45話
ヒドラ事件を終えて、屋敷に戻ってきた翌日。
私は……とんでもないものを目撃していた。
「ははは~」
『ふふふ~』
……状況を説明しよう。
朝、私が目を覚まし、アルセイフ様を探していたところ……。
レイホワイト家の屋敷、その裏庭に、アルセイフ様とコッコロちゃんがいた。
そして二人で、仲良く散歩していたのである……。
「天変地異の前触れかしら……」
いがみ合っていた二人が、仲良くなるなんて……。
『あ、フェリだー! フェリー!』
「おお、フェリ。おはよう」
ニコニコ笑顔のコッコロちゃん一号二号……。
い、一体何が起きてるんだ……?
「どうした?」
「いやそれは私のセリフですよ。どうしたんですか、二人とも。今朝はやけに仲良しじゃないですか」
ふっ……と彼らが笑う。
「俺たちは、お互いを理解したのだ」
『ボクたちウルトラ仲良しさ!』
ねー? と笑い合うアルセイフ様たち。
う、ううん……あれだけいがみ合っていたふたりが、こんな急に仲良くなるものだろうか。お互いを理解……う、ううーん……。
まあ、仲の良いことは良いことだけれども。
「フェリ。これからは俺たち二人で、おまえを守る」
アルセイフ様が私のことをハグする。
きゅ、急には……その、やめてほしい。照れる。
「お、俺たち……というのは、コッコロちゃんと?」
『そう! そうだ聞いてフェリ! ボクねアルと契約を結んだんだ!』
あ、アル……?
そんな気安く呼び合うような仲になるなんて……!
こんな短時間で! む、むぅ……なんだろう。こう……もやっとする。もやもやっと。
「契約により、コッコロは、俺と行動を共にできるようになったのだ」
「ああ、そういえばコッコロちゃん、屋敷から基本出れませんでしたね」
初代剣聖によって、コッコロちゃんは封印されていたのだ。
契約により、封印が解かれた……ということだろうか。
「今までは、コッコロからの力を十全に受けることができなかった。だが今は、百パーセントの力を引き出せる。こんなふうに!」
アルセイフ様が右手を差し出す。
その瞬間、氷山と見紛うほどの、巨大な氷の塊が出現した。
「すごい……こんな大きな氷を、一瞬で作るなんて」
すぐに氷は溶けて何もなくなる。
ふっ……とコッコロちゃんとアルセイフ様が笑いあう。
む……むぅう……。
「これでフェリは安全だ。もう二度と、君を泣かせない」
「ふーん」
……あらいやだわ。私ったら、素っ気ない態度を取ってしまった。
どうして?
『ふぇ、フェリ……? どうしたんだい?』
「べつにぃ……」
私はそっぽを向いて歩き出す。
……なによ。コッコロちゃんとばかり仲良くして、アルセイフ様は、私の旦那様なのにっ。
だいたい、アルセイフ様も、アルセイフ様だ。
私が居るのに、どうして、私のペットと仲良くするのかしらっ。
……って、なに、この感情。
アルセイフ様に構ってもらえないのが、すごく……辛い。というか、むかっとくる!
「ふぇ、フェリはどうしたのだろうか、コッコロよ」
『あー……そっか。多分ボクらが仲良くしてるから、嫉妬してるんじゃない?』
なっ!? こ、コッコロちゃんめ!
「な、何をおっしゃりますやら、私は別に……」
するとアルセイフ様が微笑むと、私に近づいて、後ろからぎゅーっと抱きしめる。
「すまないフェリ。別に君をないがしろにするつもりはない。一番は君だ」
「…………」
どうしよう、どうしましょう。
口元が……緩んでしまう。
好きな人に、一番と言ってもらえることが、こんなにうれしいだなんて。
「……もっと言ってください」
つい、もっととおねだりしてしまう。
「君を一番に愛してる、フェリ」
……心が温かくなる。ずっとこうして抱きしめてもらいたい。ずっと愛をささやいてもらいたい。
「私も、あなたが一番ですよ、アル様」
私はコッコロちゃんに張り合うように、略称で言う。
あなただけじゃないんですよ、アルセイフ様を、アルと呼んで良いのは!
『やれやれ、あのクールなフェリがどこへいったのやら。ま、互いに良い影響を及ぼし合ってるってことかな』
コッコロちゃんが苦笑交じりにそう言った。
私は彼と目を合わせて、二人微笑むのだった。
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