表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/76

42話



 毒魔竜ヒドラを討伐したアルセイフ様とともに、私は村へと帰ってきた。


 アルセイフ様が率いる騎士団、赤の剣のみなさんは、私たちの無事を泣いて喜んでくれた。


「副団長! 生きててよかったです!」「もう死んじゃったかと思いましたよ……うう……」


 団員のみなさんをヒドラから逃がすため、彼はひとりしんがりをつとめたのだ。

 大泣きするみなさんを見てアルセイフ様が困惑なさっていた。


 たぶん、彼の中では、騎士として当然の行いをしたのだろう。

 弱き人たちの前に立ち、彼らの代わりに自らを犠牲にする。それは彼のなかでは特別ではないと思っていたし、騎士団のみなさんも同じ意見を持っているのだと思ってたのだろう。


「みんな、あなたが好きなんですよ」


 一瞬、彼が驚いた顔になったけれど、すぐに彼らの顔を見て、自らの過ちに気付いたのだろう。


「すまなかったな、おまえたち」


 すっ、と素直に頭を下げるアルセイフ様。うんうん、それでいいのです。


「「「副団長が、おれたちに頭を下げたー!?」」」


 けれどみなさんとても驚いてらした。そんなに驚くことなのだろうか。

 結構この人、素直な人ですよ?


「すげえ」「あの氷帝さまが自分の間違いに気づいて謝るなんて!」「やはりフェリアさまの人徳があってこそか!」


「私は別に何もしてないのですが……」


 いやいや、とみなさんが首を振る。


「やっぱり副団長にはフェリア様がいないとダメですね」「というかフェリア様がいなかったら死んでましたよね」「良かったですね副団長、フェリア様と結婚できて!」


 みなさんなんだか私のおかげにしてるような……。

 あとみなさん私ばかり褒めてくるので、申し訳がない。


「あ、あの、ヒドラを倒したのはアルセイフ様ですよ?」


 けれどみなさん首を振る。


「いやフェリア様がいたからヒドラを倒せたんです」「フェリア様パワーがなきゃいまごろ副団長は毒で死んでました!」「やはりフェリア様が神!」


 絶賛される私だが、やはり私ばかり評価されるのはちょっと、いや、だいぶ嫌だ。

 ちゃんと夫も褒めてほしい。


「あなたもぼーっとしてないで、もっと自分の功績を誇ってくださいまし」

「む? いや、俺が言うまでもないだろ。こいつらが言った通り、すべてはフェリ、おまえのおかげだ」


 うんうん、と部下と一緒にうなずくアルセイフ様。


「……もしかして、からかってます?」

「ふふ、ばれてしまったか」

「まったくもう!」


 なんて夫でしょうか。まったく。妻をからかうだなんてっ。


「もう一緒に寝てあげません」

「んな!? そ、それは俺に死ねということか!?」


 さっきの余裕の表情からいってん、大いにあせるアルセイフ様。

 ふふ、焦るがいいです。


「あんな危険なとこに一人で残って、嫁を不安にさせた罰です。しばらく反省です」

「くぅ……!」


 そんな私たちのやりとりがおかしかったのか、騎士団のみなさんは、全員で笑い出した。


 私とアルセイフ様も顔を見合わせ、笑ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★書籍版3/3発売★



https://26847.mitemin.net/i714745/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ