046 第2のコラボ相手
ブラックキャップさんに続く、次のコラボ相手が決まった。
新製品の紹介動画を中心に活動している「かるちゃん」さんだ。
かるちゃんさんは、新製品をいち早く紹介するだけでなく、前機種があればその比較、製品の歴史などを詳細に報告することで有名だ。
商品を手っ取り早く知りたい人には不向きだが、丁寧に一つずつ独自の視点を入れながら紹介していくため、本気で購入するときには、とても参考になっている。
茂助さんに連絡をとってもらったところ、栃木県に住んでいるらしく、すぐに出てくるのは難しい。
「次の日曜日ならば都合がつくようでござる」
「俺たちがコラボをお願いするわけですし、問題ないです」
「分かったでござる。そのように伝えておくでござる」
「お願いします」
茂助さんが日程を調整してくれたことで、俺は安心してしまった。
気を抜いていたともいう。
今どきのファンタジーゲームをDoTubeで検索していたところ、ついいつもの調子でコメントを書き込んでしまったのだ。
DDチャンネルアカウントのまま……。
DoTubeは、複数人でチャンネルを共有できるシステムがあり、いちいち茂助さんからURLなどを教えてもらわなくても、共有設定から切り替えることができる。
俺のプライベートアカウントだと思っていたら、共有しているDDチャンネルの方のアカウントを使っていたらしい。
ゆうじちゃんねるさんのゲーム紹介動画はよく見ているので、深く考えることなくコメントしてしまったのだ。
翌日、ゆうじちゃんねるさんの動画の中で、DDチャンネルさんからコメントをいただきました。ありがとうございますと言われて気づいた次第だ。
しまったと思ったが、後の祭りである。
そこでふと思い立ち、メンバーとかるちゃんさんに確認をとってみたところ、オーケーが出たので、かるちゃんさんと同日にコラボしませんかと誘ってみた。
結果、「ぜひとも参加させてください」と返事をもらい、急遽2組とコラボすることが決まった。
どのみちダンジョンは5人まで入れるのだから、ちょうど良かったのだと思う。
日曜日が楽しみだ。
牟呂翔さんの件は、水面下で進んでいる。
ホテルのデザート部門で勤務ということで、土日は休みがもらえないらしい。
土日が一番混むのだから、それは仕方ない。
よって平日の午後、試しにダンジョンへ一緒に入ってみることにした。
「亡くなった祖母からは、異世界の魔法使いだから、何があっても驚くなと言われていましたが、これがダンジョンですか……」
翔さんの亡くなったおばあさんと、うちの祖母は仲が良かったらしく、週一くらいで会っていたらしい。
バスで行くときは、俺を連れていくときだけだったようだ。
俺はちっとも知らなかった。
まあ、転移ですぐに会いに行けるのだから、事前の確認もいらなかったのだろう。
翔さんも学校があるため、うちの祖母が頻繁に来ているのは知っていたが、まさか魔法を使って会いに来ているとは思っていなかったようだ。
ちなみに、祖母が異世界人であることを知ったのは、高校卒業間近になってかららしい。
どうやら牟呂家でも、秘中の秘の扱いだったようだ。
話を聞いて、うちの祖母がすみませんと思ってしまった。
翔さんを連れてのダンジョン探索は順調に進み、最後の方は、翔さんにも魔物を倒してもらった。
「なるほど、ほんとうにゲームのダンジョンのようですね」
「予定を少し変更して、一般の人にも開放しようと思っているんです。そのための施設を作る予定ですが、翔さんにもそこで働いてもらえたらと思うんです」
「施設を作るのですか?」
「イチから建築するか、既存の建物を買うかは未定ですが……そうですね、早めに候補は絞っておきたいと思っています」
「壮大な計画になりそうですね」
「ええ、まあ……それでもダンジョンに入れること、中で魔物を倒すとレベルアップすること、地球上にない魔石やその他が手に入ることを考えたら、あまりお金の心配はしなくていいんじゃないかと考えています」
もちろん最初は金欠だろう。
初期投資にいくら必要なのか、素人な俺ではまったく分からない。
だが長い目でみれば、お金については気にしなくてよくなるのではないかと思っている。
「たしかに……そうなるでしょうね」
あれだけの説明で、牟呂さんも納得したようだ。
「最悪、ポーションを高値で売ればと考えています」
「欲しがる人は、世界中にいるでしょうね」
いま必要でなくても、将来的に必要になる可能性もある。
個人だけでなく、どの国でも複数本は常備しておきたいのではなかろうか。
もうそれだけで数千本の需要がある。
ただ俺たちは、そういう商売をしたいのではなく、ダンジョンを商売にしたいのだ。
理由はいくつかあるが……。
「俺たちだけ強くなってもしょうがないですしね」
世界でたった5人だけというのは異端だ。
みんなで強くなろうじゃないか。そして俺たちはそのお手伝いができる。
そのためにはしっかりとした施設が必要だ。そして普段は、俺たちもそこで働く。
ダンジョンを探索しつつ、一般人のダンジョン探索を助けつつ、ダンジョン経営だ。
「分かりました。私にも協力させてください」
翔さんは、4人目の仲間となることに同意してくれた。あっさり決まったように思えるが、これからが大変だ。
なにしろ、一般人もダンジョンに入れるのだ。多くの人員、多くの施設が必要になってくる。
牟呂さんを加えても、まだ4人。
夢はあるし、目標もある。だが、悲しいかな。人材がまったく足りていない。
「俺たちの夢を実現するのに、まだ道のりすらできていませんが、これからよろしくお願いします」
信頼できる仲間を増やし、一歩ずつ着実に進んでいこう。
俺は牟呂さんと、がっちり握手を交わした。




