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第16話 復讐の神懸り


(フィリア……見ていてくれ)

デウスはアシッドタイガーをギロっと睨みつける。

アシッドタイガーは未知の存在に出会い、戸惑い恐れすら感じているようだ。


「かけまくも(かしこ)き 黄泉の支配者たる黄泉津大神(ヨモツオオカミ)

(しゅ)よ 我は主の分霊(わけみたま)たりて主に仕えしものなり

我願う 脆弱(ぜいしゃく)なる我が身に 主の力を分け与えたまえ」


身に燃え上がる様に現れていたデウスの霊力が祝詞により天へと登っていく。



「神懸り 黄泉津大神(ヨモツオオカミ) 伊邪那美命(イザナミノミコト)

 権能 黄泉への(いざな)い!!!」



デウスの霊力が登っていった先から一閃の光が現れ、一直線にデウスを照らす。アシッドタイガーはデウスの背後に神々しき女神の姿を捉え、畏怖し震え上がった。

しかしその震えもつかの間、力が抜け横たわった。

意識は女神のもとへ……魂は女神のもとへ……


女神は震えすら許さず、アシッドタイガーの魂を引き込み刈り取った。


(終わった……のか?)

一連の一部始終を見て、デウスは膝から崩れ落ちた。

終わった。全てが終わった。

フィリアは死んだ。フィリアを殺したアシッドタイガーも殺した。

もう何もかも終わったのだ。


ドクンっ……


神懸りの反動がきた。魂の根源が消耗する感覚。


「ぐっ……」

身体の内側が痺れ、激痛が走る。

しかし、喪失感にさいなまれているデウスにはある意味心地の良い感覚だった。

(このまま死のう。フィリアのいない世界には色がない。白黒の世界では、僕は生きられない)




生まれ変わってからは、たった1日の人生だった。

しかし、兄弟に殺された本物のデウスの記憶と、フィリアに出会って屋敷を抜け出してからの1日。

これだけで、必死に生きた1人の人間の人生を感じた。

後悔はいくらでもある。自分のせいでフィリアは死んだ。守れなかった。そもそもフィリアを巻き込まなければ、自分が死ぬだけで済んだものを……


しかし後悔はあっても未練はない。もうこの世界に用はない。


(来世でまたフィリアと会いたいなぁ。来世より先に黄泉の国で会えるか? ……フィリアを見殺しにした僕は、地獄に行くだろう。そうか……もうフィリアには会えないのか……)

デウスは嗚咽をしながら泣いた。フィリアがいたら……泣き虫だって、また言われるんだろうな……


「また会いたいなぁ……会えるといいなぁ。……お前もそう思ってくれているかい? フィリア」

フィリアの亡骸を撫でる。……それはこの世界でのお別れの意味を込めたデウスの愛情だった。



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