50話
私は聖なる力のコントロールを身につけるため、孤児院を回るという、慰問活動をしている。
王都にある孤児院へ、私は夫のアルセイフ様とともに訪れていた。
孤児院のシスターさんとともに、私は料理を完成させる。
食堂へ行くとたくさんの子供たちが、おなかをすかせて待っていた。
……王都には、こんなに親がいなくて困っている子供たちがいるんだ、と思うと心苦しくなる。
せめて私の作ったご飯で、少しでも彼らの心を癒やすことができればいいのだが……。
「はーい、今日のごはんは、フェリア様が作ってくれたシチューですよー」
「「「わーーーー! おいしそーーー!」」」
私と彼は配膳のお手伝いをする。
でも意外だった。アルセイフ様はこういうこと、しないものだと思っていたのだが。子供が苦手とばかり。
結構率先して、子供たちにシチューを配っている。
ほどなくして、私のシチューがみんなに渡る。
私は席に隅っこに、アルセイフ様と座っている。
「それじゃ作ってくださったフェリア様と、主たる神に感謝して……いただきます」
「「「いたーきまーす!!!」」」
子供たちがまず一口、食べる。どうだろう。気に入ってくれるろうか。
彼が私を見て、きゅっ、と手を握ってくる。彼を見上げると、ふっ、と笑ってくれる。多分私の不安を察してくれたんだろう。
……うれしいな。少しずつ、こちらの心の機微を組んでくれるようになっている。それがわかって、うれしいんだ。
「「「うまぁあああああい!」」」
子供たちが一斉に、花が咲いたような笑顔を浮かべる。
「うんめー!」「こんなうめーのはじめてだー!」「うましゅぎるぅうう!」
よかった、喜んでくれてるようだ。
彼も私を見下ろして笑い、そして少し胸を張る。
「おにーちゃんのおねーちゃん、めっちゃ料理上手ねー!」
アルセイフ様の前に座っていた子供が、彼にそういう。
彼はうれしそうに笑って返す。
「当然だ。俺のフェリは完璧だからな」
「子供相手に何のろけてるんですか、まったく……」
「いやだったか?」
「ずるいですよそのいいかた。もう……」
まあ何にしても、子供たちに気に入ってもらえてよかった……。
と、そのときだ。
「うぉお! なんか……すげー!」
子供の一人が声を上げる。なんだと思っていると、子供の一人の体が輝いていた。
痩せ細っていたその子の肌がみるみるつややかに、みずみずしくなる。
「なんか元気出たー!」「すげー!」
「元気もりもりでーす!」
ほかにも……。
「大変ですシスター! 寝込んでた子供たちや、病気の子供たちが、みんな一斉に元気になりました!!!」
大慌てで食堂に入ってきたシスターがそう報告する。
子供たちの体が次々と光り出し、元気を取り戻していく。
「何が起きてるんでしょうか?」
「フェリのおかげだろう」
誰より早く、きっぱりと、アルセイフ様が断定する。
「君の持つ聖なる力がシチューにこもっていたのだろう。それを体に摂取したことで、活力を手に入れたわけだ」
「はあ……なるほど……」
「さすがフェリだな。うん、やはり君は素晴らしい」
意識して使った能力じゃないから、あんまり喜べないな。
……コントロールのすべを身につけるはずだったのだが、まだまだ時間がかかりそうだ。
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