48話
聖なる力をコントロールするすべを身につけるため、私はこの力を積極的に使っていくことにした。
この力は愛の力がないと発動しないと判明。そこで私は孤児院に慰問という形をとることで訪れ、そこで力を使うことにした。
この力を無償で使うための、大義名分ということだ。
私がやってきたのは、王都のはずれにある、孤児院へとやってきた。
本当は郊外の孤児院に来たかったのだが……。
「王都の外は危険だからな。まずはうちからだ」
私の隣を歩くのは、アルセイフ様。
王国騎士の彼は、私の護衛として今回の任務に就いている。
「別に危険などないわ」
「いいや、危険だ。美しいおまえを奪おうとする悪い輩がわんさとやってくるに違いない」
「まったく、馬鹿なんですからもう」
「愛は盲目というだけだ」
旦那様はちょっぴり愛が重くて困りものだ。やれやれ。
孤児院に足を運ぶと、シスターがにこりと笑って出迎える。
「レイホワイト様ですね、お待ちしておりました」
「はい、私はフェリア=フォン=レイホワイトです。本日はよろしくお願いします」
「はい、お願いします……って、お隣のかたは、どうしたんです?」
見やると、アルセイフ様は目元を手で押さえていた。
「何やってるんですか?」
「……いや、レイホワイトとおまえが名乗ってくれたのがうれしくて、感動してな」
「感受性豊かすぎでしょ……すみません、この人ちょっと馬鹿なんです」
けなす意味での馬鹿ではなく、嫁馬鹿? ってやつだ。
「は、はあ……」
「あまり気にしないでください。それより、中に」
私はシスターさんに連れて貰い中に入る。
王都の孤児院ということで、中は割と綺麗だった。
ここは天道教会という、大きな宗教組織が経営する孤児院であるからかもしれない。
「ただそれでも、資金は潤沢とは言えないのが現状です。人口の増加に伴って、子供を捨てる人は増えてますので」
「痛ましい事態ですね」
やがて私たちは、医務室へとやってきた。
そこには病気で寝てる子や、怪我して治療しに来た子などが居る。
薬品棚を見る限りだと、物資が足りてないのが見て取れた。
「えーんえーん! いたいよぉ~!」
子供の一人が、椅子に座りながら泣いている。どうやら転んで足をすりむいてしまっているようだ。
「まあ、大変。お姉さんに見せてくれませんか?」
「ふぇ……? だぁれ?」
「フェリアです。フェリって読んでください」
子供は警戒してる様子。それはそうだ。いきなり部外者が来たら戸惑うのもしょうがないだろう……って思っていたのだが。
どうにもおびえてる様子。
「……あなた」
「なんだ?」
子供は私ではなく、彼を怖がって居るみたい。
「どうして子供をにらみつけるのですか?」
「フェリが俺以外の男に優しくするのが、気にくわなくてな」
堂々とそんな馬鹿なことを言う……。
「相手は子供です。あなた顔怖いんですから、ほら、後ろ向いてて」
しぶしぶと彼が私たちから離れる。子供がホッと安堵の息をついていた。
「ごめんなさいね。それじゃ……」
私は両手を前に出す。
……アルセイフ様を治した時を思い出しながら。
そして、重要なのは愛情。
この子は足をすりむいて痛がっている。かわいそうだ。せめて……痛くないよう、いやしてあげたい……。
すると手のひらに小さな光が浮かび上がる。
それは男の子の足を照らすと……すぐに、怪我が治った。
「できた……」
サバリス教授のところでは、一度も成功できなかった治癒術が、発動した。
やっぱり、誰かを治してあげたい、という気持ちが、愛情が必要だったのだ。
「おねえちゃんすっごーい!」
ぱぁ……と男の子が笑顔になる。
「ありがとー!」
「いえいえ、どういたしまして」
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