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第94話 先手必勝


魔法科の試合前。


「ディスキによると、フォルトゥナさまとフェリスさまは霊獣を顕現させるまでは何もできないということだったな」

ディスキから情報をもらったトニトルスたち精霊科は、模擬戦に備えて作戦を考えていた。


「霊獣使いは霊獣という強力な精霊の力を借りることができるが、それには霊獣召喚が必要となる。僕たちに勝機があるとすれば試合開始からお二人が神獣を召喚するまでのその数秒間だ」

「……そこしかないね。もしそこで決着がつけられなければ相当厳しい状況になるけど……」

「あぁ……。だからみんな、試合が始まる前に契約している微精霊をできるだけ多く集めておいてくれ」

「わかった。もし召喚を許してしまったらどうする?」

「神獣の精霊力がきれてお二人が精霊力の補給で神経をすり減らしているその時を狙うしかない……が、そこまでみんなが生き残っているとは考えにくい。できるだけ最初の段階で終わらせよう!」

「よし! みんなで一緒に合格しようねっ!!」

「おう! 頑張ろうぜ!!!」






「みなさん。私たちも王命だから本気でやらせていただきますわね!」

「王命……ですか?」

「ちょっと! ルナさん!!」

「あっ……」

この模擬戦が王命であることをうっかりばらしてしまったルナ。自分と同じくらいの年齢の善良な新入生を死に追いやらなければならないことに緊張しているのだろう。


「……緊張してらっしゃるのですね、ルナさん」

「あっ……当り前ですわ!! 王女たる私が大事な国民を傷つけるのですわよ、緊張せずにいられますか!!」

「そうですね。それに私もルナさんも人を殺したことはないですからね……でも、彼らのためにやってあげましょう!」

「えぇ、フィリアだって頑張ったのですわ! 私にできないわけがありません!!」

フィリアに謎の対抗心を燃やすルナ。その心中はいかに……?


「それでは、精霊科の模擬戦……開始!!」

レガティスの結界が展開され、開始の合図があった。


「「神聖なる聖域に住まう霊獣よ 今、時は来た……」」

ルナとフェリスが同時に精霊召喚術を唱え始めた。


「地精よ 大地の力で 震わせよ」

「火精よ その怒りで 焼き尽くせ」

「風精よ 疾く駆け抜けて 切りつけよ」

地の微精霊の力で地面が揺れた。ルナとフェリスの集中力が若干足元にかれる。

そして火の微精霊が生み出した、炎の弾丸の一つほどの小さな火は、風の微精霊による風で威力を増した。

その数は十数個に至る。

その全てが……ルナとフェリスに直撃した。


「まだだっ!! 水精使いは水を!!」

トニトルスは感じていた。悪魔を倒すような人間が、この程度で傷がつくはずがない、と。だからこそ、攻撃が当たったかに見えても、その手は緩めない。


「水精よ 清らかなる水を この手に集え」

ルナとフェリスに近づいていた水精使いたちは、水精の力でルナたちを含め自分の周りを水浸しにして早々に離脱した。

そして最初の攻撃による土埃が晴れるころ……


「雷精よ 我が身に集いて 力と為せ」

雷精使いたちが水精によって濡れた地面に雷を流す。そして……


バチチチチ……


雷精をまとったトニトルスがルナとフェリスに触れ……ることなく、結界のようなものに弾かれた。


「霊獣召喚! 光の神獣 ペガサス‼」

「霊獣召喚 地の神獣 地帝龍」

2体の神獣が召喚された。


「そ……そんな……」

「どうして……」

新入生たちは茫然と神獣を見た。そしてその神獣の上に立つ2人を見上げた。その身体に傷は一つも見当たらない。


「少々危なかったですね。まさか召喚口上中に攻撃されるとは……」

「そうですわね。でも皆さん。霊獣使いは一定威力以下の攻撃を無効化する薄い結界を霊獣の精霊力で常に展開しているのですわ。そして私の≪幸運≫の加護が作用したおかげで運よくその一定値を下回りましたの。よって私たちに傷はありませんわ!」

ルナは勝ち誇った顔を、新入生は絶望の顔をしている。フェリスは相変わらずクールというか無表情というか……そんな顔をしている。


「それじゃあ行きますわよ!」

ルナとフェリスによる反撃が始まった。


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