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094 コレクターvs炎竜

 俺の提案により観客席の〈魔法壁(マジックシールド)〉はさらに強化され、観客を守るための兵士も多く派遣された。

 日は落ち空は暗くなり、闘技場は炎で照らされる。

 それでもなお大勢の観客が残っているのは、俺たちの戦いを見届けたいと思ってくれているからなのか。

 はたまた、大穴狙いで賭けをした物好きなギャンブラーが多いのか。前者であることを願う。


「おい、あの子魔法も使えるのか」

「あんな人間がいるとはなぁ」


 待機所から出てくると、観客席がざわめき始める。

 それもそのはず、今まで俺は剣、刀を使い剣士として戦っていたのだ。

 まさかそんなやつが決勝で魔法を使うとは思わないだろう。


「あの時のリベンジなのじゃ」

「観客に被害が出ない程度に全力でやろうね」


 向かい合って簡単に言葉を交わす。

 ドレイクも初対面で負けたことを根に持っているようなので本気で戦ってくれるだろう。

 その後は特に話すこともなく、印のある位置まで移動する。

 待機所でもう十分話した。後は戦闘中にぶつけ合うだけだ。


「両者準備はよいな?」


 大王の言葉に小さく頷く。俺は短剣を、ドレイクは爪を構える。

 試合開始の宣言をしろ!! 大王ぅ!


「試合開始ィィィ!!!」


 こうして、俺とドレイクの全力の試合が始まる。

 まず初手、隙なんか狙わずに正面から魔法を撃ちこむ。

 短剣を前に突き出し、そこから魔法を発動させる。


「〈氷弾(アイスショット)〉」

「な、なんだあの〈氷弾(アイスショット)〉は!!!」


 再び観客席からざわめき始める。

 この世界では、第一魔法である〈火球《ファイヤーボール》〉や〈氷弾(アイスショット)〉は威力が低いためそこまで使われない。

 が、魔法攻撃力が高い場合はその限りではない。

 魔力の扱いに慣れていれば、同時に複数の〈氷弾(アイスショット)〉を出すこともできるし、威力も第一魔法とは思えないほど実用的になる。


「この程度っ、容易に避けられるのじゃ!」


 のだが、ドレイクにはそこまで効果が無かったようだ。

 速度も上がっているはずなのに、ひょいひょいと避けられてしまう。

 素の速度もあるだろうが、やはり炎での加速が厄介だ。

 ドレイクは勢いそのまま、俺に向かって殴りかかってくる。


「くっ……」


 短剣で受け止め、殴られた勢いを利用しその場から離れる。

 遠距離の攻撃なら……!


「〈雷光(ライトニング)〉」


 自分の周辺から電撃を出すことができる〈雷光(ライトニング)〉だ。

 なるべく広範囲に出るよう調整し、ドレイクが近づけなくなるよう次の魔法を考える。

 『トワイライト』の魔術師vs剣士ではまず剣士が勝つ。理由は簡単で、無理やりにでも近づいてしまえば勝負が決まってしまうからだ。

 なので最初は無理やり近づかれないようにひたすら遠距離魔法、防御を繰り返すことになる。

 まあ、この戦法が通じるのは最初だけだろうからその先も考えなければならないのだが。


「ぬうっ……ならばこっちもじゃ!」


 ドレイクが右の手のひらを前に出し、手首を左手で抑えた。まずい、ドラゴンブレスだ!

 いくら威力が上がっているとはいえ〈雷光(ライトニング)〉でドラゴンブレスを相殺することはできない。

 火力勝負をするのなら、氷魔法は相性が悪い。なるべく炎の影響を受けずに、それでいてこちらに攻撃が飛んで来ない魔法は……


「〈竜巻(トルネード)〉!!!」


 第三風魔法〈竜巻(トルネード)〉。

 ライトニングと同じように発動する位置は発動者自身からだ。

 この魔法は竜巻として動かすこともできるし、ブレスのように横向きの竜巻を飛ばすこともできる。

 今回は横向きの〈竜巻(トルネード)〉だ。


「ぐぬぬ、負けぬ!」

「吹き飛べえええ!」


 風と炎がぶつかり合い、闘技場が熱風に包まれた。

 〈竜巻(トルネード)〉に込める魔力も増やしていく。すると、ドレイクのブレスを分散させながら竜巻が突き進んでいった。

 ブレスが破られたと分かったドレイクは、すぐさま竜巻を避ける。竜巻は速度があるわけではないので、避けることは予想ができた。


「〈浮遊(フロート)〉」

「空じゃと!」


 ドレイクが避けている間に、〈浮遊(フロート)〉を発動させ空を飛ぶ。

 空中戦をするつもりはない。この飛行は空からの奇襲が目的だ。

 空を取ることは、下にいる者に対し有利を取れるということ。それをエリィとドレイクの試合で学んだ。


「〈絶対零度(アブソリュートゼロ)〉」


 空中から、地上へ向けて絶対零度の冷気が降りていく。

 熱風に包まれていた闘技場が、今度は冷気に包まれた。

 真下にいたドレイクは、冷気に包まれ瞬く間に氷漬けになっていく。

 全身が氷で覆われ、動くこともできなくなってしまった。どうだ?


「……勝者、レク――――」

「まだだ!」


 勝利宣言が出る前に、俺は声を上げた。

 氷の中に、炎が揺らめいている。まだ終わっていない。

 ピシッと氷塊にヒビが入った。ヒビの隙間から煙が……いや、水蒸気が噴き出る。

 水蒸気は勢いを増し、内側から氷塊を破壊した。

 身体をすっと横にずらし、飛んできた氷の欠片を避ける。

 そして、視線の先にいる青と赤の入り混じった竜の少女を見据えた。


「ここからじゃな」

「そう簡単にはいかないよね」


 前回、竜の状態のドレイクは〈絶対零度(アブソリュートゼロ)〉を受けても無事だった。

 なので今回も無事なのだろうと予想ができる。人間の状態でもダメか。

 しかし魔力は削ることができたはずだ。一歩リード、ってところかな?

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