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ダンジョン商売  作者: もぎ すず
第三章 周囲が騒がしいようです
91/99

087 五人で探索

 高2の夏休みが半分過ぎた。光陰矢のごとしだ。

 鬼参(おにまいり)玲央(れお)先輩が卒業してから、五ヶ月が過ぎたことになる。


 最近はダンジョンを一部公開したことで、忙しさに拍車がかかっている。

 時間はいくらあっても足らない。このまま学校が始まったらどうなるのか。想像するのも恐ろしい。


「勇三、少し出過ぎだ!」

「オッケー、いま下がる」


 俺たちはいま、五人で『虫系B4ダンジョン』に入っている。

 虫系ダンジョンは、数あるダンジョンの中でもっとも難易度が低い。


 獣系ダンジョンは気配を消した魔物の不意打ちが怖いし、アンデッド系ダンジョンは生理的な嫌悪感がある。

 CやDになると、魔法生物系ダンジョンや巨獣系ダンジョンが現れ、かなり危険度が増す。


 いろいろ精査した結果、単純なレベル上げには、虫系が一番ということに落ち着く。


 以前は牟呂(むろ)さんと東海林(しょうじ)さんのレベルに合わせてAダンジョンに入っていたが、その甲斐あって、二人のレベルは11にまで上がった。


 毎日休みなしで探索しても、二人とも嫌な顔ひとつしない。

 そのおかげで二人のレベルはモリモリと上がって、ようやくレベル11になった。


 試しにと五人でB4ダンジョンに入ったところ、意外にもやれることが分かった。


 玲央先輩、勇三そして俺の三人はレベル19。

 節目のレベル20になるには、まだしばらくかかる。


 できるだけ効率のいい探索をしておきたかったので、ここでレベル上げをすることに決まった。


「よし、残りはあと一体か。ここは私の魔法で……」

「いえ、玲央先輩。もう終わりそう……あっ、終わりました」


 最後の一体に牟呂さんが特攻し、『兎蜘蛛(うさぎくも)』と名付けた魔物が『もや』となって消えた。

 玲央先輩は、〈火弾☆1〉のスキルを使おうとしたのだろう。手を前にかざしたところで止まってしまった。


 どうするのだろうと見ていたら、先輩は何事もなく手を下ろした。

「さあ、進もうじゃないか」


「そうですね。時間はまだありますし、どんどん行きましょう」

 俺たちは探索を開始した。


 この『虫系B4ダンジョン』だが、実は二人の適正レベルよりかなり高い。

 だが、実際に入ってみると、俺たちが手持ち無沙汰になることもしばしば。


 どう考えても、当時の俺たちよりやれている。


「すごいな。オレたち三人だけで戦ってたときは、もっと泥臭かったよな」

「まあ、あのときは結構手探りだったからね」


 勇三が言うように、いまのレベルの半分くらいのときは、小さな怪我はしょっちゅうだったし、うまくいかないことも多く、反省会をよく開いていた。

 あの頃に比べれば、東海林さんたちはよくやっている。


「うまく俺たちとの連携……歯車が噛み合っている感じがするね。東海林さんの動きもなめらかだったよ」

「そうですか? だったら嬉しいです」


 東海林さんは笑顔を見せた。すでにダンジョンに入って数時間経過しているが、東海林さんはまだまだやれそうだ。

 身体は疲れているはずだが、レベルが上がったことの恩恵だろうか、元気いっぱいだ。


 俺たちはレベル20が目標で、東海林さんたちは、俺たちに追いつくのが目標。

 そのせいか、レベル差を感じさせないほど、二人が頑張っている。


「東海林さんたちのレベルがあと3つも上がれば、B5ダンジョンにも入れそうかな」

 玲央先輩に聞いてみると、「虫系ならあと2つ上がれば行けるのでは?」とのことだった。


 東海林さんは、玲央先輩の言葉に頷く。自信があるのだろう。

 もともとスポーツ少女だったこともあって、東海林さんの順応は早い。


 一方の牟呂さんは、「B5ダンジョンは、私の適正レベルから外れていると思いますけど」と、難色を示している。


 牟呂さんは大柄であり、力も強い。その反面、性格はかなり慎重。石橋を叩いて渡るタイプだ。

 牟呂さんが普段大人しいのは、いろいろ考えているからだと俺は思っている。


「そうですね、B5ダンジョンの適正レベルは五人の平均レベルが19から20らしいです」

「でしたら……」


「ただし俺たちは装備も揃っていますし、ポーションも持っています。多少の無理はできると思いますよ」

 これまでかなり安全マージンをとってきたが、戦いの勘というのだろうか。良い意味での「慣れ」が出てきている。


 各人の視野が広がり、連携も自然に取れている。余裕をもって戦えている。

 スキルも有用なものを持っていることから、五人が揃えば、レベルが足らなくても何とかなりそうなのだ。


 一応、祖母から教えてもらった適正レベルは以下の感じ。

 異世界人の探索者が五人揃った状態で。


 Aダンジョン レベル1~10

 Bダンジョン レベル11~20

 Cダンジョン レベル21~30


 各ダンジョンは「A1」「B3」のように5段階に分かれているので、「A1は、レベル1~2」「B3は、レベル15~16」が適正と考えることができる。


 ただし、先ほど言ったように俺たちは装備が整っているし、有用なスキルも持っている。

 単純に異世界人の適正レベルを当てる必要はないと考えている。


 ちなみにDダンジョンから上は、レベルよりもスキルが重要なので、適正レベルというのはとくになかったりする。

 Cダンジョンですら、どれほどレベルが高くても、有用なスキルを持っていなければ、決して入ることはないらしい。


「俺たち三人がレベル20になって、東海林さんたちがレベル14になったら、Cダンジョンへ入りますか?」

「それでもいいかもしれないな。ダンジョンを出たら、御祖母様に聞いてみよう」


「じゃあ、今度聞いておきます。……そういえば祖母ですけど、近々英国へ行くそうですよ」

「英国へ? 英国に何かあるのか?」


「観光がてら、人と会ってくるって言ってました」

「……ふむ?」


「ダンジョンを使うときまでには戻って来るそうなので、その辺は問題ないみたいです」

「そうか……しかし英国か」


 探索の間中、玲央先輩は何かを考えているようだった。

 


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― 新着の感想 ―
[一言] お、向こうとのスケジュール調整ついたみたいですねえお祖母ちゃんに限って囚われの身になるとは思いませんがどれくらい向こうに行くことになるんでしょうね
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