表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/76

47話


 サバリス教授のもとを出て、私は家に帰ってきた。

 夕飯時、私はアルセイフ様と一緒にご飯を食べている。


 昔は長い机を使っていたのだけど、最近は長さの短いものを使っていた。

 私と近くでご飯を食べたい、という彼の要望を汲んだのである。


 昔はアルセイフ様の変化に戸惑っていた私も、今は慣れた。それに今は彼と同じで、少しでも近くで彼を感じたいと思っている。


「慰問活動、だと?」

「ええ、駄目ですか?」


 貴族の子女がよくやる活動のことだ。孤児院などを訪ね、そこのお手伝いをする。そうすることで貴族としての名前を売る、というもの。


「レイホワイトの家の評判もあがりますし、なにより、この力の訓練になります」

「力の、訓練か」

「ええ。自分の意思で力をコントロールできるようにならないと、いざというときのために」


 ヒドラのとき以来、私はあの聖なる力を使えないでいる。

 サバリス教授は、愛の力がトリガーになっている、とか、抽象的なことを言っていたが、じゃあ具体的にどうすればいいのかは未知。


 結局、数をこなして、使えるよう、こつをつかむかしかない。

 そのために慰問活動は最適だ。


 聖なる癒やしの力を、使ういい訓練になる。


「そんなことをすれば、目立ってしまうのではないか?」

「まあ。ただもう隠しきれないでしょう? ヒドラを倒してしまったことは、広く知られてしまったのですし」

「それは……まあそうなのだが」


 彼はうつむいて、暗い表情を浮かべる。どうにも難色を示しているようだ。


「女が外に出て働くことに、抵抗がおありで?」

「そういうことじゃない。俺は……心配なんだ」

「心配?」

「ああ……」


 彼は私のそばまでやってきて、手を握ってくる。

 すぐ近くにある整った彼の顔。その瞳は、憂いを帯びている。


「おまえは美しい。美しいおまえが外に出て慰問活動すれば、よく思わないものたちが、おまえを狙ってくるかもしれない」


 そ、そんな真顔できれいだなんて言われると、どうにも面はゆい。

 ただ彼の心配は、確かに考えておくべきことだ。


 私の聖なる力は、傷や病を癒やす。それはとても目立つことになる。

 となると、私を悪用しようと、よこしまな考えを持つ輩が出てもおかしくない。

 そこを危惧しているのだろう。


「ありがとう。でも、私はやりたいです。この力で、たくさんの人を助けてあげたい。アルセイフ様や、ほかの人たちも」


 うぐ、と彼が口ごもる。


「……ずるいぞ、フェリ。そんなふうに言われては、断れないじゃないか」

「じゃあ」

「ああ、いいと思う……だが! 俺はおまえを一人で活動させないぞ」

「え? いや、王様に言って誰か護衛をつけてもらおうと思ってましたけど……」


 すると彼はいたって真面目な顔で言う。


「俺がやる。おまえのナイトになる」

「まあ……」


 慰問活動する私の、護衛をしてくれるというのか。


「それはうれしいですけど、王国騎士団としての仕事はどうするんですか?」

「上に話をもちかけてみる。フェリ、おまえは今や、この国の宝だ。きっと国王も協力してくれるだろう」


 聖なる力はとても珍しいものだ。

 その力を持った女は聖女と呼ばれ、どの国でも重宝されている。この国も例外ではない。


「それにおまえを、どこの誰とも知らんやつに守らせたくない」

「あらまあ、いいんですか? そんな私情を挟んで」


 とはいっても、私の口の端は緩んでしまう。

 愛する夫が、私のことを独占してくれる。それは、なんともうれしいことだから。


「私情ではない、これは愛だ」

「愛……ですか。ふふ……いい言葉ですね」


 独占欲も愛と言い換えれば、なんとも素敵に聞こえるからふしぎである。



【★読者の皆様へ】


新連載はじめました!

異世界恋愛のお話です!


『読心令嬢は魔王のもとに嫁ぐ~実は無口なだけで優しい彼のことを、心を読める私だけが理解してあげたら溺愛されました~』


→ https://ncode.syosetu.com/n9475hr/


(広告下にリンクも張ってあります)


よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★書籍版3/3発売★



https://26847.mitemin.net/i714745/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ