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ダンジョン商売  作者: もぎ すず
第二章 商売をはじめるようです
50/99

048 コラボ開始

 日曜日がやってきた。

 今日は2人のDoTuberとコラボの日だ。


 一人は商品説明が得意な「かるちゃん」さん。

 もうひとりは、いろんなゲームに詳しい「ゆうじちゃんねる」さん。


 約束の時間、約束の場所に、2人はやってきた。

 集合は、前回と同じ小金井公園である。


「どうも、かるちゃんでございます。本日は、お招き、ありがとうございます」

「DDチャンネルの孫一と言います。このたびは、コラボを受けていただいてありがとうございます」


「いやぁ、もうDDチャンネルさんのダンジョンに入れると聞いて、昨日は寝られませんでしたよ」

 体格のよいかるちゃんさんは、体育会系の雰囲気を持っているが、どうにも腰が低い。


「はじめまして、ゆうじちゃんねるのゆうじです。ご招待いただきまして、恐縮です」

「いえ、急にお誘いしてしまってすみません。遠くから大変だったでしょう」


「いえいえ、飛行機であっという間ですよ。このことを友人知人に言いたくて仕方がなかったです。我慢するのがどれだけ辛かったか」

 ゆうじさんはおどけて笑っている。


 かるちゃんさんは栃木県から、ゆうじさんはなんと北海道から来てくれたのだ。


「そう言っていただけると、助かります。ブラックキャップさんの動画で分かっているかもしれませんが、転移――瞬間移動ですね。それでダンジョンまでいきます。帰りも同じです」


「やはり魔法ですか」

「はい。ダンジョンの中も魔法を使いますので、ここで否定しても仕方ないですね」


「つまりDDチャンネルさんに登場するお三方は全員魔法使いであると」

「はい、そうです」


 俺がそう言い切ったからだろうか、ゆうじさんの頬が引きつっていた。


「これはオフレコで聞きたいのですけど……」

「はい、なんですか?」


「右腕少女とブラックキャップさんのお母さんを治したのは……」

 なるほど、そのことを知りたかったのか。


「それもイエスです。ダンジョンの宝箱から出るポーションを使いました」

「……っ!!」


「というわけで、着替えたら早速ダンジョンに行きましょう」

 俺は2人に、中古の防具を渡した。




 2回目のコラボということで、引率する俺たちも多少は慣れてきている。

 今回は、巨人系A5ダンジョンへ入ることにした。


 巨人系は難易度の高いダンジョンで、出てくる魔物も強力なパワーが特徴的だ。

 だが動きは遅いため、素人を連れて行く場合、獣系よりも安全だったりする。


緑色(りょくしょく)巨人ですね。俺たちは『トロールもどき』って呼んでいますが、変な再生能力はありません」


「あれを倒すんですか?」

「見ててください」


 玲央先輩が〈火弾☆1〉を連発する。

 巨人系ダンジョンは耐久力の高い魔物が多いが、先輩の魔法で剣の間合いに入る前に倒しきることができた。


 5発の〈火弾☆1〉で、緑色巨人は黒いもやとなって消えた。

「はぁ~、すごいものですね」


「ここはそれなりに強い魔物が出るダンジョンですから、迫力があると思います」

「ええ、それはもう……さっきから、敵が出てくるたびに後ろに下がっちゃいますよ」


 それは俺も見て知っていた。

「うわっ!」とか「出た!」と言っては、後ずさっているのだ。


 殺気むき出しの魔物に慣れていないのだから、それは仕方がない。

 俺だって、凶暴な大型犬に敵意を向けられたら、自然と足が下がる。


 ここに出る魔物は、そんなものの比ではないのだ。敵意どころか、殺す気でくる。

 明らかに自分より強い相手が敵意丸出しで向かってくれば、逃げたくもなる。


「今度は『ケンタウロスもどき』ですね。獅子頭(ししとう)馬人(ばじん)という名前にしました。こうやっていま、魔物一つ一つに名前をつけているんです」


「いや、解説はいいですから、早くやっちゃってください! ひぃっ!」

 3体の獅子頭馬人が駆けてくる。こいつは足が速いので少しやっかいだ。


「孫一くんは右を! 私は中央をやる」

「分かりました」


 近寄ってくる前に少しでもダメージを与えるため、俺と玲央先輩、そして勇三の3人で〈火弾☆1〉を放つ。

 3発当たったところで、剣の間合いになった。


 すでに身体強化は終えているので、そのまま斬りかかる。

 前足を斬り落として、敵が前のめりに倒れたところで首を落とした。


 黒いもやとなって消えたあとに魔石が残った。

「おっ、魔石を落としましたね。さしあげますので、どうぞ。持ち帰ってください」


 先ほどかるちゃんさんに魔石を渡したので、今度はゆうじさんに渡す。

「ありがとうございます。……これ、本当にきれいですね」


「中に魔力みたいなものが入っているので、うまくエネルギーを取り出せれば、かなり便利なんですけどね」

「エネルギーですか。その……取り出し方は分かるのですか?」


「いえ。ただ魔道具を利用するときに必要となりますので、何らかの方法はあると思います。逆に電気で同じ効果が得られればいいのですけど、おそらくそれは無理なんでしょうね」


 魔道具を作るには、魔石と魔法陣、そして〈魔道具生成〉スキルが必要だ。

 エネルギー部分だけを電気に変えても、魔道具が動くとは思えない。


 そのまま戦闘を続けて、階段をおりる。

 A5ダンジョンはそれほど広くないし、各階層の魔物をすべて倒す必要がないので、階段を見つけたら下りるようにしている。


 そのまま順調に探索を続け、地下5階に出た。

 しばらく歩いた先で、宝箱を見つけた。


 といってもAダンジョンの場合、木箱だ。

 あまりいいものが入っているように見えないのが玉にキズだろうか。


「見てください。あれがダンジョンの宝箱です」

「「おおっ~~~!」


 それでも、かるちゃんさんとゆうじさんのテンションが上がっていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 世間への周知が進む事で展開が加速しそうですね。 待ち遠しいです。
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