51話 アルセイフ視点
フェリアが慰問活動を始め、孤児院の食事でみんなを元気にした、その日の夜。
フェリアの夫アルセイフは、守護獣である神獣コッコロのもとを尋ねていた。
レイホワイト家の庭にある、ほこらにて。
『ふーん、フェリの作ったご飯で元気もりもりと』
「ああ。あれはフェリの力なのだろう?」
『そうだね。フェリの聖なる魔力は、他者の傷を癒やし、さらに元気にさせる力があるから。また、活力を与え、その人が本来持つ才能を引き出す力もある』
「なんだそれは、すごすぎるじゃないか」
『そうだよ、フェリはすごい存在なんだ。おそらくは、精霊王の力のいったんを持ってるだろうから』
「精霊王……か」
精霊たちの主。人間にスキルや力を与える、特別な存在。
「なぜフェリが聖なる魔力と、そして精霊王の力を持っているのだ?」
『さぁ、そこまでは。現精霊王はまだ存命だし』
「なに? 生きてるのか? てっきり、生まれ変わった姿がフェリなのかと」
『あのヤンデレババアがそう簡単に死ぬわけないじゃん』
口調から、どうやらコッコロは精霊王と既知の間がららしい。もっともコッコロは毛嫌いしている様子だが。
『可能性として考えられるのは……』
「考えられるのは?」
『……やめとこ。まだこれ、確定してないし』
「気になる言い方するじゃないか」
『まあ、調査は続けてみるよ、独自に』
「ああ、頼んだ」
以前は犬猿の仲だったふたりだが、フェリを通して二人は和解したのである。
こうして、今日あったことを話しあい、相談するくらいには、関係が回復していた。
「力のコントロールをフェリが身につけたいようだが、何かこつはないか?」
『魔力操作は一朝一夕じゃ習得できないからね。数を重ねる。これしかないよ』
「そうか……なにかフェリの役に立てればと思ったのだが」
『もう十分役に立ってるよ。現に、悪い虫がフェリに寄りつかない。冷酷なる氷帝様がそばについてるからね』
コッコロ、そしてアルセイフも懸念していたことだ。
少し前、フェリはヒドラ相手に聖なる力を使った。
そのせいで、フェリには特別な力があると、諸外国にばれてしまっている可能性がある。
他国の間者が、送り込まれてる可能性。
しかしコッコロが言うとおり、アルセイフという番犬がそばにいることで、表だった他国からの干渉はないように思えた。
「もっとも、裏でこそこそと隠れてるやからもいるだろうがな」
『そりゃね、仕方ないよ。フェリは有名人なんだもん。彼女がいれば世界のパワーバランスが崩れる。それほどまでに、すごいんだから』
「そうか……なら、より一層気を引き締めて、護衛に当たらねばなっ」
どこか弾んだ声音と、浮ついた表情に、コッコロはあきれたようにため息をつく。
『フェリとそばにいたいだけでしょ』
「まあそうともいうな」
ふたりは顔を見合わせて、笑うのだった。
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