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072 コレクター、条件を提示される

「つまり、世界の破壊を防ぐために我々の国の国宝を欲している……ということですか」

「ええ、その通りです」


 状況を理解したトレバーさんが言いたいことを簡単に言ってくれた。

 俺が言っていることが本当であるという証明のためにセルフィ―に頼んだり、国宝を見せたりしたのだ。

 これでそこそこ信憑性が上がっていると思いたい。


「構わんぞ」

「わ、我が王!?」


 !?


 大王以外のその場にいた全員が驚いた。

 話が通じるタイプということは途中の会話でなんとなくわかっていたが、まさか受け入れてもらえるとは。


「天使といい、シャムロットの国宝といい、嘘を言っているわけではないのだろう? ならばよいではないか。国宝は確かに大事だが、渡さなければ世界が滅びてしまうのだぞ?」

「ほ、本当か? それじゃあ……」

「それはそれとしてだ」


 一件落着これでお終いと思っていたが、待ったがかかる。

 なんだろうか、何か条件でもあるのかな?


「ただで渡すのは面白くない。我は強き者が好きなのだ。そうだな……もうじき行われる獣王戦に出場せよ。これが条件でどうだぁ?」

「ゆ、優勝するのが条件だったり?」

「いんや、全力で戦うだけでよい。第一、人間族に優勝しろなどと酷なことを言うわけがなかろうに」


 かっちーん。

 これはおこですよ。悪意はないんだろうけどなんか頭に来ちゃったよ。

 イレギュラーな存在である俺が人間を代表するのはどうかと思うが、ここで人間に対する考えを改めさせなければ。


「条件変更させて。国宝を譲渡する条件は……獣王戦優勝。どう?」

「構わぬが……本当に良いのか?」

「もちろん!」


 どうせなら気持ちよく国宝を手に入れたい。簡単に手に入ってはつまらないじゃないか。

 それがアイテムコレクター。手に入れるのが大変だからこそ、価値があるのだ。


「その心意気、気に入った! 国宝を渡すということは一時的ではあるが国を託すということ。ならば優勝くらいしてもらわなくては困るというものよ!」


 国宝とは国を象徴する物。それを他国の代表に渡すということは、他国に自分の国を託すということ。

 それだけの責任を伴っているのだ。国宝が無くなったところで国民の生活に影響は出ないが、そこはそれ。

 日本で天叢雲剣とかを外国に渡すってなったら大変でしょ? そういうこと。


「しかし、勇敢なおなごだのう。今時珍しいではないか」

「男だよ!」


 最近いじられてなかったから忘れてたよ!


「男……? 貴方がですか?」

「なんでショック受けてんの!?」

「いえ……そうですか、男……はあ……」


 トレバーさんが思った以上にショックを受けているが、どういうことだ。惚れたのか? やめてくれ。

 シャムロットで女王に女と間違われなかったのは、中性的な顔のエルフが多かったからなのかな。


「ガハハ! その見た目で男とはな。どれ、見せてみよ」

「おい大王おい」

「冗談の通じぬ奴だのう」


 上司のおじさんにセクハラされる女性の気持ちが分かった気がする。

 女性の気持ちが分かるゲーム、それがVRMMORPG。おすすめ。そんなキャッチコピーあるか。


「あー、その獣王戦なんですけど、オレも出ていいですか?」

「もちろんだとも」


 ほお、カリウスも出るのか。あんなに頑張って修行をしたのだ、戦わずに終わるのは嫌なのだろう。

 俺も同じ気持ちだ。出場するからには優勝したい、全力で戦いたい。腕試しをしたい。そう思ったのだ。

 カリウスを見ながらぶつぶつと呟いていた。


「獣王戦……カリウス……ああ、貴方前回の獣王戦にも出場していませんでしたか?」

「まあ……それが何か?」


 出場してたんかい。言ってくれよ。


「カリウス、やっぱりアルゲンダスクでも何かやってたんだ。もしかして上位に入ってたり?」

「いえ、人間にしてはかなり善戦していたものですから記憶に残っているのです。あの頃の気迫が感じられなかったので気付きませんでした」

「忘れてくださいよそれは……」


 あの頃の気迫か……カリウスは基本的に静かで冷静なイメージがあるから想像できないな。

 戦闘中は熱くなることもあるし、その状態が続いてる感じかな?


「何やったん?」

「ちょっとやんちゃしてたんだよ。あまり聞かないでくれ」

「おけ、把握」


 つまり黒歴史である。元ヤンが丸くなったみたいな感じだろう。

 黒歴史とか誰も得しないから掘り下げないで上げようね。


「お主も出るのか。そうじゃな、ならばわしも出よう!」

「それじゃ、私も出ようかな……?」


 カリウスだけでなく、ドレイクとエリィも獣王戦に出るらしい。

 ドレイクは火竜族……の見た目だが、これで人間側から、ロンテギア側から四人が出場することになる。

 これには大王も大喜び。安心してくれ、勝ち上がったらもっと盛り上がるから。


「おおお……おおおお! なかなか面白いではないか! お前もそう思うだろうトレバー!」

「変な人達としか思えませんよ……」


 まあ一般的な考え方だと、人間じゃ獣人には敵わないと考えるのが普通だろうな。

 しかし俺たちは違う! だって伝説の武器使ってたり、ステータスが底上げされてたり、天使の力が使えたり、伝説のドラゴン本人だったりするのだから。

 むしろこれで勝てない方がおかしいのだが……うん、多くの精鋭を倒して強さをアピールしてやろうぜぇ!


「ガハハ! まさか皆出場するとは! 楽しみにしているぞ! ……ん?」


 大王がちらりとシウニンさんを見る。


「おお! 貴様も――」

「出ませんよ!!!」

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