59話
私はサバリス教授の治療のため、レイホワイト邸へとやってきた。
彼にソファに座ってもらい、私は手を掲げる。
……精霊王の力。
この世界にすむ、我々人間達に力を与える存在。
そんなすごい力が、なぜか私の中にあるらしいのだ。
……さて。
その力のコントロールを身につけるべく、最近ずっと練習していた。
そして気づいたことがある。
この力は、自分のために使おうとしても発動しないと。
誰かのために、誰かを思って、初めて使えるのだ。
今回のケースでいえば、サバリス様の足を治したい、と強く念じる。
でも不思議なことに、これだけじゃ使えないのだ。
そしてここからが、特訓の成果。
……頭の中に、アルセイフ様を思い浮かべる。
すると手のひらが熱を帯びていく。
まばゆい光が、サバリス教授の体を包み込むと……。
「おお! 素晴らしい、痛みが取れたよ」
彼が立ち上がってその場で足踏みをする。
やっぱり、結構ひどく痛めていたのだろう。
表には出さなかったけど、若干歩き方がおかしかった。
「痛いのでしたら、そういえば迎えの者を呼んだのに」
「君にいらぬ心配をかけたくはなかったからね」
気遣いのできる大人ですこと。
アルセイフ様ももう少し見習ってほしいくらいだ。
あの人はまだまだ、子犬ちゃんだからな。
ふふ……そこがいいのだけども。