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ダンジョン商売  作者: もぎ すず
第一章 ダンジョン生成できるようです
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038 コラボ続き

 普段の探索は6時間くらいガッツリするのだが、今回はコラボということで2時間を目処に帰還した。


 ブラックキャップさんが「自分も少しだけ戦ってみたい」というので、剣を渡し、動きの遅い屍鬼(しき)を倒してもらうことになった。


 屍鬼は目が悪く、音で敵を判断するので、先輩が前を受け持ち、ブラックキャップさんが後ろに回って斬りつけるといった感じだ。


 5回、6回と剣を振るうと、屍鬼は黒いもやとなって消え去った。

「疲れるけど、楽しいものですね」


 汗を掻いたブラックキャップさんは、それでもいい笑顔だった。


 地上に帰還して最終確認をする。

 場所が特定されると困るので、小金井公園での部分は背景にモザイクをかけてもらうことにした。


 ダンジョンの中は、顔にモザイクをかけて、声もボイスチェンジャーで変える。

 名前を呼んでいるシーンには、ピーを入れてもらうなどを了承してもらった。


「私だちはダンジョン・ドリームスという会社を立ち上げます。そこでは、一般の人々に今のようなダンジョン体験をしてもらう予定です」


「ダンジョン体験! すごいですね。絶対に流行りますよ」

「そう考えていますが、キャパシティを超えることも考えられますので、当面は人を絞ると思います」


 今回、祖母には転移で小金井公園まで来てもらった。

 ダンジョンを造ったあとも同じで、転移で家に帰ってもらっている。


 毎回こういうのをするのは大変なので、何か方法を考えようと思う。


「いつからはじめるのですか?」

「まだ先になるかと……ただ、年内には始めようと思っています」


 俺たちはようやくレベル13。

 このペースで行けば、夏にはレベル20が見えてくる。


 その頃には具体的な日程も明らかになると思う。

「あの……また呼んでもらえますか?」


「そうですね。これを機に、何度かコラボしていただけたらとこちらも思います」

 俺たちはブラックキャップさんと握手をして別れた。




 その日の夜、ブラックキャップさんから「1本目ができました。確認してください」と動画のURLが送られてきた。


 DoTubeでは非公開動画をアップロードすることができ、URLさえ分かれば、直リンクでだれでも視聴することができる。

 1本目ってなんだと思ったが、インパクトがすごかったので、複数の動画に分けるとのことだった。


 俺たちは何度もブラックキャップさんの動画を確認し、OKを出した。

 動画は15分程度のもので、ブラックキャップさんの人柄がよく表れているものとなっていた。




【コラボ企画】DDチャンネルさんのダンジョンにお邪魔しました。#1


「どぉ~も、ブラックキャップです。きょうはなんと、DDチャンネルさんから、お誘いがあったんですよ。DDチャンネルさんは、いま話題のダンジョン動画を次々と投稿しているんですけど、これがまた、ちょ~、リアルなんです。僕もね、実はコラボ企画をいただく前から、チャンネル登録させていただいていたんですよ~」


「というわけでやってきました、ダンジョンです。みなさん、これ見てください。本物ですよ、本物のダンジョン。DDチャンネルさんが話していいと言うので、言っちゃいますが、僕はとある場所から、一瞬でここまで来ちゃったんですよ。瞬間移動ってやつですかね。瞬間移動、はじめて体験しました」


「ダンジョンの中は少し薄暗い程度です。気温は、外より温かいですね。春か秋くらいの過ごしやすさです。ダンジョンによっては、暑かったり寒かったりするみたいなんですが、今回はちょうどよくていいですね。あっ、でも湿度は高いかな」


「ダンジョンに苔が生えているでしょ? 触ってみるとですね……ほらっ、黒いもやとなって消えるんです。採取の魔道具ってのがあって、それを使わないと、こうやって削ったそばから、もやになって消えるんですって。これ、いろんなものの素材らしいんで、もったいないですよね」


「あれが今回戦う敵です。みんな見たことあると思いますけど……あっ、ないですか? ゲームでありますよね。スケルトンです。……おおっ、魔法を撃った。スケルトンも死ぬと黒いもやになって死ぬんですね。ちなみにここは屍霊系A2ダンジョンと言うそうです。アンデッドが出る無茶苦茶難易度の低いダンジョンらしいです。なので、お宝は期待するなと最初に言われました」


「みてください。これが魔石です。ほら、きれいですよね。今日の記念に持って帰っていいそうです。この魔石、覗くと中で花火みたいなのがキラキラ弾けているんですよ。見えますか? またあとで、じっくりお見せますので」


「うおおおぉっ、いまの見ました? 身体強化の魔法で一気に殲滅しましたね。あんなふうに動けるなんて、うらやましいなあ……僕もやってみたいなあ。えっ? やらせてくれる? 本当ですか? じゃ、じゃあ、おことばに甘えて……」


「と思ったけど、そろそろ時間になりましたので、この続きは#2でお会いしましょう」


 動画はここで終わっていた。

 音声は後乗せのようだ。


 それでもうまく編集してある。

 テロップも出るため、聞き逃しても安心仕様だ。


 DDチャンネルの登録者数は、ようやく5000人を超えた。

 対してブラックキャップさんの登録者数は、なんと34万人。


 この動画がどんな影響を与えるのか楽しみであるが、少し怖い。

 だが、恐れてはいけない。これは俺たちが歩み出す大きな一歩なのだ。


 世間の反応によって、俺たちの今後が決まると言っていい。

「頼むよ」


 俺は画面に向かって拝んだ。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 最近先が楽しみな作品 [一言] 掲示板回を入れると、第三者からの声が分かりやすくていいかもしれないですね
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