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ダンジョン商売  作者: もぎ すず
第二章 商売をはじめるようです
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061 反響(1)

 これまでも株式会社ダンジョンドリームスのウェブサイトは存在していた。

 だが、たいした情報は載せていなかったため、世間に注目されることは一切なかった。


 裏では、さまざまなシステムの稼働検証が行われていた。

 そう、水面下では、着々と準備が進んでいたのだ。


「DDチャンネルとの紐づけもできたしね」

 これで『DDチャンネル』と『株式会社ダンジョンドリームス』が、同一であることが世間に知れたのだ。


 そして今日、俺は勇三と学校へ向かっている。

 小湊(こみなと)先生から、呼び出しを受けたのだ。


 DoTubeに開設した『DDチャンネル』からも、探索者募集の告知を出した。


「そういやさ、玲央せんぱいの同棲も解消したんだろ?」

「あれは同棲というより、師弟関係かもしれないけど、そうみたいだね」


 さまざまな告知が行われる直前、玲央先輩は茂助先輩の家を出て、オートロックのマンションに引っ越した。


「実はそれなりに蓄えはあったのさ。無駄遣いはできないがね」

 玲央先輩はそう言って笑ったが、定期預金を解約したらしい。


「動画の広告収入も入ってきたことだし、これまでの借金を少しずつ清算していかないとね」

「規模がでかくなって、運転資金もかなり必要になっただろ? まだ先じゃね?」


「それもそうか。ということはしばらく、金欠が続くのかな」

「だろうな……それより今日の呼び出し。どうなるんだか」


「探索者の告知が金曜日でしょ。……で、いまは日曜日。バレるのは早かったね」

「こんなもんじゃね?」


 探索者を募集しはじめた直後、俺たちのことがバレた。

 それだけ世間の注目を集めていたわけなので、想定の範囲内だ。一応は。


 俺と勇三のスマートフォンには、ひっきりなしに着信音が鳴り響いている。

 あまりにうるさいので、電源を落としてしまった。


 知り合いからの連絡はそれでいいのだが、問題は学校だ。

 話したいことがあるので、一度来てほしいと言われた。


「待ってたぞ、二人とも」

 小湊先生が、腕を組んで待っていた。


 昨年は、勇三のクラスの担任でもあったので、俺たちのことはよく知られている。


「学校は休みなのに、部活で来ている生徒は多いですね」

「……ああ、お前たちは行列研究部だったよな。休日に登校することはなかったのか?」


「ありませんでしたね。だから新鮮ですよ。……それで、俺たちに話があるとか」

「まず確認したいんだが、以前話した内容があっただろ。あれから変わったところはないか?」


 俺は以前、小湊先生に起業したことを告げた。

 そのとき、ダンジョンに入る探索者をそのうち募集するので、周囲が騒がしくなるだろうと伝えてある。


「変更はないですね」

「そうか……。昨日、学校の電話が鳴り止まなかった」


「俺たちのせいですよね、すみません」


「ほとんどがマスコミの問い合わせだ。右腕少女の件と合わせて、この学校の生徒なら、あちらさんも確認したくなるだろう」


 テレビ、新聞、雑誌、ウェブで記事を書いている素人などから、一斉に問い合わせがあったらしい。

「知らぬ存ぜぬで通しているよ。一部はインタビューのために押しかけてきたが、追い返した」


「本当にすみません」

「それはいいんだが……学校は会見する義務があるとまくし立てているのもいたが、個人のやることに学校が口出しするのも変な話だしな」


 罪を犯したわけでもないので、マスコミ向けに対応する必要はないと考えているようだ。

 なんとも男らしい態度だろうか。小湊先生は、きれいな女性だけど。


「それなら、オレたちを呼び出した理由は?」

 勇三がしびれを切らしたようだ。


「うむ。明日の月曜日だが、登校時間帯には、マスコミがお前たちを待ち伏せるだろう。教室の中に入っても、他クラス、他学年の生徒から興味を持たれると思う」


「ええ、分かります」

「学校全体が浮ついてしまう。生徒のプライバシーと安全がこの先、守れるか分からない」


「つまり、東海林さんと同じ……出席停止措置ですか?」


「ああ、マスコミにはしばらく登校しないと伝えるつもりだ。一過性のものだと思うが、そのつもりでいてくれ」


「分かりました。他の生徒を困らせるのは本意ではないですし、しばらく登校は控えます」

「すまんな。これは学校側からのお願いだから、欠席扱いにはならないから」


「それは助かります。実はそろそろ雲隠れした方がいいかなとは思っていたんです」

「おまえたちも3年だ。受験のことも気にかかるだろうが……そういえば、大学はどうするんだ?」


「いまのところは未定ですね。いまは会社が第一ですし」


「まあ、これだけ有名になれば推薦のひとつやふたつは取れるだろう。休んだ分の課題はそのうち送る。それ以降は……落ち着いたら連絡する感じだな」


「分かりました。ご迷惑をかけるかと思いますが、よろしくおねがいします」

 登校しなくてよくなったので、レベル上げに邁進できそうだ。


 いまレベルは17にまで上がっている。体感的に、そろそろレベル18になるんじゃないかと思っている。

 俺と勇三は校門前にマスコミがいないのを確認してから、学校をあとにした。



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