「い、いや……こちらこそすまない」
私はソファの上に、仰向けに寝てる。
そして教授が私の上に覆い被さっているような状態。
端から見れば、教授に襲われているように見えなくもない……。
「できれば早くどいてもらえませんでしょうか」
「そ、そうだな……すまない……」
なんだか頬が赤いな、教授。
いったいどうしたんだろうか……。
まあ、本当に今この場にコッコロちゃん2号こと、アルセイフ様がいなくてよかった。
あの駄犬2号、こんなとこ見たら、絶対に怒ってかみついてくるのだから……。
「フェリ!!!!」
……ああ、なんということだ。
最悪のタイミングで……。
私の夫となる存在……アルセイフ様が帰ってきたのだ。
顔を、怒りで真っ赤にして。