49話
私は慰問活動のため、アルセイフ様とともに孤児院を訪れている。
聖女としての力をつかい、私は孤児院の怪我してる子や、病気してる子らを治した。
その後、私は台所に立っている。
「もうしわけないです、お貴族さまに料理を作って貰うなんて……」
孤児院で働くシスターさんが、ぺこぺこと頭を下げる。
「気にしないでください。これも慰問活動の一つですから」
シスターさんは何度も頭を下げながら「ありがたいです」と胸の内をかたる。
「しょうじき大変で……」
「人手不足ですか?」
「それもありますし、何より子供の数が年々増えてきておりまして」
「今は太平の世ですからね」
一昔前、魔王と呼ばれる邪悪な存在が闊歩していた頃、世界は死と隣り合わせだった。
人はどんどんその数を減らしていった。
だが魔王が倒された現在、モンスターはいるけれど、いちじきと比べればとても平和になった。
その結果、子供の数が上昇。それ自体は喜ばしいことだけど、貧困層が無くなったわけではないので、結果子供を産んでも育てられなくなり捨てる……という事態が散見するようになったらしい。
平和なのも大変なのだわ。
「フェリア様は貴族なのに、お料理までできるんですね」
シスターさんが私の作るシチューを見て、感心したようにつぶやく。
「私は家では厄介者扱いでしたから、ご飯は自分で作るしかなかったんです。あと一人暮らしで自炊してましたので」
「なるほど……とても美味しそうです」
じゅる、とシスターさんがお鍋をみつめながら言う。
「「「じゅる……」」」
振り返ると子供たちが顔をのぞかせている。
「うまいやつだ」「ちょーうまいやつだ」「においだけでおなかぺこぺこだよぉ」
どうやら私の作ったシチューを今か今かと待ちわびているらしい。
今にも突撃してきそうな勢いで、子供たちが入り口でうずうずしている。
もうちょっと完成までにはかかる。でも子供たちは入ってきて貰いたくない。そこで……。
「あなたー」
「……なんだっ?」
アルセイフ様が凄いスピードで、台所へと現れた。目がキラキラしている。
多分あなた呼びがうれしかったのだろう。この人見た目クールなのに、こういうところあるんですよね。
「子供たちが邪魔しないように、どこかへ連れてってください」
「承知した。いくぞ貴様等」
アルセイフ様にうながされて子供たちがしぶしぶ部屋を出て行く。
彼がぎろんとこっちを見て、さっていった。
「こ、怖かった……」
「そうです? とてもご機嫌でしたよ彼」
「え、ええ!? ご、ご機嫌!?」
「はい。とっても」
しかしシスターさんは納得がいってない様子。そうか、外から見ただけでは、彼の機嫌なんて普通は分からないだろう。
私も最初はよくわからなかった。でもコッコロちゃんと同じと気付いてからわかるようになっていったな。
「さ、シチュー完成です。みんなお腹空かせてますよ」
「そ、そうね……」
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