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46話



 私は学校へいき、サバリス教授の研究室へと足を運んでいた。


「なるほど……聖なる力か……」


 ヒドラとの戦いの時に見せた現象を教授に説明した。


 アルセイフ様のもとへと一瞬で転移し、彼の力を強化し、ヒドラを倒すほどの力……。


 その正体をさぐるべく、学校の研究機関でもあるここに来ているのである。


「見せてもらえないかね?」

「それが……発動しないんですよね」


 あのときは自在に操れた力。

 でも今自発的に発動させられない。


「ふむ……何か条件があるのかもしれないね」

「条件……たしかに、そうですね……」


 屋敷に戻ってきたから今日まで、試しに使おうと思った時はあった。

 でもできなかった。

 やはり、あのときが特別だったんだ。


「当時を思い返してごらん? 何か特別なことをしたかね?」

「そう……ですね」


 特別なことといえば、アルセイフ様が窮地に立たされたことくらいだろうか。

 あのとき、私は彼を失いたくない一心で、力を使った。


「あの人を助けたいって、強く願った……くらいですかね」

「なるほど……強い思い。それがトリガーなのかもしれない。誰かを守りたいという、強い愛の力」


「愛……」


 かぁ……と顔が赤くなるのを感じる。

 そんな、愛だなんて……。まあ、確かに私は結構、いや、かなりアルセイフ様のことを愛してはいるけれども。


「愛の力で強くなるなんて、素敵じゃないか」


 教授が楽しそうに笑う。


「……なんだか、からかってます?」

「うん、からかってます」

「もうっ」


 すまない、と教授が頭を下げる。



「でも君は変わったね、カーライル君……ああ、今はレイホワイト君か」


 カーライルは旧姓だ。


「それ、別の人にも言われました。変わったと」

「だろうね。昔の君は、どこか冷めていた。でも今は生き生きしてるよ」


 そんなドライな性格だったろうか、いや……でもそうかもしれない。

 日々を淡々とこなしていただけだった。激しい喜びも悲しみもない日常。


 でも……今は違う。

 毎日アルセイフ様と顔を合わせる。それだけで心が満たされる。


 コッコロちゃんと彼とが仲良くしてると。もやっとする。


「愛は人を変える。あの冷酷なる氷帝が変わったように、君もまた彼からの愛を受けて変わったのだよ」


「愛……ありますかね」


「相思相愛だよ。もう早く結婚した方がいい。君を狙う男は多いし……これからもっと増えることだろう」


「この力を欲して……ですか?」


 先ほどまでの朗らかな雰囲気から一転、教授が重々しくうなずく。


「ヒドラを倒したことで、君は目立ちすぎた」

「倒したのは彼なんですが」


「さしもの氷帝でも、単独でヒドラを倒すことはできない。あれは災害と一緒だ。何十、何百といった犠牲のもと、ようやく退けることができるくらいの強敵。それを単独で撃破して見せたのだ。どれだけ異常事態なのかは、言うまでもないだろう?」


「……そう説明されると、ものすごい偉業を成し遂げたような気がしますね」


「大偉業だよ。近く陛下から勲章をもらうんじゃないか? 君にか氷帝にかはわからないけど……まあ彼にだろうね」


 私に渡すと、より目立ってしまい、力を欲しての争いに発展するから……だろう。


「でも、彼に勲章が与えられたら……」

「彼が目立つことになるだろう。まあもとより冷酷なる氷帝は有名人だ。そのレベルが数段上がるだけ」


「…………」


 彼に迷惑をかけてしまわないだろうか。

 あの人、あんまりうるさかったり、煩わしかったりすること、嫌いなのに……。


「カーライル君」


 教授が近づいてきて、ぽんと肩を叩く。


「憂う君の顔は素敵だが、しかしそんな暗い顔をしていたら、彼はどう思うだろう?」


 ……そうだ。彼を心配させてしまう。


「最近の君は笑顔が増えてきた。だからこれからも、もっと笑顔でいた方がいい」

「……はい。ありがとうございます」


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★書籍版3/3発売★



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― 新着の感想 ―
何代にも渡り国の剣として功績を上げてきたのなら騎士爵でなく男爵か子爵ぐらいには 騎士団副団長ともなるとそれなりに爵位を求められそうだし ヒドラ討伐ともなれば昇爵は絶対あるよね と勝手な妄想 ここは作者…
教授ねらってたんじゃなかったっけ おとなだから引いたのかな? 大人が諭してあげないとわからない天然ちゃんだから、しっかりしたひとが上司にいるのはいいことだ
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