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077 宝石店、襲われる

 次の日、俺とドレイクはウッキウキで宝石店に来ていた。


「これください!」

「これもじゃ!」

「ありがとうございますううううう!!!!」


 大量の宝石を購入する優良客に店からは感謝の言葉が鳴り止まない。

 俺も幸せで店も幸せ。こんなに楽しいことがあるだろうか。

 幸いポケットマネーは腐るほどある。領主ドリーム来たな。あ、もちろんこれは村の金じゃないよ。


「私も宝石は好きだけど、ここまでじゃないわ……」

「たまにはいいじゃねぇか。お、これいいな。これください」

「はい喜んで―!」


 居酒屋みたいなテンションで宝石を購入していく。

 俺の持っていない宝石が次から次へと出てきて興奮が止まらない。魔力が溢れている世界だからか、地球にはない宝石がいくつもある。

 現実世界では高価すぎて宝石に手を出せていなかったが、うん、やはりこういう物を集めるのもいい。

 帰ったらフィギアとかも集めたいな。


「いらっしゃいませ。え、ええと……貴方達は一体……」


 なんだか外が騒がしいな、なんて思っていると店員の困惑すr声が聞こえた。

 宝石に夢中になりながらもチラリと入口を見ると、そこにはあのチョーカーを付けた獣人が何人も立っていた。

 マ、マジか。こんなに早く俺を狙ってくるとは。

 親玉が誰か分からない状況で相手は一般人。狭い店内。さてどうしようか。


「ホウセキ、ヨコセ」

「は、え?」

「俺じゃないの!?」


 驚愕すると同時に、操られた獣人たちが流れ込んできた。

 人数が多すぎて捕まえることもできない。店員さんを巻き込んで攻撃することもできない。

 今できることと言ったら目の前に来た獣人を捕まえるくらいか。


「ちょおっ! やめい! 押すでない!!!」

「くそっ、止まれ! おい!」

「ホウセキ! ホウセキ!」


 相変わらず語彙力を失っている獣人たちは、ホウセキホウセキと呟きながら店にある宝石を手に取った。

 そして皮袋に入れると、他の獣人と入れ替わるように店から出ていく。

 まさかの真正面からの強盗だ。今出て行った奴を捕まえたいが、身動きが取れない。

 そうだ、チョーカーを外さないと!


「みんな! チョーカーを外して!」

「! そうか! よし、任せろ!」


 少し離れたところにいるカリウスから返事が来る。

 俺に続いて意味を理解したエリィとドレイクが小さく頷き、近くにいる獣人のチョーカーを外そうと手を掛けた。

 のだが。


「外れない!?」

「ぬぐぐ……! うりゃあ! これは無理やり千切らないと無理じゃ!」


 獣人のチョーカーに手を掛け、無理やり引きちぎるドレイクにちょっと引きながら考えこむ。

 短剣を使えるのは俺だけ。カリウスの剣を振るには狭すぎるし、一人一人のチョーカーを短剣で外していたら埒が明かない。


「こうなったら……!」


 麻痺毒、あまり使いたくはなかったが仕方ない。

 俺はアイテムストレージから麻痺毒が付与されている『パラリシスダガー』を取り出し、周りにいる獣人を軽く刺した。

 獣人はグアアと声を上げながら倒れこむ、次々に刺していき、かなりの人数を無害化することに成功した。


「店員さん! これで倒れている人たちのチョーカーを外して!」

「わ、分かりました!」


 俺はアイテムストレージから『シルバーダガー』を取り出し、宝石店の店員さんに渡した。

 何が何やら分からない店員さんは、とりあえず受け取ると、そそくさとチョーカーを外し始める。

 これで倒れている獣人の洗脳は解くことができる。後は……


「どうするのじゃ!?」

「追いかけよう! 宝石を持ち帰ろうとしてるんだ!」


 逃げている獣人を追いかけることで、このチョーカーを使って俺を襲おうとした相手を見つけるのだ。

 宝石店から出ると、大勢の獣人が逃げているのが見えた。方向は……街の外だろうか。

 高速で店の前にいた獣人に『パラリシスダガー』を刺していく。


「誰か、途中で倒れてる獣人のチョーカーを外してくれない?」

「私がやる!」

「頼んだよ!」


 人数が減るのは少し不安になるが、倒れた獣人が起きてしまっては意味がない。

 俺が短剣を取り出そうとすると、エリィは『ワルキューレウェポン』を短くし短剣の長さにして見せてきた。どうやら必要ないらしい。

 麻痺毒の時間は限られているので、できるだけ多くのチョーカーを外してくれると助かる。


「二人は倒れた獣人から宝石を回収して! 先に行ってるね!」


 足に力を入れ、一気に地面を蹴った。

 大通りを走り抜けながら道中の獣人を斬っていく。


「なんで斬りながらなのにオレたちより速いんだ……?」

「うむ、流石レクトじゃ!」


 できれば全員で向かいたかったのだが、他の人に宝石を盗まれてしまう可能性があるため二人には皮袋の回収をしてもらうことにした。

 最初は一人で戦うことになるだろうが、その時は時間稼ぎをしながらみんなが来るのを待とう。


「結構逃げてるなぁ……」


 走りながら、斬りながらそう呟く。

 店内で混乱している間に、かなりの人数が逃げてしまったようだ。

 宝石の入った皮袋を持っている獣人は少なく、一番多くの宝石を持った獣人は既に遠くに逃げてしまっているらしい。

 このままだと郊外に出てしまう。その先はアルゲン平原だ。

 どこまで行けば敵の親玉に会えるのだろうか。そんなことを考えながら走り続けた。

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