52話
私はしばらく慰問活動を続けていた。
ある程度、任意で聖なる力を発動させれるようになる。
だが問題は……。
「コントロール、よねえ……」
私は私室でため息をつく。
目の前にはコッコロちゃんが、伏せの状態ですわり、私を見ていた。
彼が見てる前で、私は聖なる力を発動。
かっ……! と強烈な光が周囲を包み込む。
「また失敗だわ……」
『発動が任意にできるようになっただけで十分進歩だよ。あとは、出力を絞る練習だね』
出力。そう……私はこの身に余るほどの力を、押さえ切れていないのだ。
「こつはないかしら?」
『魔力量を調節するんだ』
「どうやって?」
『種族ごとにやり方は異なるからね。ぼくからアドバイスはできないかな。あいつに頼めば?』
アルセイフ様か。確かに彼の使う氷剣は、氷の異能。
あの力の源は魔力だ。それをコントロールしている彼は、なるほど魔力の調整する技術を身につけているだろう。
「ありがとう、コッコロちゃん。彼に頼んでみるわ」
『どういたしまして。む……ちょうど帰ってきたみたいだね』
フェンリル耳がぴくっ、と動く。
私より耳のいい彼は、アルセイフ様の帰宅を音で知ったようだ。
私たちは彼を出迎えるために移動する。
ちょうど、騎士としての仕事を終えた彼がドアをくぐったところだった。
「お帰りなさいませ」
「フェリ、ただいま。出迎えありがとう」
一時と比べて、彼は本当に優しくなった。前はつんけんしていたけど。
「あのですね、アルセイフ様。お願いがあるのですが」
「いいぞ!」
「まだ何も言ってないでしょう……」
「フェリのたのみならば、何でもしよう。火の中に飛び込めと言えば……」
「ああ、はいはい。しなくていいので」
なんだか前にもこのようなことがあった気がする……。
『ほんと嫁馬鹿なんだから』
コッコロちゃんにまであきれられる始末。
ふんっ、と彼は鼻を鳴らしてそれをスルーした。
「それで、頼みとは?」
「魔力のコントロールの仕方を教えてほしいんです」
「こ、個人レッスンということかっ!」
「ええ、まあ……」
彼はぐぐっ、と拳を握りしめて、天を仰いだ。
ど、どうしたのだろうか……。
『雄叫びあげるくらい、うれしかったんだね』
「あげてませんよ?」
『心の中ででしょ?』
そんなにうれしいものでしょうかねえ……。
「フェリ! さっそく練習しよう、今すぐ、即刻!」
「いや、あなたお疲れでしょう? 時間が余ってる休日とかでいいですし」
「大丈夫だ、俺のコンディションは今、最高になった!」
かくして、私は彼に魔力コントロールを教わることになったのだった。