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43話



 ヒドラを倒した私たちは、村を出て王都へと戻ってきた。


 国王陛下にことの顛末を報告し、その日の夜。

 遅くなってしまったので一泊していくことになった。


「ふぅ……」

「大丈夫か、フェリ?」

「ええ、アル様」


 私たちは同じ部屋に泊っていた。まあ夫婦ということで、同じ部屋に入れられた次第。


「無理も無い。あんなにも大きな力を使った後なのだ」

「まあ、そちらはあまり」


 ヒドラを倒したあの聖なる力。別に使ったからと言って、体力や精神力が感じられなかった。


「では、どうしたのだ?」

「なんだか最近、いろいろとめまぐるしく出来事が起きてるじゃ無いですか。少し休みたいなぁと」

「そうだな……俺も休みを取って旅行にでも行きたい」


「ですね。わたしもあなたと二人で旅行行きたいです」

「おお……!」


 彼は表情を明るくして、私を抱きしめてくる。


「そうか! 二人で行きたいか! あの余計な旧友たちはいらないか!」


 別に友人たちがいらないわけではない。

 ただ単純に彼と一緒にゆっくりしたいと思っただけである。


「ネログーマはどうだ? あそこは海が近くにあるぞ」

「海ですか……」


 ネログーマとはこの国の東にある、水と緑の国だ。観光名所として有名。


「いいですね」

「では旅券を取ろう! すぐとろう!」


 コッコロ2号ちゃんは、ふふ……どうやら私と旅行へ行くのがよほど楽しみのようだ。

 尻尾をぶんぶんと降っている姿を幻視した。


「楽しみですね」

「ああ。フェリの水着……く!」


「どうしました?」


 彼が頭を抱えてうなる。


「フェリの美しい水着姿……みたい。だが……! 俺のフェリの、美しい姿を! ほかの者に見せたくないという葛藤が生じている!」


 まったく、馬鹿ですねえふふ……。


「じゃあ海はなしにします? あーあ、海楽しみだったんですけどねぇ」


 私がそうやってからかうと、彼はぶんぶんと首を振る。


「いこう! とりあえず、無人島でも貸し切る!」

「なんですかそれ。まったく、そんなに私を独占したいのですか?」


「もちろんだとも。フェリは俺のだ」

「ふふ、アル様も私のもの、ですよ」


 私は彼と口づけを交わす。


 ついばむような口づけをしたあと、彼が嘆息をつく。


「幸せで死にそうだ……」

「幸せで死んだ人間なんて聞いたことありませんよ」


「いや、死ぬ。死んでしまいそうだ。心臓が破裂して死ぬ……」


「もう、おかしな人ですねぇ」


 私たちは目を見合わせて笑う。そして……唇を重ねる。


    ★


 フェリアたちがいちゃついている一方、彼女に思いを寄せる、ハイア王子はというと。


「これは……まいったね」


 彼女たちの扉の前に、背中を預けている。

 フェリアの様子を見に来たのだが、入ろうとした瞬間、彼らの声が聞こえてきたのだ。


 ハイアは盗みぎきはよくないとその場を後にする。


「…………」


 ハイアは、フェリアに密かな恋心を抱いていた。しかし、彼らのあの、幸せそうな雰囲気を、邪魔したくなかった。


 今回のヒドラの件で、ふたりはより絆を強固なものにしたのだろう。

 慎み深いフェリアが、あんなふうに、男を求めるなんて。


「……邪魔しないよ、君の幸せは、ね」


 ハイアは一人去る。もう、彼らの邪魔するつもりはない。彼女への思いに胸を詰まらせながら、フェリアの幸せを祈るのだった。


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★書籍版3/3発売★



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― 新着の感想 ―
ハイアいいおとこだった!!ごめん邪魔だと思ってた いいひとだったね!義妹ちゃんとの婚約なくなるといいね!
[一言] ハイアイケメンすぎる! 出てきた時、邪魔だけはすんなよ!とか思ってごめん!
[良い点] 文句のつけようもないくらい素敵なルート〜 [一言] 更新、お疲れ様です!
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