19話
アルセイフ様と別れた私は、教室へとやってきた。
学校、という名前がついているものの、中身はかなり豪華なもの。
廊下も教室も中々に派手で見栄えの良いものだ。
私、アニス、モナ、スヴェンの4人は、懐かしの教室へとやってきた。
がらっ。
「…………」
教室の扉を開けると、中に居た生徒達の注目が、私に集まる。
皆雑談を辞めて私に注目していた。
「……やれやれ」
相変わらずのようだ。私はこのクラスにおいて、浮いてる存在だった。
そんな私が久しぶりに帰ってきたところで、クラスメイト達からの扱いも変わらないだろう。
「フェリ! 気にしないで! あたしたちがいるわ!」
女友達のアニスが、快活に笑うと、背中を優しくたたいてくれる。
「そうですね」
友達は数より質だと思う。
私にとってアニスもモナも、そしてスヴェンも、大事な友人だ。
たとえクラスメイト達から倦厭されていても、彼らがいれば大丈夫。
私は昔座っていた、窓際の一番後ろの席に座る。
「じゃーあたし右隣!」
「おいおいアニス~。ふざけるなよ、隣はオレ様だぜ?」
「わ、わたくしが……」
やいのやいの、と三人が、誰が隣に座るかで揉めている。
風物詩的な光景だ。ああ、なんだか懐かしいな。
と三人を見ていたそのときだ。
「あ、あのぉ……」
男子生徒数名が、私に近づいてきた。
「カーライルさん、お久しぶりです」
「あら、どうも。ご無沙汰しております」
私は立ち上がって、彼らにお辞儀する。
「復学したって聞いて、おれらすげえうれし……」
「あーはいはい。ちょーっといいかな君たちぃ~?」
スヴェンがにこやかに笑いながら、ぽんっ、と生徒の肩をたたく。
「ひっ……! で、殿下……なんでしょう?」
私に話しかけようとした男子生徒が、何やらおびえている。
一方でスヴェンは笑いながら言う。
「ちょーっとオレ様、君たちに用事があったんだったー。……ちょっと面貸せ、な?」
ぶんぶん! と彼らがうなずく。
「つーことでオレ様、ちょーっとこいつらと話してくっから~。フェリ~♡ あとでね~」
「ええ」
何だろう急に。
まあ男の子同士での話だから、あまりツッコんじゃいけないだろう。無粋ってものだろうし。
「あ、あのぉ~……カーライル様」
次は女子の数名が、私に近づいてきた。
「こんにちは。またよろしくお願いします」
「こ、こんにちはっ」
女子たちが明るい顔をして「……きゃー♡」「……カーライル様と話しちゃった~♡」と、小声で何かを言っている。なんだろう……?
「私に何かようですか?」
「あ、あのっ! お昼休み、よろしければお茶を……」
と、そこへ……。
「あーはいはい! ちょーっといいかしら、あんたたち~?」
アニスが私の前に立ち、にこやかに笑う。
「ちょーっと、面貸せ? な?」
「「「は、はひ……」」」
アニスが女子生徒達を連れていく。
「ごっめーんフェリ♡ ちょーっとこいつらに調きょ……じゃなかった、おしゃべりしてくるから~♡ あとでね~♡」
「はぁ……」
朝からおしゃべりなんて、ほんとに学生時代に戻った気がする。
スヴェンとアニスは、それぞれの友達とどこかへ言ってしまった。
遠くで「……男が勝手にオレ様のフェリ話しかけるな潰すぞ?」「……あたしに断りもなくフェリに話しかけてんじゃないわよ潰すわよ?」と、
スヴェン達の楽しげな会話が聞こえてくる。昔のまんまだ。
私と違って彼らは社交的で、いつもああして、クラスメイト達と仲良く会話していたな。ふふ……。
「……ど、どうしました、フェリ様?」
隣に座る、一見女の子に見える……モナが聞いてくる。
「いえ、懐かしいと思ったまでです。こういうの久しぶりで」
「……お、おやしきでは、その……酷い事されていませんでした? わたくし、とても、とても心配で……」
モナの心配というのは、アルセイフ様関連だろう。
あの人は冷酷なる氷帝という悪評があって、周りから怖がられていたのだ。
一時期、あの人のもとへ嫁いだ人は皆帰ってこなかった、殺されたのだ、という噂がたつほどに。
だからモナは心配してるんだろうな。
「大丈夫です。彼はとても紳士的で……それに可愛いかたなので」
「……れ、冷酷なる氷帝様を、可愛いだなんて……すごいですね、フェリ様は」
きらきら、とモナが私に目を輝かせて言う。
「そんなたいそうなモノじゃないですよ。そうだ、今度みんなでうちに遊びに来ませんか?」
「「「是非……!」」」
アニスとスヴェンが戻ってきた。
「是非とも行きたいわ! どんな暮らししてるのか……調査しないとね、友達として」
アニスがどことなくギラついた目をしながら言う。
「オレ様のフェリが酷い扱い受けてないか……調査しないとな、友人として」
スヴェンも同様に、ちょっと怖い顔で言う。
「……わ、わたくしもお家に行ってもよろしいのですか?」
モナがおっかなびっくり尋ねてくる。
「ええ。どうぞ。いつ来ます?」
「「今でしょ……!」」
授業があるでしょう……やれやれ。