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086 コレクター、獣王戦のトーナメントを確認する

 余韻冷めやらぬまま冒険者ギルドにホーンラビットを届けに行くと、物凄く驚かれ、そして感謝された。

 詳しい話を聞かせてほしいとも言われたが、今回はシャムロットの時と違ってこれ以上信頼される必要はない。既に大王との繋がりはあるので丁寧に断らせてもらった。

 依頼の報酬金はかなりの額が提示され、全員の懐がホクホクになる。

 エリィは何度かシャムロットでの冒険者活動についてきたことがあるのでお金を貰っていたが、こうして大金を受け取るのは初めてらしくポーションの研究などに使いたいと言っていた。

 そもそものポーションが高いので、参考にするためのポーションを買うだけでも出費がそれはもうすごいことになるらしい。


 と、言うわけで再び自由行動をすることになった。

 獣王戦は数日後。それまで女悪魔リスティナの捜索や単純な観光をする。

 二日ほど観光をするともう特に行きたい場所は無くなり、ただひたすらモンスターを狩ったり戦闘訓練をするという一日になってくる。


 そしてついに獣王戦当日……

 俺は広場の壁に張り出されたトーナメント表を見ていた。


「あれ、大きい大会の割には人数少ないね」


 こんなに大きな国なんだから、出場人数も馬鹿みたいに多いものだと思い込んでいたのだが。


「そもそも出場資格があるのは地方大会などで名を上げた精鋭だけらしいですよ。皆さんは大王権限で

「なるほど。というかシウニンさん、今日は市場調査しなくていいんですか」

「ええ。皆さんが出ますからね。今日くらいは仕事を休んで楽しませていただきますよ」


 獣王戦が始まるまでの数日間、シウニンさんは街中の店に行き値段や種類などを調査していた。

 なので今日もその調査を進めるものだと思っていたのだが、観戦してくれるらしい。


「一回戦は……ドグマ? って、ああ、あの毒使いかぁ」


 バーで聞いた優勝候補ドグマ。

 毒ナイフで相手を動けなくして試合終了。毒を抜きにしても、それを当てる技術があるのだから強敵と見て間違いないだろう。

 そういえばもう一人優勝候補がいたはず。誰だったか。


「オレは……ダルファンだな。知ってるか?」

「優勝候補だよ。格闘王だったかな? まあ……ストロングベアみたいな感じ」


 一緒にするのは失礼かもしれないが、似たようなものだろう。

 近距離戦で、武器も使わない。格闘王ダルファン、俺も一度戦ってみたいものだ。

 というか交換してほしい。毒使いとか面倒この上ない。


「レクト、この人は知ってるの?」

「わしの相手はどうじゃ!?」


 エリィとドレイクがトーナメントに書いてある名前を指さした。

 その先に書いてある名前は……残念だけど聞いたことがない。

 アドバイスが欲しいのか、それとも知りたいだけなのか。よくわからないけどまあ楽勝だろう。


「俺はドグマとダルファンしか知らないよ。というか、目立つ選手はその二人だろうからエリィとドレイクは楽勝だろうね」

「えー、面白くないわね」


 決闘と違い、この大会は武器自由、魔法自由の何でも大会だ。

 そのため『トワイライト』の武器を使っているエリィは戦闘技術が無くても勝ち上がることができる。

 それはそれとして、ここ数日でエリィも真面目に戦闘訓練を受けたのだ。強敵と戦ってみたいと思うのもおかしくはないだろう。

 さて、そろそろ会場に行った方がいいかな。所詮から決勝みたいな感じだろうし、ちょっと遊んでみてもいいかもしれない。

 特に毒使いの動きは参考になりそうだ。俺も相手を無力化するアサシンみたいな動きをしてみたいな。


* * *


 時は遡り数日前。薄暗い部屋で昼寝をしている黒猫の獣人がいた。

 彼の名前はジャスター。何故昼寝をしているのかと言うと、ミカゲにお仕置きをされ不貞腐れているのだ。

 ジャスターが一度目を覚まし、二度寝するかと眼を閉じようとしたその時。部屋の中に青い光が発生した。

 そこから飛び出してきたのは、ピンク色の髪をした悪魔、リスティナであった。


「はあああ~~~~ん! レクト様に、レクト様に斬られたぁ~!!」

「うおっ!? 急に出てくんな!」

「あんたも似たようなものでしょ~? その耳の切れ込みはなぁに?」

「うるせぇ!」


 ジャスターはレクトに斬られた耳の切れ込みを隠すようにしながら怒る。

 リスティナの角には、それほど大きくはないが傷がついていた。

 悪魔にとって角とは魔力が多く流れる大切な物。そこを傷つけられたら、魔力の操作に支障が出てしまう。


「それより~、ミカゲさんは?」

「あん? そういや最近見かけないけど……ってお前、魔力集めはどうした? まさかレクトに負けて魔力を奪われたんじゃないだろうな?」

「それは大丈夫大丈夫。ちょっち減っちゃったけど~、ちゃんとあるよ~」


 袋に入った宝石を見せながら、リスティナはドヤ顔でジャスターを煽る。

 偽物の『黄金の果実』を持ってきたお前とは違うのだ、と。


「チッ……それで、レクトはどうだったんだよ。負けたのは分かるけど、よく死ななかったな?」

「人を殺したからどこかで焦ってたのかもね~。あと少し転移が遅かったら角を折られてたかも~」


 同族である人間を殺させ判断力を奪う、または殺さなくていい代わりに自分の物にする、という目的があった。

 実際に逃げることができたのだから、リスティナの作戦は成功していると言っていいだろう。


「あ、そうそう。なんかね~、レクト様は獣王戦? っていうのに出るらしいよ?」

「獣王戦か……確か優勝賞品は毎回豪華だった気がする」


 故郷であるアルゲンダスクでの祭りを思い出しながら、ジャスターはそう言った。


「え~っとねぇ~、『黄金の羊毛』? っていうのが優勝賞品なんだってさ~」

「『黄金の羊毛』!? そりゃお前、超巨大な魔力リソースじゃねぇか!」

「そんなにすごいの? 羊毛でしょ~?」

「『黄金の果実』と同じ伝説的な存在だぞ!? 国の宝の一つを出してくるとは……こりゃ今年の獣王戦は荒れるな。というかそんなのをレクトが手に入れたら何に使われるか分からねぇ……!」


 『黄金の羊毛』とは、本当にいるのかすら分からない黄金の羊から手に入る羊毛のことである。

 童話として存在する羊飼いのお話に登場するアイテムであり、古くから国に保管されている大切なアイテムだ。

 それを獣王戦の優勝賞品にするということは、何かしら大きな理由があるのかもしれない。


「よし、『黄金の羊毛』は僕達が手に入れよう。そしてミカゲさんに献上するんだ」

「え~またアルゲンに行くの~? 遠いよ~」

「うるさい! 行くぞ!」


 つい先程アルゲンダスクから転移してきたリスティナは嫌がるが、ジャスターはそんなリスティナの襟を引っ張り部屋から飛び出すのだった。

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