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41話



 アルセイフ様を助けるため、私は彼の元へとやってきた。

 毒魔竜ヒドラの毒を受けて瀕死の彼に、魔法を使った。


 その結果、彼は一命をとりとめた。本当に良かった……。心地よい安堵感が私の体を包んでいる。さっきまで心臓が痛いくらいドキドキと、体に悪いはね方をしていたのに。


「アルセイフ様……」

「フェリア……」


 いつも以上に彼をいとおしく感じる。ずっと抱きしめていたいという気持ちに包まれている。

 だが私たちの邪魔をするものがいた。


「ギシャァアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 毒魔竜ヒドラが食事を邪魔され怒りの雄たけびを上げる。

 だが……怒ってるのはこちらのほうだ。


「ふぇ、フェリア……おまえその……怒ってるのか?」


 いつもクールな彼がひどくおびえた声で言う。


「え、あ、はい。許せませんよね。あのトカゲ」


 大事な人の命を理不尽に奪おうとしたこの体の大きいだけで脳みそからっぽのトカゲ野郎には……失礼。淑女らしからぬ発言、御容赦ください。


「何はともあれあれを倒しましょう」

「しかしやつは攻撃が通じないぞ」


「問題ありません。さぁ、立って、剣を持って」


 アルセイフ様の剣は折れていた。

 私は折れた刃に手を添える。


 するとまばゆい光があたりを包み、それは折れた刃から、光の刃をはやす。


「これは……付与魔法か!」

「ええ。わたしの浄化の魔法を刃に付与しました。これなら毒の竜の体を覆う毒を浄化し、相手に攻撃が通るかと」


「なるほど! さすが俺のフェリアだ!」


 一人では刃届ぬ相手でも、私たち夫婦が力を合わせれば、どんな障害もなんなく乗りこなせる。


「見せてやりましょう、夫婦の愛を」

「ああ!」


 アルセイフ様は立ち上がって剣を構える。

 毒魔竜は一瞬おびえたものの、わたしたちに向かって毒のブレスを吐き出す。


「効きませんそんなもの」


 わたしは浄化魔法を展開して毒ブレスを防ぐ。

 驚くヒドラのすきを縫って、彼が一瞬で敵の懐にもぐりこむ。


「消し飛べ!」


 彼は光の刃を縦横無尽に振る。

 一瞬で竜の体はずたずたに引き裂かれた。


 ぼとぼとと地面に死肉となった竜が落ちていくのを見て、アルセイフ様が唖然とした表情でつぶやく。


「斬撃の威力が格段に上がっていた……なんだこの剣は。フェリアの力なのか……」


 そんなものはどうでもいい。

 わたしにとって一番重要なことは、夫を守ることが出来た。そのことに対する安堵だけ。


「アルセイフ様……」


 彼の細く引き締まった体をぎゅっと抱きしめる。


「ふぇ、フェリア!? ど、どど、どうした!?」


 どきどき、と彼の心臓の鼓動が聞こえてくる。

 生きてる。彼が、生きている。なんて嬉しいのだろうか。ずっとこの音を聞いていたくなる。ぎゅっとさらに強く抱きしめて、彼の生を喜ぶ。


「ごめんなさい、もう少しこのままでも?」

「あ、ああ……だが、ほどほどにしてほしい」


「おや、どうして?」


 アルセイフ様は顔を真っ赤にしていた。

 手で顔を覆いながら言う。


「……あまりおまえにそうされてると、心臓が破裂して、死んでしまいそうだ」


 要するに照れてるということだろう。

 わたしはいつも以上に、そう思ってくれるのがうれしかった。


「ではもう1,2時間くらいこのままで」

「お、鬼か貴様は!」


「妻ですよ。あなたの」


 彼はぐぬぬとうなったあと、小さく息をついて微笑む。


「そうだったな。フェリア、すまない」

「いえ……無事で本当によかった……」


 その後ハーレイが駆けつけてきた。わたしたちは無事と、顛末を伝える。


 ほっとするハーレイさんは、その間も抱き合うわたしたちをみて苦笑する。


「本当に、なかのよろしい夫婦ですね」

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