60話
サバリス教授の足を、聖なる力で治療した。
「本当に素晴らしい、レイホワイト君」
「ありがとうございます、教授」
ずっとお世話になってきた教授から褒められると、感慨深い物がある。
いつも教授は褒めてくれたけど、やっぱりどこか引け目があったのだ。
私は無能だったから。
天から授かるギフトが絶対の世界において、私は落ちこぼれだったから。
彼の言葉も、ただのお世辞だと思っていた。
でも……今はちゃんと、真正面から、教授の賞賛を受け止めることができた。
なんでだろう?
多分……この力に誇りを持っているから……とか? わからない。
でも私と、アルセイフ様とで、一緒になって鍛え上げたこの力を、人から褒められるのは、とても気分が良かった。
「君も、そんな風に笑うのだね」
「えっ?」
笑う……?
私は、笑っていたのだろうか。
「無意識だったのかい?」
「え、ええ……」
感情をコントロールできなかったことに、むしろ驚く。
そんな笑うポイントなど、あったろうか。
サバリス教授は私を見て、さみしそうに笑った後に言う。
「君の将来の旦那のおかげだろうね」
「アルセイフ様の……?」
「ああ。君は変わった。彼と出会って」
「そう……ですか……?」
自分では、変化なんて気づけない。
だから変わったと指摘されても、戸惑うしかなかった。
「ああ、これは確信を持って言える。君は、あの冷酷なる氷帝と出会い……ふれあって、変わったのだよ。良い方向にね」
……サバリス教授は実に真剣な表情をしていた。
嘘……でも、お世辞でもない……と思う。
でもアルセイフ様のおかげで、自分が変れたと、人から言われたことがうれしかった。
……ああ、なんか口元がもにょる。
笑ってるというのは、このことだったのか。
「君は、アルセイフ君が好きなのだね」
「まあ……そうですね」
……なんだろう。
彼を好きっていうと、顔がとても熱くなった。前はこんなことなかったのに……いやだわ……もう……。