58話
コッコロちゃん散歩中に、リードを手放してしまった。
危ないところを、魔法大学で世話になってるサバリス教授に助けてもらった。
足を怪我してる教授を治療するべく、私はレイホワイト家へ、彼を招いたのだった。
『ふぇり~。大丈夫なの~?』
私の隣をコッコロちゃんが歩いてる。
いつもニコニコしてる(ように見える)彼が、このときばかりは不安をあらわにしていた。
「どうかしました?」
『だって雄を家に連れて行くなんて。男は狼なのよ、気をつけなさいって! 聞いたことない?』
「ないですね」
『狼なんだよ!』
「そうですね、コッコロちゃんも襲ってきました物ね、昔」
耐えきれなくなったとかで、襲ってきたことがあったな。
『わふん……あのときは……』
「わかってます。大丈夫、サバリス教授は大人ですから。ねえ、教授?」
「ん? ああ……」
私はサバリス教授に肩を貸してる状態だ。
しかし……歯切れが悪い。
「どうしたのですか?」
「いやその……なんでもない。少し、熱いね」
「? そうでしょうか」
心地よい陽気だと思うのだけども。
コッコロちゃんがウーウーとうなり声を上げる。
『やっぱり! 発情期の雄犬じゃないか! アルのかわりに、ぼくが家を守るんだっ。わんわんわーん! でていけー!』
コッコロちゃんがやかましく騒ぎ立てている。
私はポシェットから、犬のおやつを取り出す。
『そ、それは最近開発された! 犬のおもちゃ! かむとめっちゃ美味しいやつー!』
「そーらコッコロちゃん、とってこーい」
『わふぅううううううううううううううううん!』
レイホワイト家の庭の奧へと、消えていった。
ほんと、犬なんだから……。神獣じゃなかったのかしら……?
「さ、屋敷にまいりましょうか」
「そうだね、レイホワイト君」
男は狼か。
しかしアルセイフ様も、たまに犬みたいに鼻くっつけてきたり、甘えてきたりする。
狼って言うより、犬。
男の人って……犬みたいと思うのよね。私。