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007 コレクター、王様に会う

 俺は今、王様の前にいる。

 なんでって? なんかワイバーンの報告のためにその場にいた領主としてついてきてほしいんだとさ。

 それに、王様ともいずれ話すことになる。早いうちに知られていた方がいいだろう。


 王様は大きな髭が特徴的な老人だった。よぼよぼ、とまではいかないが心配になる。

 この文明でこれだけ長生きできるとは、やはり魔法が関係しているのだろうか。もしくは食文化か。


「――――と、ここまでが私の見た状況になります」


 なんて思っていると、カリウスがワイバーンに関する説明を終えた。

 その場にいたとはいえ、俺必要ない気がするんだけどどうなの。


「確か……レクトであったか。今の話は本当か」


 心配しなくても話しかけてくれた。優しい。そして名前も覚えてくれてる。優しい。

 きっと心優しいお方なのだ。多分学校で席が隣だったら友達になれてると思う。

 さて、何を話せばいいのやら。この話のほとんどが捏造であるため、俺の匙加減で事件は大きく変わる。

 とりあえず、カリウスに説明した通りのことを言って誤魔化しておこうか。


「ええ。先ほどの話の通り、一瞬で魔術師がワイバーンを倒したのです。突然のことだったのでその魔術師の顔は覚えておりません」

「ふむ……どのような魔法なのじゃ?」

「……氷と、雷魔法ですね。氷塊が降り注ぐ魔法と、雷撃が迸る魔法でした」


 魔法の鑑定か何かで使われた魔法が分かってしまうかもしれない。ここで嘘をつく必要はないだろう。

 〈氷雪崩(アイスアバランシュ)〉と〈雷撃(サンダー)〉。この二つはこの世界ではどのような立ち位置なのだろうか。

 カリウスは俺の言葉に驚いているようで、考え込むように顎に手を当てた。


「たった二つの魔法でワイバーンを瞬殺……予想以上だな、少なくとも人間じゃあない」


 あ、やっぱりこの世界だと魔法はそこまで開発されてないんだね。

 だが、言い方からして他種族ならばレベル4の魔法が使えるのだろう。

 人間はレベル3まで。しかも使える者は限られてるときた。これは隠した方がよさそうだ。


「氷塊が降り注ぐ魔法……噂でしか聞いたことはないが、第四魔法じゃろうな」


 王様の言葉に近くにいた兵士がどよめく。

 へえ、この世界では魔法をレベルで表してないんだ。レベル4が第四魔法、なるほど分かりやすい。


「つまり第四魔術師がこの付近にいるってことか……」


 レベル4の魔法を使える魔術師は第四魔術師と。そうなると俺は第五魔術師になるね。

 俺が戦闘で第五魔法を使う機会はなさそうだなぁ。


「情報提供感謝する。しかし本当に顔を覚えておらぬのか。服装すら?」

「……はい、おそらくは気配遮断魔法かと」


 適当に言ってみたけど、気配遮断魔法ってこの世界にあるのかな。

 『トワイライト』ではレベル2の〈潜伏(ハイド)〉やレベル4の〈認識阻害(メモリーアウト)〉、レベル5の〈透明化(クリアネス)〉などの魔法が存在した。

 基本はモンスターから逃げる、または奇襲を仕掛ける時に使う。

 あと、対人戦になるとこれがとても役に立つ。『トワイライト』にはPKが存在しているのだ。こっそりPKを狙うのがめっちゃ楽になるんだよね。


「気配遮断となると〈潜伏(ハイド)〉、でしょうね」

「ふむ、確か第二魔法だったはずじゃ。レクトよ、よく気が付いたの」

「えっ? あー、はい。一応貴族なので?」


 いやよく知らんけど。貴族だから魔法使えるとかある?

 あ、でも二人共なんとなく納得してる。よかった、貴族は魔法使えるってのは間違ってなかったんだ。

 じゃあもしかして貴族しか魔法使えないのかな。そういうところもちゃんと調べないと立ち回りが難しくなる。


「では、報告は以上でよいか」


 王様がそう言った瞬間、玉座の間の扉がバァン! と開かれた。

 皆ぎょっとして扉を開けた人物に視線を向ける。俺もびっくりした。驚かせないでくれ。


「父上! ワイバーンが出たと言うのは本当か!」


 威勢よく飛び込んできたのは金髪の青年だった。

 父上? 息子、つまり王子か。やんちゃな奴だねぇ。


「ん、レクト……なんで落ちこぼれのお前がここにいるんだぁ?」

「誰だよ」

「ああん!?」


 いやマジで誰。どなた。

 向こうは俺を知っていて、俺は向こうを知らない。なんだこのモヤモヤする状況は。

 神様、転生させるなら前の俺の記憶もくださいよぉ。


「これ、喧嘩するでない。ルディオ、何用だ」


 ルディオ……ルディオか!

 いや名前聞いてもピンとこない。誰? 石仮面被った人?


「ワイバーンだ! 出たんだろ? 俺の領地の騎士を出したい」

「馬鹿者。既に討伐され運ばれたところじゃ」

「なんだと、どこのどいつだそりゃ。まさか……いやいや、ねーか」


 そのまさかです。


「その前に話を終わらせねばならぬ。私の息子が失礼をした。もう下がってよいぞ」

「は、はあ。行くぞレクト」

「あ、うん」


 王様が俺たちを優先したからか、ルディオ? はこちらを睨みつけてきた。

 防御力が下がった。炎タイプかな? 今度からにらみつけるさんって呼んでいいかな。

 それはともかく、これで王様への用事は完了した。後は情報収集のために王都を練り歩くだけだ。ねりねり。

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