069 男三人、ノアトレインで冷凍ミカンを食べる
アルゲンダスク。それは世界で最も広く、人口も多い国だ。
土地がとにかく大きいので、どこからどこまでがアルゲンダスクの領地なのかと疑問になる。
世界で言うロシア、日本で言う北海道である。でっかいどう。
「――――とまあ、ここまでがアルゲンダスクの特徴だな」
「なるほどねぇ」
ノアトレインでの移動中、俺はカリウスからアルゲンダスクについての情報を聞いていた。
ここ数日、俺は急ピッチで外交の準備を進めていた。
王様への報告、シウニンさんの予定合わせ、戦闘能力の仕上げなどなどだ。
もちろん、アルゲンダスクについての情報も集めた。まあ大国ということもあり、特徴がありすぎるのであまり集まらなかったのだが。
今のところ獣人族が多い国という話と、大王の図体がでかいという情報しかない。
「ノアトレイン、初めて乗りました……すごいですねぇ。本当に神様が作ったのでしょうか」
「ノアトレインの停まる場所に駅を建てたって話だからな」
カリウスの言っていることが本当なら、ノアトレインを設置した神様とやらは元の世界と関係があり、尚且つ列車がある時代を知っているということになる。
古代文字が日本語だったし、日本の神様なのかな? え、二つの世界同時に運営してんの?
ちなみに、乗車しているのは俺、カリウス、シウニンさんの三人だ。
ドレイクとエリィも来る予定だが、ノアトレインで連れて行くわけにもいかずシャムロットの時と同じく〈空間移動〉での移動となる。
つまり、全員集まった場合俺、カリウス、シウニンさん、エリィ、ドレイクの五人になる。
シャムロットの時よりも二人増えているが、何とかなるだろう。
「それにしても、凍らせたみかんがここまで美味しいとは思いませんでした。レクト様、これも商品化しませんか?」
「そうですねー、まあこればかりは簡単に真似できますしそっちで自由に売り出して構いませんよ」
「なんと……ではお言葉に甘えて、検討させていただきます」
それは商品化しないフラグなの?
シウニンさんなら普通に大金を手に入れてくれるだろうし、気にしなくてもいいかな。
お金には困っていない、というかお宝やポーションの稼ぎ、シャムロットでの高難易度依頼報酬などで大金が入ってきているため大金持ち状態なのだ。今更金を稼ごうとは思わない。
まあ、増えるなら嬉しいけど、そこを目的に動くことはないかな。
「そういえば、アルゲンダスクではどのように大王に近づくのですか?」
おおそうだ。移動時間を有意義に使えるかどうかができる大人の違いなんだぜ?
いやまだ学生だったけども。でも電車でも仕事してる人ほんと凄いと思う。
そうじゃない、作戦会議だ。一応事前に何をやってもらうかは決めていたが、当日の流れは決めていなかった。
「とりあえず、ポーションを出して交渉ですかね」
「私がですか……」
「はい。んでそこからある程度仲良くなり、国宝くださいと言います」
「無理だろ。そんな簡単にいくか?」
おっしゃる通りです。
来てポーションの紹介して、世界の破壊が迫っていると言って、国宝くださいと言い出す。うん、怪しすぎる。
「そこはそれ。長い目で見て信頼を得れば何とかなるよ。多分」
いきなりその日に国宝くださいはあまりにも怪しすぎる。
作戦としては、今日はシウニンさんに交易関係を任せつつ世界の破壊が近づいている云々の説明をし、そこから信頼されるために色々なことをする、って感じかな。
国が大きいのでトラブルも多いだろう。それを解決して信頼されるって作戦よ。
つまりシャムロットにライトとして信頼された方法を短時間で行う、それだけだ。
「今回はライトって名乗るのか?」
「必要ならね。できれば名乗らずに信頼されたいかな」
俺はライトと同一の存在としてこの世界にいるが、個人的には自分がライトだという認識が薄い。
ライトとしてゲームをプレイしていたわけではないのだ。自覚なんてない。
だから俺は自分で手に入れたもの、アイテムやゲーム内でのステータス、この世界で身に着けた戦闘技術などで勝負がしたいのだ。
「それと、出来れば短期間で国宝を手に入れたいな。今こうしている間にも他国の国宝が悪魔に狙われているかもしれないし」
「幸いロンテギアが襲われてから他国で被害が出たという話は聞いてない。アルゲンダスクの国宝を手に入れたら、半分をこっちが持っていることになる。そしたら、向こうもこっちを狙うようになるだろうな」
天界に、神の国に行くために国宝を集めているのだ。相手も同じだとしたら、相手の悪魔は後三つの国宝を手に入れる必要がある。
王様からの情報だと、悪魔の国であるオルタガの国宝はまだ無事らしい。
なのでまだまだこちらが有利になれるのだが、一つ気になることがある。
「『黄金の果実』を欲しがっていた理由は何だろうね。国宝以外にも何か必要なんて話はセラフィから聞いてないし、気になるなぁ」
「単純に病気とかの対策なんじゃね?」
「そんな単純かなぁ……」
相手は神なのだ、俺のようにプレイヤーとして何かしらのアドバンテージがあるのだろうが、もしそうならば大抵のことはアイテムでどうにでもなる。
なんたってHPを全回復し、魔力も回復し、状態異常も治す『エリクサー』があるのだから。
確かに病気ならばアイテムでは何もできないが、流石にティルシアのような人が何人もいるとは思えない。
「何はともあれ、こちらは国宝を集めるだけなのでしょう? すぐに全てを解決させる方法なんてないのですから、適度な息抜きも必要ですよ」
「確かに。じゃあ冷凍ミカン追加! 〈氷〉!」
「やったぁい!」
アイテムストレージからみかんを取り出し、最近覚えた生活魔法である〈氷〉で凍らせる。
『トワイライト』で言うならレベル0の魔法。名前だけならかっこいいけど、ただの火とか風とか、水とかを出すだけなんだよね。
とにかく、今はこうして冷凍ミカンを作り楽しもうじゃないか。
「お客様、大変申し訳ありませんが、他のお客様もいらっしゃいますのでどうかお静かに……」
「「「すみませんでした」」」




